到着、トニーカワの町
トニーカワの町を支配しているヒドウは、ミツルギとネレスが近付いていることを察し、町の周囲にある旅人の宿屋や店などにセイントガーディアンや自分の手下を見張りに向かわせていた。
「くぅぅぅぅ……あんな強い二人がこの近くに来るなんて、思ってもいなかった……」
ヒドウは机に座りながら頭を抱え、苦しそうに声を出していた。部下の一人がヒドウを見て、横にいた同僚にこう聞いた。
「あのミツルギとネレスが近くにいるってさ」
「ジャーケムの村の騒動のことだろ? 俺が聞いた噂だと、あの二人のおかげで工場が爆発せずに済んだってさ」
「へー。俺はそんな話聞いてないな。だからヒドウさんが命令した時、セイントガーディアンの連中がやる気のなさそうな顔をしたわけだ」
「仲間が助かったんだから、恩義を感じてるんだろ」
「オイうるさいぞそこの二人! さっさと仕事を行えバカモン!」
ヒドウの叫びを聞き、部下は慌てて走って去って行った。
宿屋にいるミツルギとネレスは入口にいるセイントガーディアンの動きを見ていた。だが、しばらくしてセイントガーディアンは去って行った。ネレスは安堵の息を吐き、ミツルギにこう言った。
「騒動にならなくてよかったね」
「ああ。下手に戦ったらヒドウって奴が何をするか分からんからな」
ミツルギはイオとの会話を思い出しながらネレスに答えた。一応ビガシャープ家の一員のイオが、最低のクズ野郎と評する男だ。もし下手に騒動になっていたらトニーカワの町がどうなるか分からないからだ。
一安心した二人の元に、宿屋の主人がやって来た。少し驚いた二人だったが、主人は少し笑いながらこう言った。
「いやー悪いね。セイントガーディアンの相手をしてたんだよ」
「はい。入口の方で話をしているのが見えました」
主人はネレスの言葉を聞き、見えていたかと呟きながら話を続けた。
「ミツルギとネレスが近くにいるから探しに行けとヒドウが命令したそうなんだ。だが、彼らは仲間が助かったからと言ってやる気はないんだ」
「仲間が助かった?」
ミツルギはその言葉の意味が分からなかった。だが、工場の爆破を止めたことで周囲に被害が及ばなかったことを思い出し、納得の声を出した。
「ま、物騒な時があると思うが、ゆっくり休んでいってくれ。騒動は俺が対処するから」
主人はそう言って下の階に降りて行った。
翌日、一休みした二人は再びトニーカワの町へ向かった。朝早くから歩けば昼前には着くと主人に言われたため、少し早く起きて旅立った。その結果、言われた通り二人は昼前にトニーカワの町に到着することが出来た。しかし、目の前には人の群れと簡単に作られたであろう壁があった。
「何だあの人の群れ? そんでもって弱そうな壁は?」
「外壁のつもりなのかな? にしては、本当に弱そう」
二人が話をしていると、突如銃声が聞こえた。それと同じタイミングで女性の悲鳴も聞こえた。
「不審者は容赦なく打ち殺す! 用が無ければさっさと帰れ野次馬共!」
何があったのかと思いながら二人は少し離れた所にある木に登って様子を見ると、兵士の一人が血を流して倒れている女性の髪を引っ張りながら、人の群れに対して銃口を向けていた。
「酷いことをするな」
「無抵抗の人を撃ったの? 酷い……」
ネレスがこう言った直後、女性の連れらしき男性がナイフを手にした。まずいと思ったミツルギは兵士に向けて手の平を出し、小さな闇の魔力を発した。
「仇討ちのつもりか? ナイフで銃に敵うはずがないだろう!」
兵士はナイフを持った男に銃を構えたが、ミツルギが発した小さな闇は銃に命中し、小さな破裂音と共に銃を弾き飛ばした。
「うし、この隙に助けよう」
「うん」
二人は木から降り、魔力を開放して猛スピードで兵士に近付いた。ミツルギは兵士を蹴り、ネレスは銃弾を喰らった女性の手当てを行った。ミツルギに蹴られた兵士はそのまま吹き飛び、壁の周りのお堀に落下した。着水の音がした後、ミツルギは周囲を見回した。誰もが目を丸くして口を開け、二人を見ていた。
「あー……ちょっとやりすぎた」
「目立ちすぎだよ」
二人が会話をした後、人の群れは二人の周りを取り囲んだ。
「一体何者なんだあんたら?」
「兵士を一発で蹴り飛ばすなんて、ヒドウの奴に目を付けられるよ」
「どうなるか分からないぞ」
「これじゃあ当分町の中に入れないよ」
二人に飛んで来たのは心配する声。ミツルギは考えながらネレスの方を見たが、ネレスもどうするか分からなかった。その時、別の兵士がミツルギに近付いた。
「何者だ貴様? 少し話を聞こう」
兵士を見て、ミツルギは心の中で仕方ないと思いつつ、魔力を開放して兵士に近付いてこう言った。
「頼みがあるんだオッサン。俺たちを町の中に入れてくれよ」
「ふざけるな。貴様のような野蛮人をこのトニーカワの町に入れてたまるか」
「あんたもぶっ飛ばされたいのか?」
ミツルギはさらに魔力を強め、兵士にこう言った。兵士はミツルギの魔力を感じ、下手に逆らってはいけないと思ったのか、冷や汗をかいてこう言った。
「今回だけは特別だ。怪我人もいるようだしな。さっさと入れ!」
兵士の言葉を聞き、町に用があった人たちは歓喜の声を上げた。




