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第1話 小説の中で逢った、ような……

「彼の意識が戻るとそこは、見たことのない中世の街並みだった。

 エルフなど、彼のもといた世界にはない人種が街をうろついているし、小型のドラゴンみたいな生き物が、馬車(ドラゴン車?)をガラガラと引いていた。

 魔法のようなものも見受けられる。

 そう、彼が降り立ったのは異世界。

 魔王から異世界を救うため、彼は召喚された。

 そして彼の名は幻龍院蒼吾(げんりゅういんそうご)、29歳。

 元の世界では、IT企業の会社員で天才的プログラマーであった。

 その才能を生かし、女神から授かった聖剣デウスエクスマキナを握った彼は、世界の理をまるでプログラムのように操るのだ。」



 この文章から、俺のWeb小説は始まる。

 タイトルは「アラサー会社員の俺、転生して最強魔王軍とハーレム生活 〜即死魔法で敵全滅!?〜」。

 絶妙に読みづらい文が特徴的だ。

 内容は、転生した主人公が魔王を一瞬でぶっ飛ばし、なぜか魔王軍の女性陣からモテモテになり、ウハウハライフを過ごすーーという、感情移入もクソもない話だ。

 

 どうして俺がこんなクソ小説をネットに垂れ流しているかというと、「小説を適当に書いてりゃ、出版社から声がかかって、印税で一生暮らしていける」と友達の葛飾くんが言っていたからだ。

 葛飾くんが言うならそうに違いない。

 決して裕福ではない大学生・一人暮らしの俺にとって、お金は超絶大事。

 最近だってセブンでバイトしている。

 このまま人気が出なければ、小説なんかやめてバイト増やすか……?とも考えている。

 なにはともあれ、「アラサー会社員の俺、転生して最強魔王軍とハーレム生活 〜即死魔法で敵全滅!?〜」は人気の出ないまま、たった今完結した。

 さて。

 


 ……アイス食べよ。

 今は7月。アイスは常にストックしておかなければ死んでしまう。

 しかし俺はその直後、生命の危機に直面することとなる。


 冷凍庫を覗いてみると、アイスがない。

 おかしい。

 確かにあったはず。

 暑すぎて頭がおかしくなったのか?

 

 しょうがない。

 アイスを買いに行くのも面倒だし暑いので、俺はコーラを飲むことにした。

 そして冷蔵庫の扉をあけ、俺の頭がおかしくなってしまったことを確信した。

 今度は、冷蔵庫の中がない。

 違うんだ、中に入っていた食材が消えたわけじゃない。

 冷蔵庫の中(・・・・・)がないのだ。

 扉を開けた先には、水とか、コーラとか、いつのやつかわからないジャムとかはなくて、ブラックホールのような、まさに異世界にでも繋がっているかのような、広い暗闇の空間があった。


 な、ななな、なんじゃこりゃあああああ!

 思わず古臭いリアクションをとってしまった。

 一体どうなっているんだ?

 落ち着こう。

 冷静な俺は、一旦冷蔵庫をしめた。

 そしてまた開けた。

 そこには依然として、暗闇。

 こういうのは、一度閉めたら元に戻るものなんじゃないのか。

 ゴーストバ●ターズでもそうだったし。


 こういうのは…………どこに相談すればいいんだ?

 電化製品メーカーか?

 はたまた精神科医?

 それとも、葛飾くんか?


 よし、葛飾くんに相談しよう。

 葛飾くんはスーパーハカーだしな。

 

 そうして俺が振り返った先に、アイツはいた。

 いや、アイツって、葛飾くんじゃないよ?

 振り向いた先にいたのは、肩にかかる白髪の綺麗な、ファンタジーケモミミ美少女だった。

 もう一度言う。白髪ファンタジーケモミミ美少女がいた。


 それと同時に、俺の生命線であるアイスを食いやがった犯人も判明した。

 ……要するに、俺は。


 部屋で俺のアイスを食ってる、白髪ファンタジーケモミミ美少女に遭遇した。

 そんでもって、そいつは言った。


「ひょっと、助けてもらへまへんか?」


「わかったから、食べ終わってから話せ」

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