雨の中の襲撃者
ミツルギとネレスはトニーカワの町で傷を癒した後、町の人たちに見送られながら再び旅立った。
「また近いうちにドレアンさんたちと会うかもな」
「そうだね」
と、二人は今朝見たニュースを思い出しながら話をした。トニーカワの町から少し離れた町、ゲルグッグという大きな町でビガシャープ家がやってきて、ゲルグッグ内にある兵器工場を視察するというニュースが流れていたのだ。そのニュースを見て、二人はイオ以外のビガシャープ家が来るということで、ドレアンたち銀色の竜が動くこと、そして自分たちの力を求めるだろうと予想したのだ。
「ドレアンさんが力を貸してほしいっていったらどうする?」
ネレスの問いに対し、ミツルギは少し笑ってすぐに答えた。
「そりゃーもちろん協力するさ。奴らをぶっ倒すのが俺とネレスの旅の目的だもんな」
「うん。そうだね」
ネレスはミツルギの笑顔を見て、笑みを返して答えた。
トニーカワの町から旅立ち数時間が経過した。マントやローブを着ているが、たまに二人を狙って襲ってくる賞金稼ぎや荒くれ共が現れた。だが、これまでの戦いで成長した二人にとっては、名の無い賞金稼ぎや荒くれ共は敵ではなかった。
「ヒェェェェェェ!」
「これをやるから許して、見逃してェェェェェェ!」
ミツルギのパンチ一発で気を失った仲間を連れ、荒くれ共は荷物が入ったバックを置いて逃げ去って行った。少し困りながらネレスはバックを手にしたが、ミツルギは欠伸をしながらこう言った。
「向こうがやるって言ってたし、貰っちゃおうぜ。何か弱い者をぶっ飛ばしたようで気が気じゃないけど、元々はあいつらが襲って来たんだし」
「それでいいのかな?」
と、ネレスは少し戸惑いながらバックの中の荷物を取り出していった。バックの中には少量の金銭と腐りかけのチーズ、それと地図らしきものが入っていた。
「地図とチーズ? 変な組み合わせだな」
「だけど、地図が入ってたのはよかったよ。この辺の地理、まだ分からないの」
「運がよかったな。俺ら」
ゲルグッグまでの道を知らない二人にとっては、地図は心強い味方である。やり方が多少強引とはいえ、地図を手にした二人は大切にリュックの中に入れた。
それから再び歩き始めたが、ミツルギは突如頭の上に何かが当たったことに気付いた。
「何だ? 何もない」
その呟きを聞いたネレスが空を見上げると、雨雲が広く漂っていた。
「雨が降るよ」
「マジかよ!」
雨が降ることを察した二人は、慌てて雨宿りできる場所を探した。だが、場所を見つける前に雨は本降りになってしまった。
「荷物が濡れないようにしよう!」
「闇の魔力で傘代わりにできないかな?」
「私たちの場所がばれちゃうよ!」
「だよな」
話をしながら二人は走り始めた。走り始めて数分後、二人の目の前に古い小屋があった。
「人の気配がないな……」
ミツルギは扉を開け、小屋の中を調べた。ミツルギの予想通り小屋の中には人の気配はなく、あったのは古ぼけた椅子やテーブル、ベッドだけだった。
「誰かいるのかな?」
「もう使われてないみたいだぜ。ベッドの布団やまくらがボロボロすぎて、触れただけで崩れる」
ミツルギは布団を手にし、手にした瞬間に形が崩れるところをネレスに見せた。それを見たネレスは不安な顔になったが、ミツルギはネレスに近付いてこう言った。
「大丈夫だって、俺がいるから」
「期待してるよミツルギ。私、少し怖い雰囲気少し苦手なの」
「俺を頼れよ」
その後、二人はその小屋に入って雨宿りを始めた。その様子を、何者かが木陰に隠れてこっそりと見ていた。
二人は濡れたマントやローブを脱ぎ、ネレスの火の魔法で乾かし始めた。
「闇以外の魔法って結構便利だな。俺も使えるかなー?」
「使える属性は人それぞれ違うから、必ず使えるってわけじゃないの」
ネレスの答えを聞いたミツルギは少ししょんぼりしたが、ネレスが慌ててこう付け加えた。
「でもね、練習をすればいろいろな以外の属性の魔法も使えるよ。ただ、その分練習がきついけど」
「ネレスはいろいろ使うけど、練習したのか?」
ミツルギの言葉を聞き、ネレスは少し考えながら答えた。
「私の場合は、何故かすぐに使えたの」
「ネレスの両親がすごく腕のいい魔法使いだったんだな」
「そう……かもね」
今は亡き両親のことを想いながら、ネレスは答えた。今の力は、魔法使いであった両親が残してくれた力なのかもしれない。そう思いながら、ネレスは自分の両手を見つめた。その時、突如ミツルギがネレスに抱き着いた。
「あぶねぇ!」
「え? ふぇ!」
何事かと思ったネレスだったが、その直後に弾丸らしき物体が窓を貫いて、そのまま外へ飛び出してしまった。
「何なの今の!」
「俺らを狙う奴か。小屋の中に入るのを確認しやがったんだな!」
ミツルギはそう言って闇の魔法を発し、銀髪になった。だが、別の方向から弾丸が飛んで来た。
「クソッ!」
ミツルギは闇を地面に叩きつけて衝撃波を発し、飛んで来る弾丸を消し去った。次はどこから飛んで来るんだ? ミツルギはそう思いながら周囲を見回した。外にいる謎の人物は、黒く光るライフルを構え、にやりと笑いながら次の弾をリロードしていた。




