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幻影道 四.五巻   作者: SAKI
29/50

「毒にも薬にもならない一日」その8

 その夜、何処からか声が聴こえる。特に何かあるわけでもなく急に目が覚めてしまった、声を辿ると背後から聴こえ、それがアリアちゃんの声だとボンヤリと発覚した。


「でも良かった、ユイちゃんがこんなに“子供”優しい女性になって・・・初めて会った時なんかぶっきらぼうで無表情で無愛想だったのに今では“ハルカちゃん”のように天真爛漫なお姉さんになってるんですもの♪」


 頭を撫でられ私を褒めている?何故?


 意味が分から無いが気持ち悪い訳ではない、寧ろほんわかする、これがアロマなんとかの作用か知らないがまた目を瞑ったら寝てしまいそうだ。


「私が女神に任命された後、ユイちゃんはハルカちゃんを亡くして辛かったね・・・行って慰めたかったけど仕事やら式で行けなくてごめんなさい、三人しか知らない事や笑った事もあの頃にはもう戻れないのね………私はハルカちゃんみたいにいつでも笑って場を和ませることは出来ないけど償いとしてユイちゃんの傷を私にも話して欲しいな・・・」


 知ってるさ、ハルカが亡くなって私は壊れた、そこにはアリアちゃんの姿は無く今の今まで恨んでいた、ハルカのことより仕事を優先したことを。だからずっとアリアちゃんには何も知らせてないし言葉を交わすのが嫌いだった。でも久し振りにあってからはアリアちゃん自身から連絡を寄越す事が増えて“謝りたい”と私が何回も無視しても何度も送ってくれた。


 いい加減ウザい、関わるなとチャットで返したら物凄く落ち込んで部屋に籠もってたらしいね。勿論今でも私はアリアちゃんは信用なんかしてないし期待もしてない、だから本当は今日縁を切るつもりだった。


 でも一緒にいるとなんだかあの頃の私達が帰ってきたような感覚に戻り中々切り出せなかった、私は臆病者だ。堂々としたくてもアリアちゃんの前ではどうも気が気になれないんだ・・・だからまた一本踏み込んでスタート地点へ戻ってしまう、それが気に入らなくても私はそうするしかないんだ。


「ユイちゃん、私はユイちゃんを陰ながらも守っていきたい、ユイちゃんのこと大好きだけど傍に入れないからせめて支えさせて・・・私はユイちゃんなら何をされても目を瞑るし援助もする、お願い」


 優しく頭を撫でられ終いには抱かれてしまった、面倒くさいと避けようとしたが鼻を啜る音がする、捨てないでと泣いている、抱き締める強さで分かる。アリアちゃんは本気だ、私の事を想って泣いている、私の心には何一つ響かないと言うのに……優しく包んであげたくなる涙に私は自然に寝返り、仕方なく抱き締めてやった。


「ユイちゃん・・・?」


 起きてたのと言わんばかりに目を開けるとそこには目が赤く涙を流す可憐な女性がいた。私は優しく抱くとアリアちゃんも抱き締める、いじらしくて少し子どもっぽいアリアちゃん、今回だけ、仕方なく大人に優しくしてやった。アリアちゃんは寝るまで私を抱き枕のようにして深い眠りに堕ちていった。

そしていつの間にか私も瞼が閉じて行った。


☆★☆★ 朝


 苦痛の一日に終止符を打つ前にアリアちゃんから呼び出された、ホテルの部屋へ戻るとそこには下着姿のアリアちゃんがいた。


「来て♪」


 抱きしめてと言わんばかりに両手を広げにこやかに笑っている、昨日のことが響いたのか私も何とはなしに近付き抱き合う、そして耳元で囁かられた。


「ユイちゃんって今、付き合ってる人とか居る?」


 その言葉に私は即答した。


「居ない」


「ハルカちゃんに告白する前に言ってたもんね♪男の人と十人くらい付き合ってたって」


「あれは仕方なくよ、それにあの男達は皆ゴミだったから縁を切ったわ」


 温もりを感じながら赤面するアリアちゃんは次にこんな言葉を発言する。


「なら・・・私とは駄目かな??」


 前から気付いていた、アリアちゃんは私に好意を抱いている、ハルカとはまた違う愛情を私は感じ取っていた、だが私は敢えて遠ざけた、ハルカの方が好きだったから・・・まぁ結局失恋で終わったけどね。


「ごめん、今は付き合えない、好きな人がいるから」


 私も告白するとやっぱりかと抱き合うことをやめて照れてしまった。


「そっか、やっぱり好きなんだ“サクラユカリ”ちゃん」


 その言葉にドキッと心臓が跳ねた、バクバクと高鳴る鼓動に冷や汗をかく。


「うふふ♪そんなに赤らめなくても・・・分かりやすいんだから」


 これは嘘を吐けない状況にまで陥っている!だからといって本音はバラしたくないし!!どどどどどうすれば!?


「大丈夫、皆には内緒よ?」


 アリアちゃんはそう言って服を着替え始めた、私はこの後どうしようとドキドキして落ち着かない!!


「あれ?帰らないの?愛しの“サクラユカリ”ちゃんに?」


 その言葉に私はムカついた、口元を引っ張り二度と口が聞けないように引っ張った。


「ち、調子に乗らないで!!次言ったらぶ、ぶっ飛ばすから!!」


 本音はダダ漏れ、恥ずかしくて声が震え、あと少しで噛みそうだったところを押し戻して私は手で熱を冷やしながら帰ることにした、背後のアリアちゃんは嬉しそうに見送ってきたので一発叩くことにした、それでも嬉しそうにニヤけた面だったからもうヤケになってさっさと帰ることにした、やっぱり関わらない方が良かったかな、毒にも薬にもならない一日が漸く終わり大好きなあの子の元へと戻れるんだ。

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