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魔王と勇者の勝負の行方

 あれからリマは何度か魔界へ来てはオルグと戦いを挑もうとした。しかし、自分好みの顔であるオルグの顔を見ては、照れて逃げるを繰り返していた。最初、ゴブリンたちは再び高度な睨み合いの戦いが始まると思って少しワクワクしながら見ていたが、何度もやる度に飽きてしまった。


「魔王! 今度こそ勝負よ! かかって来なさい!」


「おい、また勇者が来たぞ」


「どうせ逃げるんだろうなー」


 ゴブリンたちの小声を聞き、リマは怖い目つきでゴブリンを睨んだ。ゴブリンは殺されると思い、後ろに下がった。すると、魔王城の方からオルグがやって来た。


「勇者、大事な民を驚かすな」


「オルグさ……ま……」


 ゴブリンはやって来たオルグを見て歓喜の声を上げようとしたが、オルグの服装を見て言葉を失った。オルグは今、おしゃれな男性用スーツを着ていたのだ。


「魔王、何なのそのふざけた服は?」


「勇者と言えども女性だ。それなりに綺麗な服で行かなければ失礼だ」


「失礼? それよりも……服の裾がちょっとめくれてるわよ」


 リマはオルグに近付き、めくれている服の裾を直そうとした。その際、二人の体が当たってしまった。


「おにゃあああああああああああああああああああああああああああああ!」


「ぎにゃあああああああああああああああああああああああああああああ!」


 リマは悲鳴を上げながらそのままどこかへ走り去り、オルグはその場にうずくまって叫び声を上げた。


「オルグ様!」


「何すか今の声は?」


 ゴブリンたちは心配してオルグに近付いたが、オルグは悲鳴を上げながらこう言っていた。


「初めて女の子に触っちゃった、何かめっちゃいい匂いした!」


「オルグ様、思春期の少年のようなことを言うのはちょっと……」


「というか、純情ですねオルグ様」


 と、ゴブリンたちは恥ずかしさのあまり悶絶するオルグを連れて魔王城へ向かった。一方リマは近くの村の宿屋の部屋に入り、布団にもぐって悲鳴を上げていた。


「初めて男の子に触っちゃった、腹の部分めっちゃ硬かった! めっちゃ筋肉質だった!」




 魔王城に戻ったチャーンズは、ため息を吐きながらオルグのスーツを畳んでいた。


「オルグ様、いい加減勇者と戦ってくださいよ。こっちの運がいいのか相手の運がいいのか悪いけど、なんかすぐ逃げて行きますが……」


「うん。そうしたいんだけどさぁ……あんなかわいい子と戦えないよ」


 その言葉を聞き、チャーンズは目が点となった。


「まさかオルグ様、勇者に惚れたのでは?」


「惚れた? いやいやいやいやいやいやいやいやいや、おいおいおいおいおいおいおいおいおい、俺がねぇ、ま……ままままままま……まままーま、まーままさかそんなことが……」


「めっちゃ動揺してるじゃないですか。惚れてるんですね」


「そうか……この感情が……」


「ごまかすのはやめてください」


 チャーンズはため息を吐き、オルグにこう言った。


「我ら魔族が人に惚れるのは……まぁいいとしましょう。昔なら絶対に反対されましたが、今は時代が違います。あなたの運命の人はあなた自身で見つけてください。それが魔族だろうが人だろうが、何だって構いません」


「許してくれるのはいいけどさ……実はさ……」


 オルグはチャーンズの耳元に近付き、こっそりと勇者の名前を知らないことを伝えた。


「相手の名前が知らない?」


「だからさ、どうにかしてくれよ~」


「自分自身で何とかしてください。とにかく、このスーツはしまいます」


「あ、ちゃんとお願いね、死んだ親父から貰った勝負用のスーツなんだから」


 と、チャーンズに伝えた後、オルグはベランダに出て、夜空を見ながらため息を吐いた。


「どうやって勇者の名前を知ろうかな……」




 翌日、またリマが魔界にやって来た。


「またまたまたまたまたまた来たわよ魔王! さぁ、今度こそ勝負なさい!」


 リマの姿を見たゴブリンは別の方へ集まり、話を始めた。それが気になったリマはゴブリンの群れに近付いた。


「何してんの?」


「今度こそ戦うか、また逃げるかの賭けをしてるんだ。今のところ、また逃げる選択が多い」


「今度こそ戦うわ! 逃げないからちゃんと見てなさい!」


「はいはい」


 ゴブリンがそう言うと、魔王城からオルグがやって来た。


「また来てくれたか勇者……あのその……」


「話は無用! 今度こそ勝負……」


 リマは走ってオルグの方へ向かって来たが、途中で転んで運悪く近くのドブに落ちてしまった。


「勇者ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


「うえぇ~、いやぁ……こんな状態で宿屋に戻りたくなぁい……」


 ドブから這い上がったリマは、汚れた服を見て嫌そうな顔をした。立ち上がろうとしたのだが、リマは足から痛みを感じた。


「嘘……足ひねった?」


「勇者よ」


 そこでオルグがリマに近付いた。リマは殺されると思い、オルグを睨んだが、オルグはリマを両手で抱きかかえた。


「ちょっ! な……ななな……なななーな、なーななにするのよ!」


「け……怪我をしたのだりょ? あのちょっと、魔王城でて……手当すっからさ、あのその……とりあえず魔王城へ連れてくよ!」


「は? ハァァァァァァァァァァァァァァァ?」


 リマの困惑する叫び声がする中、オルグは魔王城へ向かって飛んで行った。そんな中、オルグは心の中でこう思っていた。


 俺やっちゃったぁァァァァァァァァァァ! 何でお姫様抱っこするのかな、尻とか腰とか触るじゃん? うわー、確実にエロい奴だと思われてるよ、しかもさっき言葉噛んだし、うわー、カッコつけようとして変な口調で話すんじゃなかった!


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