支配者の焦り
モレーノの街を支配しているドベンロは焦っていた。親密な関係だったスネーク剣士団が壊滅し、頼りにしているゲーズの兵器工場も銀色の竜の手によって壊滅してしまった。
「こんなことになるなんて……」
ドベンロが頭を抱えて呟いた時、扉からノック音が聞こえた。その音を聞き、ドベンロは気を取り直してこう言った。
「何用かね?」
「失礼します。セイントガーディアンのニオウダンです。部下であるシボレ、ソボロ、そして他所から呼ばれたスティーブと共に参りました」
「通れ」
扉が開き、外にいたニオウダンたちが部屋に入った。
「今日からドベンロ様の護衛を開始します。二十四時間見守りを続けますのでご安心を」
「プライベートなことには突っ込まないで欲しい。それだけだ」
ドベンロの言葉を聞き、スティーブが前に出てこう言った。
「お言葉ですが、輩はどのタイミングであなたを襲うか分かりません。プライベートと関係になしにお守りするのでそのつもりでお願いします」
スティーブの言葉を聞き、ドベンロは小さな音で舌打ちをし、心の中で生意気な坊主が徒呟いた。
それからニオウダンたちの厳重な護衛と共に、ドベンロは外に出た。彼らの姿を見た街の人たちは、目を合わさないように目を背け、その場から離れて行った。
「皆逃げて行きますねぇ」
「それだけこの人が怖いんだろ」
と、シボレとソボロは話をしていた。その言葉を聞き、スティーブが魔力を開放して二人を睨んだ。
「無駄話は止めてもらいませんか? 耳障りです」
「ああ」
「分かった」
スティーブの言葉を聞き、二人はため息を吐いて口を閉じた。
ミツルギとネレスは宿からドベンロの様子を見ていた。
「あの護衛の中にいるのがこの街を支配しているドベンロって奴か」
「重い税金や刑罰で街の人を苦しめてるって聞いたよ」
「全く、バカな奴が権力を持つとろくなことにならないな」
ミツルギはため息を吐き、ネレスの横に移動して話をした。
「どうやって奴を倒そうか。ネレスのブリッツスパーダに頼りたいところだけど……」
「セイントガーディアンがいるから派手な行動はできないね。あの人だけ狙うって言っても、そのあとで戦いになりそうだし」
「それを覚悟で戦うしかないよな。ドレアンさんが来てくれればいいんだけど……」
「まだ身を隠してるみたいだね」
「物事はそううまく行かねーか。こうなりゃ、二人でどうやって戦うか作戦を作らないとな」
「うん」
その後、二人は時間が過ぎることを忘れて、ドベンロ討伐のことを語り合った。ドベンロを討伐するためには、護衛にいるセイントガーディアンを倒さなければならない。どれも今まで戦った敵よりも強いだろう。しかし、ミツルギは思ったことをネレスに伝えた。不意を突けば簡単に倒せるのではないかと。闇を上手く利用し、ネレスのブリッツスパーダを使えば二人は倒せる。そう話したのだ。その考えに乗ったネレスは、すぐに支度を始めた。
その日の夜、二人はドベンロの館の前にいた。前にいる門番は、大きな欠伸をしたり近くを歩く美人に目移りしている様子を見て、守りは薄いと思った。二人は門番の隙を見て、館の裏に回った。すると、ネレスが前を走るミツルギを止めた。
「どうかしたか?」
「監視カメラがある」
ネレスの言ってた方を見ると、天井の目立たない部分に監視カメラが付いていた。それを見たミツルギはため息を吐いて呟いた。
「魔法とかある世界でも、監視カメラって存在するのね」
「壊すからちょっと待って」
ネレスはそう言うと、小さな雷の矢を発し、カメラを破壊した。その時、壁側から声が聞こえた。
「なんか変な音がしたぞ」
「カメラが落ちたんじゃねーか? あそこのカメラ、ずいぶん前から落ちそうだったし」
「この館の守りもずぼらだよなー。監視カメラを取り付けても、下手な設置でぶっ壊したら元も子もねーよ」
護衛の話を聞き、二人は自分たちの存在がばれてないことを知ってホッとした。しばらくし、二人は館の裏で目立たない場所へ移動した。そこには無数に置かれている粗大ゴミがあった。
「あいつらバカだよな、俺ら以外でもこれを利用して中に入る奴がいるかもしれないのに」
「力で征服してるから、頭の方は弱いんだよ、きっと」
「はは。そうだな」
二人は話をしながら館内へ侵入し、近くの草むらに身を隠した。
「ばれずに中に入りたいな」
ミツルギがそう呟くと、ネレスはある物を見つけた。
「勝手口がある」
「魔力を感じるか?」
「ううん。何も感じない」
「一か八か、そこから行くか」
「うん」
その後、ミツルギは小さな闇を使って勝手口の扉を開け、ドアノブを闇で掴んで回した扉の先は長い通路があっただけで、人影は存在しなかった。
「誰もいないな」
「外の見張りはこっちに来ない。今ならいける」
「よし、行くぞネレス」
ミツルギはネレスの手を掴み、急いで館の中へ入って行った。そしてすぐに近くの部屋に入り、何かないか見回り始めた。
「身を隠す物がないかなー」
呟きながら歩いていると、外から声が聞こえた。
「勝手口が開いてるぞ」
「誰が開けたんだか、全く」
護衛が近くにいると察し、ミツルギとネレスはまずい状況になったと焦り始めた。




