プロローグ
「みんな~~~!!盛り上がってるーーー!?」
煌びやかな衣装を纏った少女は観客に向かって大きく手を振る。
大きな瞳と健康的でありながらスラっと伸びた手足。
ツーサイドアップに結った栗色の髪の毛は彼女の明るさを象徴するように元気よく揺れていた。
「「「うおおおおおおおお!リリナちゃあああああああん!!!」」」
「「リリナちゃんかわいいいいいい!!」」
ライブも終盤。
会場いっぱいに集まった観客が大きな歓声を上げる。
女性ファンも多く詰めかけた会場の中でも屈強な見た目の男性ファンが多い。
「次で最後の曲だけど、最後までついてきてよねーーーーーー!」
「「「ワァァァァァァァァァァァァァァ!!!」」」
彼女の呼びかけに、観客一人一人の思いを乗せた声は半ば怒号となり、言葉を成していない。
しかし、その熱気は会場全体に、そしてステージにたった一人で立つ少女に確実に伝播していった。
「やっぱり最後はこの曲ね」
暗転したステージ上で彼女はそう呟きながら不敵に笑う。
そして訪れる穏やかな前奏に心を浸す。
彼女がかつて最も多く聴き、歌い、踊った曲。
「彼方のステラ」
大人びた曲調とは裏腹に歌詞は等身大の青春を紡ぐ―――。
ステージで一人パフォーマンスをしてきた彼女は疲れているはずなのにライブが進むごとに、動きはキレを増し、声は伸びていった。
光を反射した汗さえも彼女に輝きを加え、その一挙手一投足にファンが揺れる。
ステージに一人立つ彼女は楽器であると同時に指揮者でもあった。
「「「リリナちゃんサイコオオオオオオオオオオオ!!!!!!」」」
やがて曲が終わると今日一番の歓声が降り注いだ。
「みんなありがとーーー!明日の戦いも頑張ってねーーー!!!」
彼女は観客一人ひとりに届けとばかりに、大きく手を振りながらステージを降りていった。
そのまま控室に入ると汗を拭い、衣装を着替えた。
ライブの熱狂、気持ち良い疲労感。
そんな久しぶりの感覚に打ち震えながら、彼女は一人笑った。
<私はこの世界でトップアイドルになる!!>
初の連載作品です。
展開遅めかも知れませんが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。