トヨーシ町での蛮行
ミツルギとネレスを乗せた飛行船は、トヨーシの町から少し離れた森の中で着地した。ビガシャープ家討伐を狙う輩が近くに来たことを知らされないために、森の中に着地したのだ。
「外は俺とミツルギとネレスで行く。お前らは飛行船の整備と守りをしててくれ」
「はい」
ドレアンはカリューたちにこう伝えると、ミツルギとネレスを連れて町へ向かった。向かう途中、ミツルギはドレアンにトヨーシの町のことを尋ねた。
「あの、トヨーシの町ってどんな所なんですか?」
「確か、車関係の工場がたくさんある町だな。車以外にも船や飛行船も作ってたが、ビガシャープ家に仕えるモリトゥスって奴が支配してから、戦車や戦闘機を作るようになっちまったんだ」
「戦争を始めるんですか?」
「ビガシャープ家を守るための武器を作ってんだろ。強大な攻撃力があれば、奴らは身を守れると思ってやがる」
話をしながら進んでいくと、ミツルギたちは町の中に入って行った。
「話はここまでだ。こっから変なことを言うと目を付けられるからな」
「はい」
ミツルギたちは話を終え、黙って町の中を歩き始めた。町の中にある工場の煙突からは、黒い煙がモクモクと発しており、道端には疲れ果てているのか、工場で働いている人たちがその場に倒れていた。
「酷い……」
「休みなしで働かされてるんだろ……」
ネレスとドレアンがこう言った直後、ビガシャープ家の紋章を付けた下っ端が現れた。
「おいコラ、さっさと起きろ!」
「休みなしで働けとモリトゥスさんから言われなかったのか?」
下っ端はそう言いながら、手にした鞭を振り回して倒れている作業員を叩き始めた。ミツルギは魔力を少し開放して下っ端を倒そうとしたが、ドレアンが止めた。
「変な騒動は起こしたくない。ここで目を付けられたら大変だ」
「だけど、ほっておくのか?」
「それしかない。いいか、奴らに怒りをぶつけるのは戦いの時だ。思う存分暴れろ」
「……はい」
小声で会話をかわし、ミツルギたちはその場から離れて行った。
それから少しして、ミツルギたちは町の歓楽街にいた。道に立っている淫らな格好をした女性たちがミツルギとドレアンを見つけ、いやらしい表情で近付いてきた。
「ねぇ、遊んでかない旅の人?」
「た~っぷりサービスするわよ~」
「いろんなことをしてあげる」
色っぽい女性を見て、ドレアンの鼻の下は伸び始めた。
「でへへへへのへ~、それじゃあおじちゃん行っちゃおうかな~」
でれでれしながらドレアンは女性たちに近付こうとしたのだが、呆れたネレスがドレアンの耳を引っ張った。
「さっき言った言葉忘れたんですか? 変な騒動は起こしたくないとか言ってましたけど?」
「悪い。俺のスケベ虫が騒いじゃった。ゴメンネレディーたち。おじちゃんちょーっとこの子たちとお散歩してる途中だから」
と言って、ドレアンは二人を担いで猛スピードで走り始めた。
町の外れに移動し、ドレアンは乱れた呼吸を整えていた。
「ミツルギ、お前あんな綺麗なねーちゃんたちに言い寄られて何もしなかったなー」
「ああいう女性は好きじゃない。好きでもない人とあれこれする人はただの快楽か金を求めている人だ。俺は本当に惚れた人と……」
ミツルギはここまで言い、ドレアンの変な表情を見て口を閉じた。
「本当に惚れた人と……何?」
「うるせー、黙れ!」
と言って、ミツルギはそっぽを向いた。その時、目の前にセイントガーディアンの服を着た集団を見つけて目をそらした。
「どうしたの?」
「セイントガーディアンがいる。何で奴らがここに……」
「あいつらはどこにでもいるからのー。まぁ、二人はセイントガーディアンとドンパチやったからあまり会いたくないか」
「はい」
二人の返事を聞き、ドレアンはしばらく考えた後でこう言った。
「とりあえず一旦戻るか。町の様子も大体把握できたし。戻って休んで、どうするか話をしてそれから暴れるぞ」
その後、ミツルギたちは町外れの森の中へ戻って行った。遠く離れたセイントガーディアンは、ミツルギたちの不審な動きを見て話をしていた。
「旅人か?」
「マントを羽織ってるし、近くの山から来たんじゃねーの?」
「あそこ、たまに砂煙が発生するんだよな。よく山を越えてこれるよ」
ミツルギたちの正体に気が付かず、セイントガーディアンは話していた。だが、その中の一人はずっと口を閉じたまま去って行くミツルギたちを睨んでいた。
「ん? どうしたスティーブ。そんな怖い顔をして」
「いや。何でもありません。気のせいだったみたいです」
スティーブは仲間にそう答え、再び歩き始めた。
スティーブはミツルギと戦って仲間に助けられた後、治療を受けて何とか現場に復帰することができた。だが、あれからスティーブは今度こそミツルギを倒すと心に決め、厳しい鍛錬を続けてきたのだ。いつかミツルギを倒すために、その日の為に。
セイントガーディアンはパトロールを終え、モリトゥスの館に戻ってきた。
「パトロール隊ただいま戻りました。異常ありません」
「そうか。まぁよい」
モリトゥスはこう答えると、筋トレを始めた。その後、セイントガーディアンは各々の部屋に戻り、自由時間を過ごした。大体は休んだり本を読んだり、スケベな奴は女を呼んだりしているのだが、スティーブだけは鍛錬を続けた。
今度こそ、絶対に奴を倒す!
打倒ミツルギを心の中で決め、スティーブは無我夢中で鍛錬を行っていた。




