ミツルギという少年
日本のとある繁華街。チャラそうな見た目の男たちが大声で楽しそうに話していた。
「お前マジかよ! あんなことしてよく平気でいられるな」
「あんなこと? 俺からしたら女をだますなんてこと、普通だと思うんだけどよー」
「ギャハハハハハハハ! お前頭いかれてるよ。サイコー!」
そう言って男たちは楽しそうにハイタッチをかわした。そんな中、一人の少年が男たちの前に現れた。
「おい。ヤマミチって奴は誰だ?」
少年の言葉を聞き、ヤマミチと呼ばれた男は不機嫌な顔で少年に近付いた。
「何だクソガキ? 俺様に何か用か?」
「ああ」
少年は返事をすると、ヤマミチに向かって強烈な蹴りを食らわせた。急所に蹴りを喰らったヤマミチは急所を手で押さえながら、ゆっくりと倒れて行った。
「ヤマっちゃん!」
「このガキ、よくもやりやがったな!」
仲間の男が次々と少年に襲い掛かったが、少年は男が放った拳を左手で受け止め、そのままへし折った。次の襲ってきた男の攻撃は高いジャンプで攻撃をかわし、背後に回ってうなじ部分に蹴りを放って攻撃をした。残った仲間の一人は、少年を見て思い出したかのように呟いた。
「聞いたことがある……この町に揉め事を解決するとんでもなく強いガキがいるって……まさか……」
「俺はガキじゃねーよ。ミツルギって言うんだ」
ミツルギはその男に近付き、こう言った。男は謝りながら猛スピードで去って行った。その後、ミツルギはヤマミチのポケットを探り、長財布を手に入れた。
「お……俺の財布……俺の金……」
「何が俺の金だよ。人をだまして奪った金じゃねーか」
ミツルギはそう言った後、去って行った。
その後、ミツルギはダンスバーへ向かった。店内に入り、ミツルギは派手な服を着た女性の前に移動した。
「仕事終わりました。この中にあなたのお金があると思います」
「ありがとうミツルギ君。お礼しちゃうわ」
「いえ、大丈夫です。ああいう悪い奴を許せないだけなんで。では」
そう言ってミツルギは報酬金を貰って去って行った。仕事が終わった後、ミツルギは隠れ家としている空き家の屋根の上に移動した。簡易ベッドに座り、大きな欠伸をして突きを眺めていた。
ミツルギは孤児であり、この繁華街でいろんな人にいろんなことを教わりながら生きてきた。変なことも教わったりしたが、心正しい人たちのおかげで、ミツルギは正義感の強い少年に育つことが出来た。生まれながらにして超人的な運動神経を利用し、彼は揉め事を解決する仕事をしていた。
「さて……寝るかな……」
報酬としてもらった三枚の一万円札をいつも持ち歩いている小型金庫に入れようとした。だがその時、どこからかナイフが飛んで来て一万円札を貫いた。
「誰だ?」
「俺だよ。ミツルギちゃん」
下から聞こえたのはヤマミチの声だった。ミツルギは呆れたため息を吐きながら下を確認すると、そこには多数の男を連れたヤマミチがいた。
「倍返しに来たのか? 性根が腐った男だな」
「黙れ。俺の財布奪いやがって」
「何が俺の財布だよ。お前の噂は聞いてるぞ。詐欺師」
ミツルギがこう言った直後、ヤマミチは連れてきた男たちに攻撃を命令した。ミツルギは屋上へ続く梯子を蹴り倒した後、屋根から屋根を飛び移るように移動を始めた。
「あいつ、屋根から屋根へ飛んで移動してるぞ」
「忍者かよ」
「話してる場合じゃねーぞ、追いかけてぶっ殺せ!」
男たちは会話をしながら逃げるミツルギを追いかけた。数分後、ミツルギは呼吸を整えながら周囲を見渡した。
「やっべー……道がねぇ……」
ミツルギの行く手を阻むように、大きな壁が現れたのだ。仕方ないと思いつつ、ミツルギは戻ろうとした。しかし。
「見つけたぜ、ミツルギちゃん!」
上からヤマミチの声が聞こえた。なんと、先回りしたヤマミチが壁から現れ、ミツルギの前に立ちふさがった。それからしばらくし、連れてきた男たちも現れた。
「へっ、ご苦労さん」
「減らず口もそこまでだ。金がないなら、お前の体で支払ってもらおう」
「臓器でも売るつもりか?」
「そのつもりだ!」
武器を持った男たちを見て、ミツルギはやるしかないと思った。だがその時だった。突如ミツルギの足元が光出したのだ。
「な……なんじゃこりゃ!」
「ミツルギの奴……こんなこともできるのか?」
「俺がやったんじゃねー!」
ミツルギは慌てて逃げようとしたが、足元の光はから大きな門が現れた。
「な……何なんだよこれ」
異様な光景を目の当たりにし、ミツルギやヤマミチ、他の男たちは驚きながら立ち尽くすことしかできなかった。しばらくすると、門の扉が開き、中から光のオーラがミツルギを取り囲んだ。
「おいなんだよ? 何するつもりだ!」
ミツルギは暴れて光のオーラから離れようとしたが、光のオーラはミツルギを離さずそのまま門の中へ連れて行った。その後、門の扉は閉まり、再び地面に潜ってしまった。異様な光景を見たヤマミチは、自分の頬をつねったり叩いたりした後、小さく呟いた。
「滅茶苦茶痛い。夢じゃないやこれ」