「毒にも薬にもならない一日」その2
数分、私は取り敢えずドレスに着替えてみた。私には全然似合わない淡い桃色と爽やかなスカイブルーに仕立て上げられていた。そして胸元はやっぱり開いてる、肩はそこまで露出されてはいないがこれだとブラジャーが着けられない・・・とんだ欠陥ドレスだ。可愛いいフリルとか眩しいくらいに散りばめられた星は最早お嬢様が着るような気がする。
「いいねいいね!似合ってるよ♪」
いや、下着着けられないんだけど………やっぱり殴るか?
「あのさ、下着着けられないしなんかこの下着、布地薄くない?」
私の質問に私の胸が蒸れるのが嫌いなことを知ってて通気性良い物を選んだらしい、やっぱりただのミスか。
「ま、下着はユイちゃんが日常で着けていいから安心して♪」
こんな布地&面積少なめのセクシー下着をいつ着けろと?私のランジェリーより布地も面積も無いじゃない。
「それより、化粧しないとね♪」
そんな心を置き去りにするようにアリアちゃんは私をドレッサーの前に座らせ当初予定していた化粧だけが髪型も全部変えられた。
「何これ?」
終了と共に私は瞼を上げるとそこには別人が居た。長めの睫毛に柔らかなメイク、口紅は薄い桜色にその他諸々やってたけど一つ分からなかった。化粧に三十分も掛かってることを知り、そっちの方が驚いている。
「後は髪型をハーフアップにして・・・後はお姫様っぽくティアラのカチューシャにすれば・・・完成♪」
もう私の原形が目の色と髪色しか合っていない、これが化粧?
私は自分の見た目やスタイルなんか拘りや自惚れることは無いが自分とは思えないくらいに美しくて可憐なお姫様のような感覚だ。
「一応、礼は言っておく」
はっきり言ってこれでユカリちゃんと結婚式を上げたい、そう思えるぐらい美人だ。ユカリちゃんもこんなに綺麗な私なら結婚してくれるだろうか?
などと考えているとアリアちゃんは嬉しそうに微笑んでいた。
「素敵よ♪」
そう送られた言葉に顔が熱くなった私は顔を俯かせてしまった。
「さ、少し街を歩きましょうか♪」
私の有無は言わさずアリアちゃんは私を外へと連れ出した、履きなれていないヒールを履かせられながら出会う人に二度見され更に恥ずかしくなってしまった。
☆★☆★
街へと繰り出された私達は何処へ行くのかと聞くとそこには絶対に行かせたくないチラシを見せられた。
「最近、ここで人気の喫茶店があるの!【スイカズラ】って名前なんだけど〜♪」
マズイ、マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ!!!アリアちゃんには私の仕事場を一切言ってない、着信来ても全部既読スルーしたからこれは本当にマズイ。
ど、どうにかして止めさせねば!
「そ、それぇ〜?彼処言ってみたけど〜なんか〜面白くなかったよ〜」
手に汗握る私は全く見に覚えのない発音と声の高さにアリアちゃんは驚く。
「ど、どうしたの?そんなに汗かいて・・・」
「い、いやぁさ〜もっとマシな喫茶店知ってるからそっち行かない〜てきな〜?」
焦って嘘つくのゴミになってる!!物凄く訝しげな表情で見つめられてる!!
「ユイちゃん・・・?」
汗がダラダラと滝のように流れる、皆にも伝えてないからもしバレたら私は処刑される!!
私は精一杯に悪評を広めた、これで諦めてくれるだのうと神頼みまでした、だからお願い!!
「ふ~ん・・・行こっか☆」
私は絶望した、アリアちゃんは興味津々に歩き始めた。恐らく嘘だとバレてその正体を明かそうとしてるんだ。一瞬横顔で悪意ある笑顔が垣間見えた!!覚えておきなさいよ・・・
私はもう腹を括る事を覚悟し、私達のお家へ一直線へと向かう。道中格好のせいでイヤらしい眼差しやチラ見されてるのなんてこの際どうでもいい、ユカリちゃんにバレなけ・・・
今日のシフトって確か・・・ユカリちゃん、ノアちゃん、プレアちゃん、ローグちゃんだったような??
私は全てを諦め、悟りを開くことにした、そして私は空を見上げながら涙ぐんでこう言った。
「あぁ・・・終わった」




