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魔王と勇者の出会い

 少女は自身の周りを囲んでいる山賊たちを見て、呆れてため息を吐いていた。その様子を見て、山賊たちは不思議そうに少女にこう聞いた。


「何だ? 俺たちが怖くねーのか?」


「魔力も無い、見た所大した力も無い。そんな奴が私を倒そうだなんて、ジョークだとしても面白くないわよ」


「ジョークか……悪いな嬢ちゃん。俺たちは本気だ!」


 山賊の一人が斧を振り上げて少女に攻撃を仕掛けようとした。振り下ろした瞬間、途中で金属のぶつかる音がした。


「な……何でだ?」


「あんたらじゃ私の相手にはならないよ」


 少女は左手を横に薙ぎ払うように動かすと、そこから金色の剣のようなものが現れた。そして、攻撃を仕掛けた山賊は何故攻撃が受け止められたのか把握した。少女が出した剣によって攻撃を防がれたのだと。


「何もない所から剣だと!」


「けどよー、しっかり見たら細いし弱そうな剣じゃねーか。力任せに振り下ろせば一発で粉々だ!」


 山賊は力強く斧を振り下ろしたが、剣は予想をはるかに超えるほど固く、逆に斧が刃こぼれしてしまった。


「嘘だろ……」


「あんたら悪人みたいだから容赦はしないけど、殺しはしないから安心して」


 少女はそう言って、魔力を開放して自身の周りに無数の剣を発した。それを見た山賊は力の差が大きく開いていることを察し、悲鳴を上げて逃げ出した。


「あらら、逃げちゃった」


 少女は魔力を収めた後、腰に腕を当てて呆れてこう言った。


「あーあ、勇者リマの最初の戦いがこんな奴らになるとは……最初にしてはバカバカしいわ」


 リマはそう言った後、魔界に向かって歩いて行った。




 勇者が来ることを知ったオルグは、いつものように農作業の手伝いや魔王城の掃除、政治活動をしていた。いつものように動いているため、チャーンズは不安げにこう聞いた。


「勇者が来るのに、対策とか練らなくてもいいんですか?」


「対策してもそれが何の役に立つ? 光の魔力を使う奴が相手だ、力でぶつかるしか方法はない」


「ですが」


「責任者として俺が戦う。もしやられたら、チャーンズは皆を連れて人がいない所へ逃げてくれ」


 と言って、オルグは地図を取り出して魔界から離れた大陸に目印を付けた。


「そこまで考えていたんですか……」


「最悪のことを考えてな。それと、もし俺がやられても復讐とか考えるなって皆に言っておいてくれ」


「分かりました……しかし、そうならないように願います」


「……だな」


 オルグがこう言った直後、カラス型のモンスターが叫び声を出しながらオルグの部屋に入って来た。


「大変だー! 大変だー! 変な魔力を持った少女が現れたー!」


「勇者かもな。行ってくる」


 オルグはそう言って窓から外へ飛びだった。去って行くオルガの姿を見て、チャーンズは心の中でオルグの無事を願った。


 オルグは魔界の入口へ向かい、周囲を確認した。そこには白いマントを羽織った少女が立っていた。


「お前が勇者か?」


「そうだ。お前がこの地を支配する魔王だな?」


「支配というかなんというか……まぁ責任者だな」


「責任者? まぁいい。あんたが魔王ね! 私は光の里の勇者、リマ! あんたをやっつけるためにこんな所へ来たわ! さぁ、勝負なさい!」


 リマはそう言いながらマントのフードを外し、顔を見せた。その時、リマはオルガの顔を見て立ち止まった。オルガもリマの素顔を見て、少し動揺してしまった。それから数分、二人は何も言わず互いの顔を見て突っ立っていた。周りにいたゴブリンたちは何があったのかを見るべく、二人に近付いた。


「オルガ様、あの勇者の顔を見てずっと立ち止まってるぜ」


「あの勇者もだ。オルガ様の顔を見ているだけで動きはしない」


「オルガ様も強いが、あの勇者も相当強いぞ。ああやって互いの顔を睨み、相手がどう動くか予想しているんだ」


 と、ゴブリンたちは高度な戦いになっていると思い、二人がどう動くか緊張しながら見ていた。しかし、オルガは心の中でこう思っていた。


 何だあの子? めっちゃ俺好みの顔してるんだけど。あんなかわいい子がいるとは知らなかったな。


 一方でリマも表情を崩さずオルガの顔を見て睨んでいた。だが、心の中ではこう思っていた。


 キャー! 何なのあの人? めっちゃ好みの顔なんだけど! 魔王っていうからいかついオッサンのような顔しているのかと思ったけど、予想と全然違う! イケメンじゃなーい!


 そんな中、リマは我に戻って大声でこう言った。


「きょ……今日の所は見逃してあげるわ! また来るから今度は覚悟なさい!」


 と言って、走って去って行った。オルグは逃げるように走るリマに向かって叫んだ。


「あれ? 戦わないの……というかちょっと待って、名前だけでも教えて!」


 オルグは何度もこう叫んだが、悲鳴を出して走っているリマにその言葉は届かなかった。その後、オルグは残念そうに息を吐いた後、とぼとぼと歩きながら魔王城へ戻って行った。その様子を見たゴブリンたちは、ざわつきながら話を始めた。


「流石オルグ様。一睨みだけで勇者を追いやるとは」


「勇者も我らがオルグ様には敵わないのか」


「そうだな。魔界は安泰だ!」


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