町の現状
トニーカワの町に入った二人がまず最初に思ったのは、酷い町だという気持ち。町の中には浮浪者がかなりおり、ヒドウの部下らしき兵士たちが浮浪者やデモを行っている団体を見つけたら、即刻射殺している。そのせいか、町の建物の壁や道路には血の跡がくっきりと残っていた。
「あいつら、人の命を何だと思ってんだ?」
銃声が聞こえると同時に、ミツルギはヒドウや兵士たちに対し怒りが生まれた。だが、ネレスがミツルギの震える手を握ってこう言った。
「ここで暴れたらもっと大変なことになるよ。私だって同じ気持ち、すぐにでもヒドウを倒したい」
「ネレス……」
ミツルギはネレスが怒りを抑えていることを察し、深呼吸をして冷静になった。その後、二人は兵士に目立たぬよう町の中を歩き始めた。しばらく歩くと、二人は町の中でかなり目立つ悪趣味な館を見つけた。
「何だあの館?」
「おい坊主、この町に来たのは初めてか?」
と、酒場で飲んでいる男性が声をかけてきた。ミツルギは男性を睨んだが、男性は笑いながら手をふらふらさせてこう言った。
「俺は悪いもんじゃねーよ。ただちょっとお節介なだけだ」
「そうやすやすと人に話しかけるもんじゃないぜ、おっさん」
「お兄さんと呼べよ坊主。まぁいい。この町が初めてなら俺が少し教えてやるよ」
「金をせびるつもりじゃ……」
ネレスは不安そうにこう言ったが、男性は自分のポケットから財布を取り出し、どや顔でこう言った。
「子供からカツアゲするほど俺は金に困っちゃねーぜ。ただで教えてやるよ」
その後、二人は酒を飲んでいる男性の話を聞いた。話によると、あの悪趣味で目立つ館がヒドウの館である。ヒドウは毎日夜前に町に出て気に入った女性を探し、無理矢理連れて行くのだという。
「俺の知り合いの男が嫁さんを取られそうになったからヒドウに襲い掛かったんだ。だけど、奴の部下のキチクとゲドウっつー剣士が俺の知り合いを斬り殺しやがったんだ」
「腹が立たないのか?」
ミツルギがこう聞くと、男性はグラスを握りながら悔しそうに答えた。
「悔しいさ。ただの酒飲み仲間だが、バカ騒ぎして飲む酒は最高だった。俺だって奴らに一矢報いたいけど、力が無い。キチクとゲドウは強すぎる……」
男性の話を聞き、二人は全てを理解した。その後、ネレスは財布から一枚の札を出し、男性に渡した。
「金はいらねーって言ったはずだが」
「お礼位させてください」
「いつかきっと、あんたの知り合いの仇はとってやる」
二人はそう言って館の方へ歩いて行った。去って行く二人を見て、男性はにやりと笑って酒をグラスに注ぎ、飲みながら呟いた。
「バカ共と戦おうとする勇気ある戦士に、乾杯」
ヒドウの館に近付いた二人は、周囲を見回した。館が近いせいか、見張りの兵士がかなり多い。少しでも変な動きをしたら射殺されるだろうとミツルギは思った。
「下手に動いたら殺されるな」
「でも、どうやってあの中に入ろうか?」
「それが難しいんだよなー」
ミツルギはそう言うと、ネレスの方を向いてこう聞いた。
「なぁ、この世界に赤外線とかあるのか?」
「セキガイセン? 何それ?」
赤外線センサーがこの世界にないことを知ったミツルギは、よっしゃと思いながらネレスにこう言った。
「センサーが無いならこっちのものだ。排気口やどこか開いてるところから中に潜入して……」
「セキガイセンってセンサーのことなのね。多分あの手の館にはそう言うのがたくさんあるよ。魔力を使って人の足音や体温を感じたらブザーを鳴らす物や、銃を撃つ物もあるよ」
「あ、魔力があったか」
日本より高度な技術の存在を知り、ミツルギは自信の考えを却下した。ならどうする? そう思いながらミツルギはある言葉を思い出した。それは、ヒドウは毎日夜前に町に出て、気に入った女性を無理矢理館に連れて行くと。
「そう言えばヒドウって奴は毎日町に出て女性を連れてくんだよな」
「うん。ねぇミツルギ、まさか……」
ネレスはミツルギの考えを察し、嫌な顔をした。だが、その時ネレスはイオたちとの会話を思い出した。それは、ミツルギが女装をしたら似合いそうだと。
「ミツルギの案に賛成。だけど、奴の館に乗り込むのは難しいと思うの」
「ああ。確実にネレスを連れて行く可能性はないからな」
「だからその可能性を上げるために、ミツルギも女装して」
ネレスの言葉を聞き、ミツルギは目を丸くして驚いた。
「何で?」
「もしかしたら私たち二人が連れられる可能性があるじゃない。そうしたら、二人で暴れられるよ」
「女装……か……」
ミツルギは予想外の言葉を聞いて動揺していた。本来の予定であればネレスが館に連れられ、その場で暴れ、そのどさくさに紛れてミツルギが合流して二人で大暴れする。その予定であった。だが、確実に合流するには二人が同時に館に入るしかない。しかし、その為に女装をするのはミツルギにとって嫌なのである。
「悪いネレス。女装だなんて俺にはとても」
「決まったら早速服屋に行くよ。大丈夫、コーディネートは私に任せて!」
と、やけに張り切ったネレスが無理矢理ミツルギを服屋に連れて行った。




