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五男、イオの心の中

 世界を支配するビガシャープ家はオジーブ国の城を拠点とし、世界中に信頼できる兵士を送り、革命やビガシャープ家の支配に反対する者を処罰していった。だが、ビガシャープ家の中でもこのやり方に疑問を持つ者がいた。五男のイオである。


 イオが廊下を歩いていると、兵士や役員が話しながら慌てて走っていた。


「ジャーケムの村の兵器工場が破壊されたぞ!」


「被害はどうなった?」


「奇跡的に被害は広がってない。だが、あれ以降その場にいた兵士たちの連絡が取れない」


「捕まったかあるいは……やなことを考えるのは止めよう」


 話を聞き、イオはまたどこかの兵器工場が襲われ、破壊されたのだと理解した。


「全く……そんな物を作るから狙われるんだよ」


 そう呟き、イオは自室に戻った。部屋の中には三人のメイドがいて、部屋に入って来たイオにすぐに近付いた。


「イオ様、どこに行ってたんですか? そろそろ勉強の時間ですよ」


 と、メイドの一人、シェリーがこう言った。それに対し、イオはため息を吐いてこう答えた。


「帝王学なんて学びたくないよ。どうせ父さんが死んだあと、僕がその跡を継ぐわけでもないし」


「縁起でもないことを言わないでくださいよ~」


 シェリーはそう言いながらイオに近付いたが、上司であるカナリアとメアリーがこれ以上何も言うなとシェリーに告げた。三人のメイドがいる中、イオは窓から外を覗いていた。


 彼にはある夢があった。世界を支配しようと考えるこの一族から抜け出し、自由に旅をしたい。イオはずっとこう思っていた。悪政をやったら、きっと誰かが反発する。力や権力で無理矢理潰しても、また誰かが反発する。いずれ力を持つ者が現れ、倒されると。だから、イオはトープラーのやってることは無駄だと思っていた。どうせビガシャープ家の一員として捕まるのなら、ここから逃げ出してビガシャープ家としての縁を切り、旅人として人生を歩みたいと思っていたのだ。


「いずれ、この屋敷から出て行ってやる」


 と、イオは小さく呟いた。




 その日の夜。イオは兄弟やトープラーと共に食事をとっていた。そんな中、兵士の一人が慌ててやって来た。


「お食事中申し訳ございません!」


「何かあったのか?」


 と、長男のレスンがナフキンで口を拭き、兵士にこう聞いた。兵士は冷静になりつつ、手元のメモ用紙に書かれている文章を読み始めた。


「ジャーケムの村の兵器工場が破壊されました。そして、銀色の竜が各地で目撃されました」


 話を聞き、イオはやっぱりと思った。銀色の竜の存在をイオは知っており、いずれ彼らがトープラーを倒すだろうと考えていた。


「銀色の竜か。で、ジャーケムの村の工場をやったのは誰だ?」


「最近話題になってるミツルギとネレスという子供です。子供ながら、銀色の竜とつながりがあり、モリトゥスの工場を破壊するのに銀色の竜に手を貸したと話が出ています」


「俺の部下をやった奴らか……」


 次男のバーラードが拳を握ってこう言った。そう言うと、バーラードは急いで手元の料理を食べて飲み込み、すぐに立ち上がった。


「ごちそうさまでした。俺は今から出かけてくる」


 バーラードが何をするか理解したトープラーは、ナイフでステーキを切りながらこう言った。


「気を付けてな」


 トープラーの言葉を聞き、バーラードは小さく返事をして扉を閉めた。話を聞いた三男のゴランはため息を吐いてこう言った。


「俺もその二人と戦ってみてーな」


「相変わらず戦うのが好きだなゴランは。俺みたいに頭を使う気はないのか?」


「兄貴みたいに頭を使うのは苦手なんでな。腕を使うのは好きだが」


 と言って、ゴランは腕にできた筋肉をレスンに見せた。その後、食事を終えたイオは部屋に戻り、誰もいないことを察してリュックを用意した。このリュックはいずれ旅立つために準備したリュックであり、その中には武器や薬草などの道具が入っていた。


「食料はモンスターの肉で済ませばいい。宿屋は道端にある。襲われても魔法と剣で何とかなる。よし」


「何がよしですか?」


 後ろからシェリーの声が聞こえ、イオは慌て始めた。


「よしって……いやー、特に何も」


「何ですかその大きなリュックは? どこか行くつもりなんですか?」


「……そうだよ」


 シェリーに嘘は通じない。そう思ったイオはシェリーに近付き、手を取って窓に近付いた。


「ちょっとイオ様? 何をするんですか!」


「僕の家出を察した以上、君も僕の家出に付き合ってもらう。他の人に知られたら、僕はきっとこの城に戻される」


「家出って……どうしてそんなことをするんですか?」


「どうせ父さんたちは強い人に倒される。そうなった以上、父さんたちと悪事に関わってなくても僕も処罰される。どうせそうなるんだったら、この家から抜け出して旅に出たい」


 イオの言葉を聞き、シェリーは困惑した。


「困るのも当たり前だろう。でも、僕はもう決めたんだ」


「左様でございますか」


「全く、無茶をする人ですね」


 と、扉からメアリーとカナリアの声が聞こえた。二人はイオとシェリーに近付き、横に並んだ。


「メアリー、カナリア。君たちが何を言っても僕は言うことを聞かないからな」


「何言ってるんですかイオ様」


「私たちはあなたのメイドです。最初から最後まであなたに付き合いますよ」


 二人がそう言った後、イオは安堵の顔をした。イオは三人の顔を見た後、魔力を開放して大きなマントを作り出した。


「少し飛ぶ。皆、僕に捕まっていてくれ」


「分かりました」


「後のことはお願いします」


「落とさないでくださいね」


 三人の返事を聞き、イオは三人のメイドを連れて窓から飛びだった。その様子をバーラードが見ていた。


「やっと旅立ったか。イオ」


 バーラードはイオが家出の準備をしているのを知っていた。だが、バーラードはイオが支配に興味が無いことを知っており、そのことを事前に家族に伝えていたのだ。


「達者でやれよ、イオ」


 と言って、バーラードは旅立つ弟に小さく声をかけた。


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