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朝の話

お久しぶりの投稿となってしまいました。

活動報告も読んでいただけたら幸いです。

「おはようございます」

「おはよう」


 何となくハイスルへのお出かけが楽しみで眠りが浅かったようで早く起きられた朝。しかし一番乗りはローズマリー様だったようで階下に下りると既に一人でハーブティーを飲んでいらした。


「お前も飲むか?」

「いただきます!あの、朝食はもうお済みですか?」

「いや」

「なら、一緒に食べませんか?昨日ハイスルで自家製酵母の美味しそうなベーグル買ってきたんです」


 ローズマリー様は基本的には朝は弱く、起きていても朝食はとらないことが多かった。しかしせっかく美味しそうなベーグルを入手したので食べてもらいたいという思いでお誘いする。


「ならいただこうかな」

「はいっ!」


 かまどで半分に切ったベーグルの表面だけさっと焼いて、ついでに卵も焼き上げる。ハーブティーはレモングラスのようで爽やかな香りが漂ってきた。


「いただきます!美味しそう~」

「いただきます」


 胡桃がたっぷり入っているベーグルは私の好みで非常に満足だった。そして温かいハーブティーが頭をすっきりと目覚めさせてくれる。


「そういえば……」

「どうした」


 髪の毛と同じマロンクリーム色の美しい瞳が私を優しく見つめる。


「いえ、大したことではないのですが。ローズマリー様って400年くらい生きてるんですね」

「388だ」

「えっ?」

「388歳だ。まだ400歳ではない」


 そこは重要らしい。


「388年も長いと思いますけど、これからもっともっと生きていかれるんですね」

「お前も王位を継いだらそうなる。これから長い付き合いになるぞ」

「そう思ったら、ちょっと安心します。誰もいなくなっちゃう世界で長生きするのは、……」


 そこまで言ってはっとして口を噤んだ。ローズマリー様は確か人間のままだった恋人を失っている。この発言はそんな彼女に不用意すぎるものだったと感じた。


「なんだ……アップルに聞いたのか」

「……はい」

「確かにあたしは人間として生を全うした夫を見送った。273年前だ。過ぎてしまえば、あっという間さ。寂しさにもそのうち慣れる」

「……」


 273年前。ローズマリー様は今388歳だから、えーと115歳のとき?ん?人間だった恋人はかなり年下だったのだろうか??


「あの、その恋人?旦那様って若い方だったんですか?」

「そんな事聞いてどうする?あたしより年上だったよ。三つほど」

「……?」

「118歳で死んだ」

「えっ」


 この世界の平均寿命は70代から80代だ。それはかなりの長寿といえる。頭に疑問符が浮かんでいる私に気付いたローズマリー様がふっとため息をついて説明する。


「聖女にはなれなかったが、その能力はあるからな。病気になっても治癒ができる。だから病や怪我では死なない。けれども、人間である限り身体はいつか機能しなくなる。それが118歳だった」

「そう、なんですか」

「ああ」


 コト、と音がしたのでそちらを見るとセージが階段の途中にいて、視線に気付くと気まずそうな表情を浮かべておはようございます、と言った。


「聞くつもりはなかったんですが……」

「別に構わんさ。隠すことでもないからな」

「師匠、結婚、してたんですね」

「手続きはしているぞ」

「そうだったんですか……」

「……」


 人間と魔女だった以上、老いるスピードも違うし子供をもうけることも叶わなかっただろう。その生活が幸せばかりではなかったことが容易に想像できるため、私もセージもそれ以上のコメントができなかった。


「お前もベーグル食うか?茶もあるぞ」

「はい」


 ローズマリー様がセージに話しかけて今までの微妙な空気を自然に変えてくれる。


「そのローブ、いいじゃないか。買ったのか?」

「あ、はい」

「あ、それ!着てるんだね」

「……ああ。せっかくだしな」


 ベーグルを焼くためかまどに向かいながらセージのローブ姿を見つめる。淡い黄緑色が綺麗でセージによく似合っている。


「カモミールのその服と揃いだな」

「そうなんですよ!」


 気付いてもらえて嬉しくて、私は両手を広げてローズマリー様にワンピースを見せる。私の今日の服も、セージと一緒に買ったばかりのアメジストセージの花染めのものだった。


「なんだお前たち、ワシのいない間にそういう関係になったのか?」

「え?」

「えっ!?」


 そういう関係、とはどういうことだと疑問に感じたのと動揺したのとで変な声が出た。それはセージも同じようだったようで似たようなトーンで聞き返している。すると、ローズマリー様も怪訝な顔になる。


「同じアメジストセージから染めたペアだろう?ワシが若い頃は恋人や夫婦が互いに贈り合って着たもんだが、違うのか?」

「そんなこと、言われませんでした」

「別の場所に置いてあったし、ペアだとは聞いてないっす」


 確かに、恋人同士で同じ花から染めたものを分け合うのは素敵だと言われた記憶はある。が、大切に思うもの同士が贈り合うというのは初耳だ。昔はそうだったのだろうか。


「そうなのか?今はそれぞれの好みで着るもんなのか」

「多分……」

「確かに同じ花から染めたものだとは言われましたが、そういうものとは」

「なんだつまらん。数百年で文化も変わるもんだな。でもお前たちの様子を見てると、まんざらでもないってとこか」

「……っ!」

「し、師匠!」


 私は思わず赤面したが、セージも焦ったように声をあげる。しかし否定する言葉が出ないことにほっとしていることに気付いた私は更に顔が熱くなってしまった。


「いいことだな。二人とも、これから契約を交わしたら長い年月を共にすることになるだろう。ワシのようにはさせないから、安心して添い遂げろ」

「!!」


 お互いに顔を見合わせて、気まずくてすぐ逸らす。まともに顔を見られないままベーグルと目玉焼きをテーブルに置いた。


「ほら。早く食べろ。お前たち、出かけるんだろ?」


 何故知っているのだろうと動揺する。そしてお互いその動揺がおさまらないまま一緒に小屋から追い出されて出かけることとなった。


次回はいよいよデートシーンです。

ちょっとは甘い雰囲気になるといいのですが汗

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