作戦当日
ビガシャープ家を乗せた巨大な飛行船はゲルグッグから離れた所にいた。トープラーとレスンはそれぞれのソファーに座ってワインを楽しむ中、ゴランは右腕で腕立て伏せをしていた。それを見たレスンはワイングラスを机の上に置き、ため息を吐いてゴランにこう言った。
「ゴラン、筋トレをするのはいいが場所を考えろ」
「すまねぇ兄貴。あの個室だと腕立てするスペースが足りないんだよ」
「仕方ない。我慢しろレスン」
「はぁ……分かりました。ゴラン、少し落ち着いて腕立て伏せをしろよ」
「分かったぜ」
その時、飛行船の乗組員が報告のためトープラーたちの元へやって来た。
「バーラード様が乗った小型飛行船が合流しました」
「やっと来たか、バーラードの奴」
「遅くなるかもしれないからハラハラしてたぜ」
腕立てをしていたゴランは立ち上がりながらこう言った。それからすぐにゲインたちと共にバーラードがやって来た。
「遅くなってすまない。部下は取り戻した」
「取り戻したというか、脱出したんですが」
「何でもよい。結果が良ければいいんだ」
レスンはこう言うと、ゲインたちにワインを渡すように乗組員に告げた。それを聞いたゲインは頭を下げながら床に座った。オデッサは周囲を見回し、トープラーにこう聞いた。
「質問ですが、皆様の部下はどこへ? それと、ベッグ様とイオ様は?」
「今回我らの部下に出番は無い。ベッグと共に城で留守番だ。イオは家出した」
トープラーの答えを聞き、ゲインたちは驚きの声を上げた。そのすぐにボブザードが続けて質問した。
「今回ゲルグッグには銀色の竜とミツルギとネレスがいるかもしれませんぜ。奴らを倒すためにも戦力を……」
「心配ない。お前たちを頼りにしているし、いざとなれば俺たちも戦う」
バーラードの答えを聞き、ゲインたちは納得した。
「バーラード様たちも戦うのか。なら大丈夫かもな」
「ミツルギとネレスが相手でも勝ちそうだもんな」
ゲインたちは話を始めたが、あることを思い出したオデッサはバーラードに近付いてこう言った。
「バーラード様、お話があります」
「何かあったか?」
「実は、銀色の竜の正体についての話なんですが……」
その言葉を聞いたトープラーとレスン、ゴランは話が気になり、オデッサの方へ近づいた。重役が近付いたせいで緊張したオデッサは少し慌てながらこう言った。
「すみません、これはあくまで俺の勘ですが……」
「勘でも何でもいい。面白そうだから話してくれ」
ゴランに急かされ、オデッサは咳ばらいをして喉を整え、話を始めた。
数日後、ビガシャープ家がゲルグッグへ到着する日付となった。昨日からセイントガーディアンが町の各地で歩き回るため、ミツルギとネレスは外に出ることはできなかった。
「スティーブって奴も来るんだろうなー」
「ミツルギにすごいライバル心を抱いてたからね。多分来るよ」
「しつこい奴は好きじゃないんだけどな」
二人が話をしていると、ドレアンが近付いてこう言った。
「そろそろ作戦の準備が始まるぜ」
「はい、分かりました。行こうネレス」
「うん」
その後、二人はアルソの元へやって来た。アルソは二人に作戦の資料を見せながらこう言った。
「いい? 奴らが工場の視察を始めたら外にいる狙撃犯が工場の外壁に向かってバズーカを撃つ。それを目印にして二人は工場に殴りこみ。兵器の破壊とセイントガーディアン、奴らの兵隊を倒しまくって」
「中で暴れるだけでいいんですね」
「そう。でも気を付けてね。どうやらバーラードの部下が脱走したって話もあったし」
「バーラードの部下?」
モリトゥスの館での戦いを少し忘れているミツルギは、誰と戦ったか思い出そうとした。だが、全く思い出せなかった。それを察したネレスはミツルギにこう聞いた。
「あの時のこと忘れたの?」
「少し暴走気味だったからうろ覚えなんだよな。魔力も結構使ってバッテバテだったから戦った後すぐ倒れたし」
ミツルギの話を聞き、ネレスは自分が倒れる間際に感じたミツルギの魔力を思い出した。あの魔力は普通の魔法使いや人が発する量ではない。そう思い、ネレスは改めてこう思った。ミツルギはどこか普通の人とは違うと。
「ん? どうしたネレス? 俺の顔に何かついてるか?」
「え? ううん、大丈夫」
「そう。ならいいや」
「さて、話を続けるよ」
アルソの言葉を聞き、二人はアルソの方を振り向いた。
「ビガシャープ家を倒すのはドレアン様たちに任せる。私たちはとにかく雑魚を倒し、戦力をそぎ落とすこと。ここでビガシャープ家を倒すことができなくても、奴らに痛い一撃を与えることができる。二人にはここで頑張ってもらいたいの。子供にこんなことを言うのはちょっと物騒だけど……」
「大丈夫です。私はもう戦う覚悟ができています」
ネレスの言葉を聞き、ミツルギはにやりと笑ってアルソにこう言った。
「俺もネレスと同じく戦う覚悟はある。今日で奴らの天下を終わらせてやる!」
「やる気十分の用ね。でも、これだけは守って。必ず戻って来ること」
「はい!」
「分かりました!」
アルソに返事をした後、二人は行ってきますと言って外へ向かって行った。二人を見送った後、アルソは背伸びをしてこう呟いた。
「さて、私も作戦の為に動かないと」




