ジャーケムでの出来事
ミツルギとネレスは男たちと別れた後、念入りにフードを深くかぶってジャーケムへ向かった。時折すれ違う人たちはいたのだが、彼らはミツルギとネレスに気が付かなかった。
「結構ばれないもんだな」
ミツルギは周囲を見回して呟いた。道の途中には賞金首のポスターが張っており、そこに反逆罪としてミツルギとネレスのぼやけた顔写真が映し出されていたのだ。
「ぼやけてるから分からないかも」
「あの屋敷の中で戦ってる時、誰かが写真を撮ったのかな?」
「多分そうだと思う。特徴もほぼ適当だし、ばれないかも」
「さっきの連中は俺たちの正体見破ってたけど……まぁいいか。また襲ってくればぶっ飛ばせば」
ミツルギの言葉を聞き、ネレスはうんと言って返事を返した。会話をしながら歩いていると、二人は村らしき場所に到着した。近くの電柱柱には、ジャーケムの村と書かれた札があった。
「ここがジャーケムか」
目的地に着いたと思い、ミツルギはジャーケムの村を見渡した。ジャーケムは小さな村だが、ビガシャープ家の紋章を付けた兵士やセイントガーディアンらしき兵士が村をうろついていた。
「見張りかな?」
「かもな。見ただけでも偉そうにしてるって分かるぜ」
二人が話をしていると、目の前に行列ができているのを見つけた。近くでこちらが最後尾と書かれた看板を持った男性がいたため、二人は声をかけた。
「すみません、これは何の行列ですか?」
「ジャーケム村に入るための行列だよ。あんたらも知ってるだろ、銀色の竜と最近噂のミツルギとネレスがモリトゥスを倒したって。そのせいで、近くの村や町にいるビガシャープ家の関係者が警戒して、入るためにいろいろとチェックしないといけないんだよ。全く、めんどくさいことになったよねー」
男性の話を聞き、二人は礼の返事を言ってその場から去って行った。その後、人の目が付かない場所へ移動し、身を隠しながら話を始めた。
「結構まずい状況になってるな」
「行列に並んで村に入ろうとしても、確実に身元がばれるし」
「かといって、無理矢理入ろうとしたら大騒動になるしなー」
「何かいい方法はないかな……」
二人が唸り声を上げて考えていると、近くの草むらから音が聞こえた。ミツルギは少し魔力を開放し、ネレスはブリッツスパーダを手にした。だが、草むらから出てきたのは一人の少年だった。
「何だ……子供か……」
ミツルギはそう言って魔力を止めた。少年は二人を見て、近付いてきた。
「あんたら、ミツルギとネレスだろ?」
身元がばれたと思った二人は、たじろいだ。この少年が騒いだらとんでもないことになる。そう思っていたが、少年は言葉を続けた。
「俺はそんなことしないよ。俺はグーニー。ジャーケムの村に住んでるんだ」
「あの村に住んでるのか。でも一体どうやってここに?」
「秘密の抜け道があるんだ。俺、あんたらみたいな人が来るの、ずっと待ってたんだ」
と、グーニーはそう言った後、二人に付いて来てと言った。二人は顔を見合わせ、グーニーのことを信じる選択をし、グーニーの後をついて行った。
抜け道からジャーケムの村に到着し、二人はグーニーを探した。抜け道の先は人の気配がない裏道のような場所。あるとしたら錆びた空き缶や、その場に捨てられたゴミ袋だけだった。
「うげぇ、くせぇ」
「ここ、ゴミ捨て場なのかな?」
二人が鼻をつまんで話していると、近くの物陰にいたグーニーがこっちへ来てと手招きした。二人はグーニーの所へ行き、話を始めた。
「なぁグーニー。一体この村で何があったんだ?」
「ビガシャープ家に仕えている連中が、無理矢理村に兵器工場を作ったんだ。しかも、作った兵器を試すために、俺たち村人を使ってるんだ」
「酷い……」
「俺は無事だ。実験台になるのはビガシャープ家に文句を言ったり、悪口を言うような人。俺の親も文句や悪口を言ったから……」
グーニーが泣きながらこう言ったため、ミツルギはグーニーの涙を拭いた。
「辛かったな」
「俺……何もできなくて悔しくて悔しくて……強くなりたいけど……子供のままじゃ……」
「だから誰かの手を借りようとしてたのね」
ネレスの言葉を聞き、グーニーは泣きながら返事をした。その時、兵士らしき人物の話声と足音が聞こえた。それを聞いたグーニーは急いで近くの小屋へ案内し、中へ入った。それからグーニーは話を続けた。
「二人の話を聞いて、いつか来てくれたらいいなって思ってた。こんなに早く来るとは思ってなかったけど」
「幸運と思えよ。それより、奴らの兵器工場はどこだ?」
ミツルギがこう聞くと、グーニーは二人を上の階へ案内した。そこの窓から映る景色には、一際大きい工場のような建物があった。
「前につぶした兵器工場よりも少し小さいな」
「ミツルギ、あの時はドレアンさんたちがいたのよ。今は二人だけ」
「そうだな。でも、負ける気がしない」
ミツルギの言葉を聞き、グーニーは二人が思っていた通りの人物であることを確信し、安堵の息を吐いた。
「二人が思っていた通りの人でよかった」
「俺たちは悪い奴じゃないよ。それより、夜まで時間を潰したい。ここを借りていいか?」
「もちろん」
グーニーの返事を聞いた後、二人はその場で座り、休み始めた。




