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幻影道 四.五巻   作者: SAKI
41/50

「ツンデレちゃんとおっとりお姉さん」 その5

 暫く痛みに耐えきれず暴走してしまいユイの身体に暴力を振るいながらも無事完了した。とはいえ痛みは治るのが遅いからニ、三日は休めるよう言われた。私はご褒美としてソファーでドーナツを頬張る。ドーナツは至ってシンプルに砂糖がかかったイーストドーナツだ。


「あいてて」

 

 強く叩き過ぎたのかユイの顔は腫れて身体も少し赤く腫れている箇所を擦っている。


「ご、ごめん…………」


 流石の私も謝る、ユイには酷いことをしてしまったな。


「ううん、言い出しっぺはお姉さんだから気にしないで、あんなに強く殴られるとは思ってなかったからね」


 そうは言っても私が振るった暴力はきっと壮絶だったのだろう、痛すぎて記憶に残ってない。だから兎に角謝ることしか出来なかった。


「少し待ちなさい」


 私はドーナツをテーブルの皿に置き、デスクの上にある救急箱を持ってきた。


「あ、い―――― 」


「うるさい」


「まだ何も言ってないよ!?」


 言わなくても解る、大丈夫とか平気と戯言を抜かすんだろうと思ったから言葉を遮断させた。私は強制的にユイの身体を治療することにした。本当にごめんなさいと伝えられなかったのが心残りだった。


☆★☆★


「えへへ、ありがとう」


 手当を終えるとユイは私の傍によって寄り添った。いつもは相手にするのか面倒だがこの時だけは許した。


「ん」


 私は貰ったドーナツを一つユイに差し出した。


「ほえ?」


 ユイは理解出来ない表情に面倒くさくなった私はドーナツをユイの口の中に押し込む。


「むぐぐ!?」


 ユイは一口を食べ終えると静かに笑った。そして一言告げた。


「ありがとう♪」


 愛らしい笑顔に私の頬が熱くなった。私達は特に話すことなく食べ進めて完食した。


「あーん♪」


 はむっと手に付いた砂糖を布巾で拭こうとしたらなんとユイは指を口の中に頬張るように舐め回す。生暖かい唾液とひんやりした舌が指に絡め付きこそばゆい気持ちになる。


「ちょ、何やってんのよ!?」


 私は声を震わせながら動揺してしまい強い口調で怒れなかった、こいつ子どもなら誰だっていいの!?


 私の注意にユイは指を放し舌を出しながら憎たらしい程の笑顔で笑った。


「ごめんね、サナエちゃんは全部可愛いいから舐めたくなっちゃった☆」


 へ、変態だぁ!!で、でも………ユイだからなんか許してしまう。私も毒されたのかしらね………こんな変人の事を好いてるなんて昔の私だったら考えられないわよ。


「はぁ、程々にしなさいよね」


 初めて本音が言えた、皆からツンデレのツンが強過ぎるとかデレると可愛いいとか言われたけど見なさい!私はちゃんと本音で言えたわよ!!妄想の中の私は勝ち誇ったように胸を張る、私はサバサバ女でもツンデレ系でもない、心優しい美人なんだから!!


 そう自分に言い聞かせてるとユイは何か引いてる。


「あのサナエちゃんが………許してくれた………嘘?」


 何か私のイメージを勝手に勘違いしてないかしら?私は本音で語ったのにこの反応、しかもあのユイに引かれるなんて。


「ね、熱でもある?やっぱりもう少し休もうか?痛かったもんね♪」


 私はまるで馬鹿にされてるほど優しくされたことに腹が立ち、血管を浮き出させて“本音”でキレた。


「アンタなんか大嫌いよ〜!!!!!」


 私の怒号は部屋中響き渡りユイは何故か笑っている、まるで今の私が平常運転にみたいな笑顔だ、本当に腹立つ、本当の私はもっとピュアなんだから・・・次こそは私の印象を変えて見せる、そう誓った。だからほんの少しだけ勇気を頂戴。


 その日はユイが傷を見る為に泊まり込みまでしてもらいご飯がとても賑やかで美味しかったらしい、私は静かでも充分だけどユイが騒いでるならこれも悪くないなとしみじみ思った。

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