帰宅すると
話は戻り、両想いになったカモミールとセージのお出かけ場面から。
簡単に帝国の都市の説明をすると
ローズマリーの住む森
ハイスル (貧しい村)
メルト(カモミールが育った村)
・・・(何個かの町)
帝都 (ローズマリーの同期、アップルがいる)
ロッテルニア(比較的都会)
・・・(何個かの町)
オルトナ
リオド(ローズマリーの故郷)
もっと複雑に東西南北に都市や市町村は広がりますが登場する都市名を表すとこんな感じになります。
それから設定のおさらいですが
魔法使い(魔女) 各属性の精霊と契約
聖女 国王に認められてなる。国王の魂の一部を自分のものと合成、というイメージ
国王 血統によるもの。必ず紫の瞳を持つ。こちらは聖女に聖剣をもって王の器と認められると各精霊とも契約が可能になる。聖女は国王から受け取った魂から成立するため、その儀式が可能である。王の器と認められたら全能のためどんな精霊や悪魔とも契約が交わせる。
その後、王になるかならないかはその人次第で、ならないで聖女や魔法使いとして生きる人も過去にはいた。王になる場合は聖女と二回目の儀式を行う必要がある。
今の王は心が弱かったため悪魔の手に堕ちている。
突然セージと両想いということがわかって動揺したが、それからふたりごく自然に手を繋いで賑やかな街に戻った。
私もそうだが、セージも急に黙ってしまい繋いだ手が照れくさいような嬉しいような気がしてそこに神経が集中する。
「……っ」
どうしようもない気持ちになって横にいるセージを盗み見ると、こちらを見ているセージと目が合う。
セージは少しだけ目を細めて微笑むと、かわいい、と呟いたので私の身体中の血液は沸騰しそうになった。
それから昼を告げる鐘が鳴ったので適当なお店に入り食事をする。今まで意識していなかったのに、急にセージの視線が気になって食べるのが落ち着かない。向かい合う席はしばらく避けたい、と、こっそり思った。
食事の後は特にあてもなく村を散策する。セージはローズマリー様の姿でも時折来ているから目新しくもないだろうけれど、五年ぶりの私には目新しい店もあるし、以前とは興味のあるものが変わっているため興味深く見て回ることができた。
いざ思いを伝え合うとセージの態度が前よりもずっとずっと甘く感じ、恋人にはこんな風に接する男の子だったのか、と思うと同時に自分がその恋人であることが甘く胸を締め付けた。
「今日はメルトには行かなくていいのか?」
「モリオンさんのとこ?」
「うん。会いに行って、今までの礼なり詫びなりするって言ってたろ」
「帝都に行く前にはと思ってるけど、今日は……」
「心の準備がまだ出来てない?」
「うん……。早く会いたいって気持ちはあるんだけど」
「出自も言うのか?王の子だってことと、……王になるってこと」
「それも言わないといけないよね。どうして私がこんな体質で迷惑をかけてきたか、……もしかしたら全部知ってたのかな……」
私の引き寄せる良くないものが偶に二人に危害を加えることがあった。悪夢を見せることもあった。でも、ミヨシさんもモリオンさんも仕方ないよ、と言って私を責めることはしなかった。心が広く愛に溢れていたからという理由以外に、もしかしたら私の体質について理解があったのかもしれないとふと考え至った。私を産んだ母といつから交流があったのかはわからないが、ある程度事情を知っていたのかもしれない。
「どうなんだろな。ま、お前が行けそうだと思う日に行けばいいか。帝都に向かうときにメルトは通るんだし、その時でもいいし」
「うん」
この帝国は広い。特に帝国の外れの外れにある私たちの住む森、そしてこのハイスルから帝都までは直線で最短距離で向かっても普通に歩くと数日かかる。私はなるべく全ての町村を見てから帝都に入ろうと、帝都を挟んで反対側の外れの村までも時間をかけて見に行き、東西南北全ての町村を訪問し、時には滞在していったので帝都に入るまで四年かかったが。
メルトのモリオンさんのところで育った七年、それから修道院での三年。そのあと深い森のローズマリー様のところで二年。田舎で他人にあまり会うことなく暮らしていたころは全くわからなかった魔女だとか聖女だとか、そして王家の血の体質の事も、帝都に近付くにつれ分かるようになった。
