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その正体は

「セージ!」


 走って追いかけ、呼んでみる。お師匠様の姿をした人物は歩みを止めず歩き続ける。


「セージってば!ねえ、そうなんでしょ!?」


 追いついて腕を掴んだ。


「加護を使えるなんてあんた以外有り得ない。なんで隠してたの?私、ずっとローズマリー様だと思って敬語つかってたのに!」

「俺、最初に師匠じゃないって言ったのに、お前が聞かなかったんじゃないか」

「あ……」


 確かに、そんなことを言われたような。私、信じなくて、その話終わらせてた。けれども。


「何度でも言えばいいじゃん!ローズマリー様のフリし続ける必要ある!?」

「だって……お前……急に脱ぐし」

「へ……?」

「見たの俺だったらぶっ殺してるって言ったから、言えなくなったんだろうが!」

「あ……ごめ……」


セージの剣幕に思わず謝りかけたけど、脱ぐって、昨日の雨?そういえばあの時……私、上すっぽんぽんじゃなかった?


「あっあんたやっぱり見たの!?サイテー!!変態!ばかっ!!」

「ちょっ……いてっ!見たくて見たんじゃねえよ!不可抗力だ!見せられたんだ!変態はお前だ!」

「ぬぁんですって!!」


 きぃー!!となりぽかぽかとローズマリー様の姿をしたセージを叩く。すると怒りだけでなく安心などいろいろな感情が押し寄せて涙が勝手に溢れ、気が付くと私は泣きじゃくっていた。


「だってっ!あんただと思ってなかったんだもんっ……あんなっ!あんな状態で裸見らでだなんで~~ずびっひどい、ひどいよぉ……」


 泣き出した私にさすがにまずいと思ったのか、セージが急に態度を変えて謝りだす。


「わ、悪かったよ!見ちゃマズイと思って大して見てねえし!もう忘れた!」

「忘れるほど些細なことだったんだ……!」

「ばっ!ちげーよ!些細なわけねえだろ!すげえ、成長したんだなって思ったよ!」

「ぎゃーーーー!!!」


 バキッ。私のグーパンチが美しい顔に命中した。



「ねえ。怒ってる?」

「べつに」

「……怒ってる」

「怒ってねえよ」


 帰宅してから妙な距離が出てしまい、気まずい雰囲気。あれからローズマリー様の綺麗な顔から鼻血が出るのが恐れ多く、治癒魔法で治したら?と言ったものの。セージは甘んじて受け止め自然にまかせる。と鼻に詰め物をした姿でいるので当てつけのようでいたたまれない。


「ごめんね。元はといえば話を聞かなかった私が悪いのに」

「もう気にしてねえって」

「服も……あんたのお金だったのね。働いて、返すから」

「それはいいから」

「でも……」

「俺はここでちゃんと仕事をしている。お前よりも金はあるんだから、気にするな」

「……ありがとう。でもセージの分は私がちゃんと働いて払うからね?」

「別にいいのに」


 少し嬉しそうに笑ってそう言う姿に、さっきのことは本当に気にしていなさそうだと感じてほっとして話を続ける。


「服、早く着られるようになるといいね」

「ああ。サイズ幅があるとは言ってたけど、ちゃんと着られるといいけどな」

「そんなに大きくなったの?」

「一年前に師匠が帰ってきたときはあそこの、二番目の棚と同じ高さだった」

「えっ!?」


 それはなかなかの高身長というやつだろう。それよりも少し成長しているのであれば、更にだ。


「ね、なんでローズマリー様の姿なの?」

「魔女って帝国から家賃保障されているだろ?不在なのバレたら家賃請求されるかもしれないからって」

「……」


 お金にがめついローズマリー様らしい……


「じゃあなんでローズマリー様はいないの?」

「調べたいことがあるんだってよ」

「調べたいこと?」

「お前に関係することっぽかったけど、詳しくは教えてくれなかった」

「私に関係すること……」

「ま、それだけじゃないかもな。年上の彼氏が欲しいとか言ってたし」

「年上の、彼氏!??」


 一体、何歳の人が好きなんだろう。 


「そうだ……さっきの服、着てみたらどうだ?」


 微笑むローズマリー様の顔にセージの顔が重なる。といっても、覚えてるのは十三歳の姿だけど。


「うんっ!着替えてくる!」


 そう言って自室に戻って着替える。肌触りのよい素材が心地いい。


「どうかな?」


 一階に戻り、セージの前で両手を広げてポーズする。


「うん。いい色だな。よく似合ってる」


 微笑んで言われると急に恥ずかしくなる。ローズマリー様の姿だけど、中身はセージ。


「お前の目の色と同じだと思った。……元々のな」

「あー、そうかもね」


 元々私の瞳の色は紫だった。しかし、旅に出るにあたってローズマリー様が目の色は変えて行けと言い、魔法でこの国にはよくあるブルーに変えてしまった。

 自分の目は気に入っていたが珍しいのは知っていたし、目立つのはよくないのだろうと思いながら旅をして帝都にたどり着き、そこでひっそりと生活しながら精霊や世間のことを学ぶにつれて、お師匠様のその判断は正しかったと知った。

 ローズマリー様は土の属性の魔法使いである。貧しい生まれで何とかして魔女になり(一財を築き)たいと思った彼女は、毎日村の井戸に話しかけた。水の精よ出てこい。私と契約しろ。さもなければこの井戸は埋める、毒を入れる、そういうことを延々言い続けた結果、怯えた井戸の水の精ではなく毎日それを聞いていた地面、つまり土の精がその根性を買って契約してくれたのだそうだ。実際は水の精に同情しただけかもしれないが。

 人は土から生まれやがて土に還る、というように、土属性の魔法の応用で人の姿を変えることが可能だった。セージがローズマリー様の姿をしているのもそうだし、私の瞳の色をいじることも土属性由来の魔法なのだ。


「ローズマリー様、いつ戻るんだろう」

「さあな。でも、前に帰って来てから一年過ぎてるからそろそろかも」

「そっか。早く会いたいな」


 そんな話をしているとコンコンとドアがノックされる。そういえば、メルトから薬草を買いに来る人がいると言われていたのだっけ。


「どうぞ」

「はーい」

ここまで読んでくださりありがとうございます!

毎日更新を目指していましたが、明日は出来ないかもしれないので本日二回目の投稿です。

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