魔王と勇者の我が子との言葉無き再会
話を聞き終えたミツルギは、チャーンスに案内されてオルグとリマが寝ている墓へ向かった。墓のある場所は魔王城の庭で、外れの方に白い花で囲まれた墓らしき石があった。
「チャーンズさん、あれがまさか……」
「はい。あそこがオルグ様とリマ様の墓石となります」
話を聞いた後、ミツルギは駆け足でオルグとリマの墓へ向かった。
「父さん……母さん……」
ミツルギが墓に触ると、突如涙が流れた。これまで親がいないと思って過ごしてきたが、親の存在を知り、どうして離れ離れになったのかを理解した今、ミツルギの中に不思議な感情が溢れ出てきた。
「ここが……俺の生まれた場所だったんだ……」
ミツルギは涙を拭き、再びオルグとリマの墓石を見つめた。見つめているうち、夢でたまに見た二人の男女を思い出した。その男女はオルグとリマで、夢の中でミツルギに語りかけているとミツルギは思った。
「俺のことを……思ってくれてるんだ……死んだ今でも……」
ミツルギの目から、再び涙が流れてきた。それと同時に、切ない気持ちと悲しい気持ちが混じりあったのか、感情的になったミツルギは大声で泣き始めた。ネレスは駆け寄ろうとしたのだが、チャーンスがネレスを引き留めてこう言った。
「今はそっとしておいてあげましょう。私たちができるのは、それだけです」
「確かにそうですが……ほっとくわけにはいきません」
ネレスはチャーンズの制止を振り払い、ミツルギの元へ向かった。ネレスはハンカチを取り出し、ミツルギに差し出した。
「涙を拭いて。もし、悲しいなら私がミツルギの気持ちを受け止めてあげる」
「ネレス……」
「オルグさんとリマさんはもういない。だけど、ミツルギは一人じゃない。この世界に転移してきた時からずっと私がいたじゃない」
「……ううっ……」
ミツルギは涙組んだ後、ネレスに抱き着いた。ネレスに抱き着いた状態で泣き始めるミツルギを、ネレスは優しく頭を撫でた。
数分後、気持ちが落ち着いたミツルギはネレスと共に魔王城のロビーにいた。
「落ち着いたようでよかったです。それでミツルギ様、これからどうしますか?」
チャーンズの言葉を聞き、ミツルギはお菓子を食べながらこう答えた。
「ビガシャープ家の連中がまだ上で暴れてる。それに、俺たちを助けてくれた人が掴まったんだ。酷いことをされる前に助けないと」
口の中に詰め込んだお菓子を飲み込んだ後、ミツルギは紅茶を一気飲みして立ち上がった。
「チャーンズさん、今からまた上の大陸に行ってきます。あいつらをぶっ飛ばさないと!」
「ミツルギ様、今上の大陸へ行くのは反対です」
チャーンズは難しい顔をしてこう言った。ミツルギはどうしてという顔をしたが、ネレスはミツルギにこう言った。
「多分またバーラードに挑んでも返り討ちに会う。今の私たちじゃ敵わない」
「うーん……確かに」
「ネレス様の言うとおりです。いくらオルグ様とリマ様の力を受け継いでると言っても力は無い。また返り討ちに会います」
「じゃあどこか強くなる場所はありますか?」
「はい」
チャーンズの返事を聞いたミツルギはよっしゃと嬉しそうな声を出した。チャーンズはミツルギとネレスを連れ、窓から見える山を見せた。
「あそこの山はよく魔界の戦士が修行のために使われています。こことは違って空気が重く、山に生息するモンスターは気性が荒いのです」
「あそこで修行すればいいんだな」
「はい」
ミツルギの言葉に返事をしたチャーンズだったが、心配そうにこう言った。
「修行すればいいんですが、生きて帰って来る者は滅多にいません。大体百人で一人程度です」
「そんなに……」
生きて戻ってくる人数を聞いて、ネレスは絶句した。だが、ミツルギはにやりと笑ってこう言った。
「大丈夫だネレス。俺がいるから心配ない」
「確かにお二人なら生きて戻ってくる可能性がほんの少しだけ上がります。危険な修行ですが、それでも行きますか?」
念押しのようにチャーンズがこう聞いた。チャーンズの質問に対し、ミツルギとネレスはこう答えた。
「はい。行きます!」
「強くならないと世界を救えないしな!」
「分かりました。今日は話が長かったため、明日から修行を行ってください。では、お休みできる場所を案内します」
チャーンズはそう言って、二人に部屋の案内をした。しばらく歩くと、二人は少し大きな部屋の前に到着した。
「この部屋をお使いください。ここは依然、オルグ様とリマ様が使っていました」
「父さんと母さんの部屋か」
「あなた方が使うのであれば、お二人も喜ぶでしょう」
と、チャーンズは涙を流しながらこう言った。その後、部屋に入ったミツルギは部屋中を見回し、小さく呟いた。
「ここが父さんと母さんの部屋か……」
「広い部屋だね」
「ああ。ここで父さんと母さんが過ごしたんだな。そして……俺も」
ミツルギは放置されている乳母車を見て、小さく呟いた。
「見ててくれ父さん、母さん。俺が二人に代わって世界を奴らの手から救って見せるから」
と、ミツルギは外を見ながら呟いた。




