全ての真実
ミツルギの頭の中は混乱していた。この状況で、このタイミングで己の出生のことを聞かされるとは思ってもなかったからだ。
「ミツルギが魔王の血を引いているとしたら、その力を使えるのも納得がいく……」
ネレスは小さく呟いた。これで何故ミツルギが闇の魔力を使えるのかがはっきりとしたからだ。そんな中、一人の男性が近付いてきた。
「ようやくあなた自身のことを理解したようですね」
聞いたことのある声を聞き、ミツルギは振り返った。そこにいたのは転生呪文の精霊、テレラールだったのだ。
「テレラール! あんた、ここにいたのか!」
「精霊と言っても、私はここで生まれ、育ったのです」
テレラールがそう言うと、ミツルギはテレラールに近付いてこう言った。
「全て知ってたんなら教えてくれたっていいじゃねーか!」
「全て話そうか考えました。ですが、あの時に全てを話してもあなたが理解してくれるかどうか不安でした」
「まぁ確かに。最初にこの世界に来た時だったら何言われても信じないな……」
テレラールの言葉を聞き、ミツルギは理解した。そんな中、チャーンズがミツルギにこう言った。
「もう一つお話があります。あなたの母親の話です」
「母親? そうだ、一体誰なんだ?」
「これを見てください」
と言って、チャーンズはピースサインをし、カメラ目線で笑顔を作っている女性の写真を見せた。
「うわー、綺麗な人だなー」
「えっ、この人って……」
ミツルギの横にいたネレスは写真を見て驚いた。ネレスの様子を見て、かなりの有名人かと思ったミツルギはネレスに聞いた。
「有名人なのか?」
「伝説の勇者、リマ。魔王と戦うために旅立って行方知れずになったんだけど……でも、私が生まれる前の話だからあまりわからなくて……写真しか見たことないの」
ネレスの話を聞き、ミツルギは声を出しながら感心した。テレラールは二人に近付き、こう言った。
「少し長い話になりますが、魔界であったことをお話します。少し長くなりますので、どこかくつろげる場所へ移動しましょう」
その後、チャーンズとテレラールは二人を連れて客間へ向かった。チャーンズは二人の前に座り、テレラールは紅茶の支度を始めた。
「今からかなり前のお話ですが……オルグ様の前の魔王様はかなりヤンチャで、いろんな所を支配しようとしていました」
「日本のファンタジーでありそうな設定だな……」
話を聞いたミツルギは少し呆れながらこう言った。チャーンズはテレラールから紅茶を受け取った後、一口すすって話を続けた。
「オルグ様は先代魔王を討伐し、新たな魔王として魔界に君臨しました。そこから平和のため、人々のため、動き出したのですが……」
チャーンズは昔のことを思い出しながら語り始めた。
オルグは魔王となった後、先代魔王によって苦しめられていた地域を助けたり、奴隷のような扱いをされていたモンスターや人々を開放したりしていた。その結果、オルグは先代魔王よりも慕われ、歴代最高の魔王なのではと噂された。しかし、その噂は魔界とその周辺の地域だけしか伝わらず、他の地域までは届かなかった。
そんなある日、オルグが村人の農作業を手伝っていると、若かったチャーンズが走ってやって来た。
「オルグ様! 大変です!」
「どうした? とりあえず冷たい麦茶飲んで落ち着け」
オルグはやかんの冷たい麦茶をコップに注ぎ、チャーンズに手渡した。チャーンズは麦茶を飲んで一息ついた後、オルグにこう言った。
「光の里という場所から勇者と名乗る者がここへ来るそうです!」
「勇者? 光の里だから光の魔力を使う奴か」
「オルグ様、我ら魔界の住人は光の力に弱いんですよ、光の魔力を使う者が来たら大混乱となります!」
「だな。だけど慌ててたら戦えない」
オルグは息を吐いた後、肩を回してチャーンズにこう言った。
「もし勇者というのが来たらすぐに魔界の皆を避難させてくれ。俺一人で話をする」
「話?」
「悪い奴じゃなければ話せば分かる。無駄な血を流したくないし、無駄に命を奪いたくない」
と、オルグは自分の手を見つめながらこう言った。先代魔王を魔王の座から引き下ろすため、オルグは先代魔王と話をした。しかし、先代魔王がふざけるなと叫びながら襲い掛かってきたため、仕方なくオルグは反撃をした。その結果、オルグは不本意ながらも先代魔王の命を奪ってしまったのだ。そのことを察したチャーンズは、頭を下げてこう言った。
「分かりました。オルグ様、その時が来たら我らが魔界の皆を守ります」
「頼む」
その後、オルグは翼を持つモンスターに勇者が来たらすぐに伝えろと連絡をした後、再び農作業の手伝いを行った。
魔界から少し離れた大陸。一人の少女が草原を歩いていた。
「ここから一ヶ月ほど歩けば魔界にたどり着く。周りの島々を支配する魔王……この私が成敗してやる!」
その少女は大声で意気込みを叫んだ後、歩き始めた。だが、その前に山賊らしき男たちが現れた。
「ヘッヘッヘ……活きの良い嬢ちゃんじゃねーか」
「奴隷として売ればいい金になりそうだ」
「悪いな嬢ちゃん。痛い目にあいたくなければ俺たちの言うことを聞きな」
山賊たちは下品な笑い声で少女に近付いてきた。少女は山賊を見て、ため息を吐いていた。