勿論、魔女になるには精霊との契約が必要だということはローズマリー様という実物がいるためわかっていたが、精霊とは別に聖女の力を使うことが出来る者がいるということはローズマリー様の方針で知らされていなかったため森を離れて初めてわかった。
旅を始めて二年目の頃だったと思う。森を抜けてすぐにあるハイスルから帝都を挟んで対極にある貧しい村、リオドに到着した時だった。そこはローズマリー様の出身地である。
リオドは一時栄えたのだが、今は貧しい村だとお年寄りが話してくれた。数百年前のこと、聖女と魔女が同時期に現れたことがあった。聖女が村人の怪我や病気の治癒を、魔女は建物や治水などのインフラ面を整備したためこの村は栄えたのだが、魔女も聖女もいなくなった今、せっかくの設備も老朽化して元の貧しい村に戻っているのだと。
「魔女も土の属性と水の属性がいたと聞いているよ」
「えっ!?」
ローズマリー様はそんなこと一言も言っていなかった。そもそも、聖女という存在があることもその時に知ったくらいだ。私はどの部分に驚いたらいいのかわからないくらい驚いた。
まず、治癒の力というのは精霊を介する魔法ではなく、聖女の力であるということ。リオドにいた聖女は男性だったらしいが、親に似ない銀髪を持っていたということ。
(セージと同じ……セージって聖女だったんだ)
セージも銀髪である。珍しい髪色で、だから生まれて間もなく捨てられたのかもしれないと考えたことを思い出した。そしてここで聞いたことによってセージがどのような存在なのかがはっきりわかったのだった。けれども、聖女と一緒に村をおさめていた(?)はずのローズマリー様がどうしてセージにそのことを伝えなかったのだろうか。
もしかしたら何かがこの村であったのかもしれない。そう推測したが、聖女や魔女がいたのは数百年前のことだったらしいため、記録が残っていないとのことだった。
「一番最近までこの村にいたのは一人の魔女だったと、俺の曾爺さんが言っていたよ」
それはローズマリー様ではないかと思ったがそうではなく、水の属性の魔女だということだった。確かに、建物よりも下水や農地に流れる水路の方が新しいものに感じた。
「……どうして、魔女たちや聖女が出て行ったか知っていますか」
「聖女はこの村で死んだと聞いているよ。墓もある。魔女はどうして出て行ったんだったかね……」
寿命が長いとされる聖女もいつかは土に還る。この村で長い旅を終えたのだろうか。その時はそう感じていた。
……アップルさんに話を聞いた今は、聖女はローズマリー様の想い人で結婚もしていた人で、彼は国王に聖女として契約することを阻まれ人間としてその数十年(実際は118だったか)の生涯を閉じたということがわかった。
身近な人の悲劇は勿論他人事ではなく、私が今の国王を退けて魂の契約をしないとセージを聖女にすることができない。二人揃って叶えないと悲しい結末を迎えることはわかった。
(セージはローズマリー様の恋人が不当に聖女としての契約が認められなかったことを知ったらどう思うだろう)
セージの手のぬくもりを感じながら私たちは森のはずれへの帰路についた。
違和感には家に到着する前に気付いた。
ローズマリー様の小屋には特別な結界が張られていて私たちや薬を入手しにくる村人しかその道を見つけることが出来ないようになっている。
「結界が解けてるな?」
「……みたい」
不安に思いながら道を進むと精霊たちが小さな声で危険を知らせるサインを告げる。土の精霊だ。はっきりと言葉を聞いて使役することが出来るのはローズマリー様しかいないが、私たちにもその姿とただならぬ事態であるというサインは把握することが出来る。
「急ごう」
セージと急いで帰った小屋の戸は開きっぱなしで、私たちは焦ったように中に入って呼びかける。
「師匠!」
「ローズマリー様!?」
そこには人の気配はなく、壁に向かって衝撃波の跡があるのでローズマリー様は抵抗したものの何者かに無理やり連れ去られたことが考えられた。
「セージ!これ……!」
私は壁に魔法で残されたローズマリー様の字を見つけた。
『アリアナ ロッテルニア』
「……大聖女の名だ。ロッテルニアに向かうぞ」
「うん!」
私たちは準備もそこそこに家を飛び出した。
ここまでお読みくださりありがとうございました!
話も佳境に入ってきました。
アクセスが徐々に増えてきて本当に嬉しいです。
完結まで頑張りますので、是非また読みに来てくださいね^^




