その闇は希望となるのか
ミツルギは広場へ向かい、黒い鎧を引き連れた男を見ていた。
「あいつがウレマーズって奴か。変な奴だな」
その言葉を聞いたウレマーズは、ミツルギの方を睨んだ。
「何だ坊主? 私の容姿に何か問題でも?」
「いえ特に」
ミツルギはそう答えた後、ネレスを探しにこの場から離れようとしたが、ウレマーズは黒い鎧に命令をしてミツルギを捕らえた。
「何するんだ変態野郎!」
「へ……へんた……」
ミツルギの声を聞き、村人の一部が小さな声で笑い始めた。それが気に食わなかったのか、ウレマーズは黒い鎧に向かってこう叫んだ。
「無礼共が! こいつらを皆殺しにしろ!」
「そうはさせません!」
突如、ネレスの声が聞こえた。それと同時に氷柱が黒い鎧に向かって発射された。この氷柱のせいで、一部の黒い鎧は倒れてしまった。
「チッ、あの小娘か!」
ウレマーズは遠くにいるネレスを睨み、黒い鎧に命令をした。
「あいつを殺せ! 私はこの坊主を始末する!」
ウレマーズの命令を聞き、黒い鎧は猛スピードでネレスの元へ向かった。ウレマーズはミツルギに近付き、右手に魔力を込めて刃を発した。
「光栄に思うがいい。このウレマーズが直々に貴様の首を斬り落としてやる!」
「テメーみたいな変態に首を斬られてたまるかよ!」
そう叫ぶと、ミツルギは右腕に力を込めた。その瞬間、ミツルギは右腕から熱いものを感じた。
「何だ……この感じは……」
さらに力を込めると、ミツルギの右腕が黒いオーラに包まれた。それを見た村人やウレマーズは、驚きのあまり止まってしまった。
「ま……まさか……この魔力は……」
「何が何だかわからねーが、お前をぶん殴る!」
ミツルギはウレマーズに接近し、黒いオーラに包まれた右腕で攻撃を放った。ミツルギの拳がウレマーズの頬にめり込み、そのまま遠くへ殴り飛ばした。勢いが強かったのか、遠くにある山の方までウレマーズは吹き飛んでしまった。
「ウレマーズさん!」
「に……逃げろ! 我々では手に負えない!」
上司のウレマーズがぶっ飛んだことを知った黒い鎧は、慌てて村から逃げて行った。村人たちは歓喜の声を上げながらミツルギに近付いた。
「何だよ、魔力を使えるじゃねーか!」
「しっかし、変な力だなー」
「見たことない力か。こりゃー奴らを倒すのが楽になりそうだ!」
と、村人たちは喜んで騒いでいるが、一人の老人が大きな声を上げた。それを聞き、村人たちは慌ててミツルギから離れた。
「ネレスに召喚された少年よ。名を何と申す?」
「名前? 俺はミツルギ」
「ミツルギ、ネレス。今すぐわしの家へ来い」
と言われ、ミツルギはネレスと共にその老人の元へ向かって行った。
ミツルギは老人の家の中へ入り、ネレスからこの老人が村長であることを告げられた。
「ミツルギよ、この世界のことをどれだけネレスから教えられた?」
「えーっと、ビガシャープ家っつー奴らが好き勝手やってるって」
「まぁそうじゃ。大体あっとる」
村長はそう言うと、咳ばらいをして二人にこう言った。
「ウレマーズを倒した以上、お主らはビガシャープ家の連中に目を付けられた可能性がある。先ほどの戦いで元々目を付けられていたが、闇属性の魔力を使う少年がいたとすれば、より一層この村への攻撃は激しくなるじゃろう」
「うし。俺がこの村を脅かす連中をぶっ倒してくる。闇属性の魔力っつー変な力もあるってことが分かったし、楽だろ」
「楽ではない! お主、魔力の使い方も知らんじゃろ。いいか? 今日からお主は魔力を扱う練習をしろ! ここはお主がいた世界ではないぞ」
村長はここまで言うと、二人に戻るように告げた。ネレスの家に到着した後、ミツルギは唸りながら何かを考えていた。
「まだ強い奴がいるのか」
「ウレマーズは黒い鎧の上司的存在。その上がもう一人いるの」
「ビガシャープ家ってのは結構面倒な組織だな」
「かなり規模が大きい組織なの。だから、この世界を支配できたの」
「世界を支配して何をするつもりだか。その連中のトップは自分が一番偉くない時が済まないってのか?」
「それは分からない。でも、そいつのせいで世界は苦しめられている……だからあなたを呼んだの。この世界を助けてほしいから」
ネレスの言葉を聞き、ミツルギはしばらく考えた後、頷いた。
「ああ。どんな奴らか知らねーが、悪い奴ってことには間違いない。俺が必ずぶっ飛ばしてやるよ」
ミツルギはそう言うと、闇のオーラを少し出した。それを見たネレスは慌ててミツルギに近付いた。
「あわわわわわわわわ! 魔力を抑えて!」
「どうしたらいいんだ? 助けてくれェェェェェェェ!」
あれから三日後、ネレスが住む村から少し離れた町。そこの中央にはジザヴァーク家の紋章が掲げられた建物がそびえ立っていた。その中で、一人の男がワインを飲んでいた。しばらくし、部下を読んでこう聞いた。
「ウレマーズはどうした? もう三日も姿を見せてないぞ」
「それが……ヒャビロン山の山頂で気を失っている所をパトロール隊が見つけました」
「何であんなところで気絶しているんだ?」
「どうやら、あの村に闇の魔力を扱う少年がいたらしいです。その少年の手によって、ぶっ飛ばされたらしいです」
「闇の魔力か……面白い」
男はワイングラスをテーブルに置き、部下にこう言った。
「今すぐあの村へ攻め込む。ウレマーズを倒した少年を一目見ておきたい」




