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幻影道 四.五巻   作者: SAKI
47/50

「在りし日の記憶」その1

 これはまだユイが幻影守衛騎士団を作る前の昔の記憶、誰も知らない彼女の素顔と研究員達による非道な行動によって肉体と精神の苦痛により感情を失った彼女は全力で施設から逃亡し感情を取り戻すために外の世界から学びを得て地星のとある宿屋で出逢った掛け替えのない“恋人”との素敵な一日での物語。


「こーら、いつまで寝てるの」


 私は一年前から宿屋で二人一組の部屋でサクラハルカと共に暮らしていた、初めて会った時からハルカは私に一目惚れしたらしく付き纏われていた、髪は濃い茶髪に春を彷彿させる淡い桃色の瞳、体型は標準的だけど実際は下半身の肉付けは素晴らし私は羨ましくも思えた。しかし私は一切の心が無くハルカを嫌悪していた、私とは正確が正反対の太陽のような性格に心底嫌っていたのだが少しずつ過ごしていくとハルカの危ない行動や部屋の整理されてなかったり料理の下手さに呆れて怒ったり時には殴ったりもしたがハルカはごめんねと笑い飛ばしていた、それがムカついて大嫌いだった。


 でもそんなある日、ハルカが一日外出してると私は途端にとても寂しい気持ちに襲われた、いつもの日常ではないことに違和感を感じ、胸が辛くて苦しくてハルカの帰りを待ち望んでいたのだ、怪我していないか、病気には罹っていないか、薬や料理を作って待ち続ける程ハルカが帰ってきて欲しかった。


 そして私はもう我慢が出来なくなった、死んでほしくない、私に世話をさせて欲しいと欲望が抑えきれず外出先まで走って行った、そして近くの街にハルカが泊まる部屋を確認すると一人ぼっちで紙切れを見つめるハルカがいた。


 私はその姿に哀愁を覚え咄嗟に中に入った、ハルカは何故私がいるのか、留守番してと約束したのにも関わらず自分の事を嫌っていた私がこんな遠くにまで来たのかと狼狽える余裕すらなく私はハルカを連れ戻した、訳の分からぬまま連れ出されたハルカは困惑でしかないが私はハルカが居ないと生きられない人間に堕ちていたのだ。


 あの日以来私はハルカに同行しハルカが出来ないことを全て私が引き受けることに一年が経った、未だに料理の才能は無いが私が居るなら問題ないだろう。


 そんな時、ハルカからお誘いの話が来たのだ。今日は皆でパーティしようと、当時は隣の部屋で仲良くなったアリアンロッドも居てたまにミッションを共にすることもあったのでハルカが頼んで彼女の家を借りることになった。


 アリアンロッドは快く頷いたお陰で私は早速ハルカの元へと向かうとそこには料理に奮闘する姿があった。


「あれれ?焦げちゃった!?ユイはあんなに綺麗に焼けるのに何で?あわわわ!じゃがいも剥きすぎた〜!!」


 相当苦労してるご様子で・・・仕方無く声をかけるも何故か断られた。


「今日は二人に感謝するから私か頑張って………っ!?」


 余所見したせいで包丁で指を切ってしまった!私はもう見ていられずハルカの流れ出る血を止血し怒る。


「私にやらせて、ハルカは料理できないんだから」


「うぅ………でも!」


 煩い口を人差し指で押さえるとハルカは少し赤面する。


「私の方が感謝してるから私にやらせて、ハルカは黙って見てて」


 すると私は手慣れた手付きで今日のメニューを人目で把握しテキパキと下ごしらえを済ませていると背中から抱きしめられる。


「ちょ!危ないから下がっ―――― 」


 包丁を手にした私は困惑と怒りにハルカを叱ろうとしたその時、振り返るとハルカは潤んだ瞳で顔を背中に埋めた。


「ごめんね」


 何度も聞いた言葉なのに今日はとても重く、申し訳なく自分の不甲斐なさに落ち込んでいた、それから語られたのはハルカの卑下だった、天真爛漫なハルカが見せる悲観な顔に私は腹を立てて逆ギレみたいな感じで怒った。


「お願いだからそんな顔しないで、私の知ってるハルカはなよなよしないし辛そうに笑わない、辛いなら私に話して、苦しいなら私を頼って、そう言ったよね?」


 こんなハルカは見たくなかった、私のせいなのだろうか?私が家事が出来るからハルカを傷つけてしまったのか、私も自己卑下に浸ってしまった。


「ごめんね、ユイ。こんな私で………」


 今にも泣き出しそうになる顔を私は包丁を置き、強く抱きしめた、泣き顔は似合わない、私の傍で太陽のような笑顔が見たい、いつでも輝いて欲しくて私の理想として生きてて欲しいと願いながらも強く強く抱きしめた。言葉は交わさなくても私はハルカの暗い部分をよく知っている、だからこそ俯いて欲しく無いのだ。私の大好きなハルカが見たい。


「えへへ、ユイは本当に私のこと好きだね♪」


 するとハルカは天真爛漫な笑顔で顔を覗かせた、これだ、これが私の好きなハルカだ。


「ち、違う。落ち込んでるのがムシャクシャしてただけ」


「そーかな?抱き締めてくれたのに?」


「う、うるさい!」


 それでもこの時の私は思いを伝えられずに心の中でしまい込んでいた、胸の痛みは消えない、ハルカといると心臓が張り裂けそうで苦しい、いつかこの思いを伝えたいと言えずじまいに終わった儚い恋路はまだ遠い。

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