魔王と勇者の馴れ初め
オルグは転んで足をひねったリマを連れ、魔王城へ連れて行った。勇者であるリマを連れて戻って来たオルグを見て、チャーンズたちは目を丸くして驚いていた。
「オルグ様! も……もしかしてこの少女が勇者の……」
「ああそうだ。だが、転んで足をひねったようだから、手当の為に連れてきた」
「いやちょっと、だからって敵対してる人を連れてくるのはちょっと」
「怪我をした少女にとどめを刺せと言うのか? お前たちはそれでも血の通った魔族か!」
「あーいや、まぁ確かに非道だと思いますが……うーん……あとはオルグ様に任せます」
「それでいい。回復魔法を使えるモンスターを連れて来てくれ」
「分かりました。ちょっと待ってください」
その後、チャーンズが連れてきた回復魔法ができるモンスターによって、リオの傷は治った。
「痛くない……」
「魔族用の回復魔法ですが、人にも効果があるんだ。治ったのはいいですが、ちゃんと治ったかどうかは分かりません。動くときは気を付けてください」
「うん、ありがとう」
「ではこれで」
と言って、回復魔法を使えるモンスターは去って行った。その後、治療が終わったのを察したオルグがリオに近付いた。
「足は動かせるか? 痛くないか? 歩けるか?」
「そ……そこまで心配しなくていいわよ。大丈夫よ」
リオはソファから降り、魔王城の玄関へ向かった。それを見たオルグは驚いた。
「もう帰るのか? お菓子とかお茶とか用意したけど」
「友達の家に来たんじゃないから! 全くもう……なんか調子が狂う……」
「……俺もだ」
オルグは笑いながら去ろうとしているリオにこう言った。帰ろうとしたリオだったが、外に出る前に振り返ってこう言った。
「余裕があれば、また来るから」
そう言った後、リオは魔力を開放して飛んで去って行った。オルグはその言葉を聞き、顔を真っ赤にして悶絶した。
「また来るって……俺に好意とかあるのかな? だったら嬉しいけど……いつ来るんだろ? その前にシャワーとか服とかちゃんとしたものを着ないと……いやでもいつ来るか分からないしな……」
「オルグ様、こんな所で悶絶しないでくださいよ。自分の部屋があるんだから、そこで悶絶してください」
「ああすまない」
掃除をしていたモンスターに頭を下げた後、オルグは自室に戻った。それから何を考えているか分からないが、オルグの恥ずかしそうな悲鳴が聞こえた。
「一体何を考えているんですかねぇ」
「エッチなことでも考えてるんじゃない?」
チャーンズは煎餅をかじりながら、質問してきた部下にこう言った。
一方でリオは近くの町に降り立ち、服屋へ向かった。リオの姿を見た店員は驚き、リオにこう聞いた。
「リオ様。どうかしましたか?」
「男受けのいい服は無い?」
「男受け……あ~ハイハイ。リオ様も年ごろの娘。そういうことに興味が……」
「変な笑顔でこっちを見ないで! いいから服を探してよ!」
と、茶化してきた店員に向かってこう叫んだ。
それから数日後、オルグは大声を上げながらモップを持って走っていた。それを見たモンスターは話をしていた。
「オルグ様、いつ勇者が来てもいいように毎日掃除してるな」
「確かにあの勇者、可愛かったからな。オルグ様、やっぱ惚れてるんだろ」
「魔族と人が付き合ったらどうなるんだろう?」
「知らん。オルグ様が身を持って教えてくれるだろ」
「オルグ様の恋路をネタに話をするんじゃない!」
と、チャーンズが話をしている部下に対し、持っていたお盆で部下の頭を叩いた。頭を抑えた部下に対し、チャーンズは言葉を続けた。
「多少の私用もあるとはいえ、オルグ様が掃除をしているんだ。お前たちも話をしているんだったら掃除をするんだ」
「分かりました!」
部下は敬礼をした後、掃除を探しに向かった。チャーンズはため息を吐きながら手にしていたお盆を拭き、キッチンへ置きに行こうとした。だが、外から魔力を感じた。
「勇者か」
「何? 勇者が来たのか!」
オルグは意気揚々と部屋から出て、玄関へ向かった。
「オルグ様! 勇者は戦いに来たのかもしれませんよ! 喜んでいられるばかりじゃないですよ! ちょっと、スキップのスピードを落としてください!」
チャーンズは走ってスキップするオルグの後を追ったが、結局追いつくことはなかった。
「来たか勇者!」
オルグは嬉しそうに扉を開け、外にいるリマを見た。だが、そこにいたのは軽鎧を装備したリオではなく、女の子っぽいワンピースを着たリオの姿だった。
「今日は……礼を言いに来た。あの時はありがとうと……」
リオは恥ずかしそうにこう言った。だが、オルグは可愛らしいリオの姿を見て、体を震わせた。この次の展開を察したチャーンズは、耳を抑えてリオにこう言った。
「勇者、耳を抑えておけ」
「え? ええ……」
リオがチャーンズの言うとおりに耳を抑えた後、オルグの声から叫び声が発した。
「萌ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
この声を聞いたせいかどうか分からないが、少し離れた大陸で一斉に鳥が飛び去ったという。




