ドレアンの拳が語るのは
拳が相殺し、互いに力任せでこの状況を打破しようとしていた。互いに力を拳に込め、足に込め、歯を食いしばって押し勝とうとしたが、結果は引き分けに終わり、ぶつかり合いで発生した衝撃によって二人は後ろへ吹き飛んだ。
「ははははははははは! やるではないか!」
「こんな面白い戦い、久しぶりだ!」
二人は笑いながら立ち上がり、再び接近して殴り合いを始めた。だが、殴り合いの最中、モリトゥスはあることに気が付いた。
「一つ聞いてもよろしいか?」
「殴り合いの最中でよろしいなら」
短い会話の後、互いの拳が相手の頬に命中した。この状況下で、モリトゥスは気になったことを質問した。
「ではお言葉に甘えて。お主、どこかで見た記憶があるが、前は何をやっていた?」
「前?」
「たかが反乱分子がこんなに強いわけがない。きっとどこかで物凄い修行をして、力を付けた有名人だろ」
「有名? まぁ確かにな」
「答えろ。お主は何者だ?」
この言葉の後、二人は後ろに下がった。ドレアンは態勢を立て直し、にやりと笑ってこう言った。
「俺は飛行団、銀色の竜のボス……ドレアン・ミッチだ!」
「本当にそうか? それ以前にお主の顔は見たことがある。拳で分かる、ドレアン・ミッチは仮の名であると!」
モリトゥスがこう言うと、ドレアンは大声で笑った後、モリトゥスに言葉を返した。
「なら俺を倒して聞いてみればいいではないか?」
「そうだな。それが手っ取り早い!」
話を終え、二人は再び殴り合いを始めた。再会された殴り合いは先程よりも更に激しさを増したせいか、周囲に舞う風も強くなった。
「うおわあああああああああああああああああ!」
「何だか、ヒートアップしてねーか?」
「これ以上殴り合いが強くなったら、屋根の瓦が全部吹き飛ぶぞ!」
「屋根だけじゃすまない、この屋敷がぶっ壊れてしまう!」
「まずい、ここにいたら巻き込まれる! 逃げろ!」
ヒートアップした戦いに巻き込まれると察した部下たちは、慌ててベランダへ降りて部屋内へ避難した。
そんな中でも二人の殴り合いは続いていた。激しい殴り合いのせいで二人の体には痣や骨が折れたような傷ができていたが、それでも戦いを止めることはしなかった。というよりは、怪我の手当てよりも戦いの方を優先していた。
「いい! こんな戦い本当に久しぶりだ!」
「こういう戦いなら、俺も大好きだ!」
二人は笑いながら殴り合いをしていた。力を込めて殴り、カウンターで反撃し、たまに体をそらして相手の攻撃をかわして殴る。そんな単純な動きの繰り返しを何度行っていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「であああああああああああああああああああ!」
ドレアンとモリトゥスは力を込め、渾身の一撃を相手にぶつけようとしていた。そして、互いの渾身の一撃はぶつかり合う音が響いた。
「フ……フフフフフ……」
「ハ……ハハハハハ……」
二人はにやりと笑っていたが、モリトゥスの体が崩れるように倒れた。先ほどの攻撃で、ドレアンの渾身の一撃を腹に喰らったのだ。逆に、モリトゥスが放とうとした渾身の一撃は、ドレアンに届くことはなかった。
「私の……負けか……話を聞くことはできなかったが……いい勝負だった」
「ああ……」
ドレアンは倒れたモリトゥスの横へ座り、大きく呼吸をしてからこう言った。
「この騒動が終わったら知り合いが管理する刑務所へ送る」
「ビガシャープ家に味方してるからか?」
「そうだ。ま、殺しはしないから安心しろ。釈放されたらまた喧嘩をしよう」
「ああ……約束だ」
モリトゥスはそう言って気を失った。
館内でゲインと戦っているミツルギとネレスは、素早いゲインの動きに惑わされていた。
「クッ、こいつ早い!」
「足場を凍らせて滑るように移動してるから、走るより早いんだ」
ネレスの言葉を聞き、ゲインは心の中で思った。ネレスの観察眼がかなり鋭いと。そして、この戦いで邪魔になると。
「しゃーねーな……女の子だから傷つけたくねーけど……」
ゲインは氷の刃を作り出し、ミツルギに向けて放った。ミツルギは飛んで来る氷の刃を闇で壊しながら防御していたが、その隙に後ろへ回ってミツルギの背後にいるネレスに襲い掛かった。
「しまった、後ろ!」
「なっ!」
ネレスは剣を構え、ミツルギは闇の弾丸を発してゲインを攻撃しようとした。だが、ゲインは二人の攻撃をかわし、右手に持つ剣でネレスを一閃した。
「あ……」
「ネレス……」
攻撃を受け、血を流しながら倒れるネレスを受け止め、ミツルギは魔力を開放して治療しようとした。だが、ゲインは氷の弾丸を発し、ネレスを撃ち抜いた。
「悪いねぇ、女の子には手を出したくないが……敵である以上始末しなきゃならないんでね」
「テメェ……」
傷ついて倒れたネレスを見て、ミツルギの体は震え始めた。それを見て、ゲインは茶化すようにミツルギにこう言った。
「何だ、連れがやられたから怒り心頭ってか? ま、どうでもいいや。お前もすぐにこの子が逝った場所へ送ってやるよ」
ゲインは剣を振り上げ、ミツルギを斬ろうとした。だが、突如ミツルギからとてつもなく強い魔力を感じた。そして、ミツルギの髪の色が黒から銀へ変わっていた。




