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幼馴染が引きこもり美少女なので、放課後は彼女の部屋で過ごしている(が、恋人ではない!)  作者: 永菜葉一
3章「伝説と告白と修学旅行」

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第59話 ツッコみ不在のとんでもない世界③


 引き続き、俺と唯花(ゆいか)伊織(いおり)の部屋の様子を見守っている。

 お隣は現在、危機的状況だ。


 姉と同じ遺伝子を持つゆえに、伊織は頑張り過ぎて空回ってしまった。


「『このラノベ、えっちな展開が多いけど、(あおい)ちゃんはどのシーンが好き?』」


 そう言われ、当の葵ちゃんは思いきっり戸惑っている。


「『え、ええ……っ!?』」


 そのリアクションで伊織も失言に気づいたらしい。

 大慌ての声が聞こえてきた。


「『あっ! ご、ごめんっ。えとえと……っ』」


 見事にしどろもどろだ。

 俺と唯花は同時に頭を抱えた。


「(何やってんだ、伊織……っ。年頃の女性に性的な話題を振るなんて、そんなの肉体関係のある恋人同士もしくは婚約済みのカップルにしか許されないことなんだぞ! 世間一般的に!)」


「(伊織のばかばか……っ。女の子にえっちなことを聞くなんて、そんなのはじめてを捧げちゃった相手かつ未来を約束した旦那様以外には答えないんだからね! 世間一般的に!)」


 俺たちはぐぬぬーっと悶絶。

 すると悶えた拍子に唯花の胸元がチラリと視界に入ってしまった。

 途端、視線に反応する唯花さん。


「あ、またおっぱい見た。カウント4」

「うわ、また増えてしまった……」

「しかも何やら視線に熱を感じたよ?」

「熱って。いや……今日はブラジャーしてんだなと思って」


「なる。うん、まあね。奏太の好きな黒じゃないけど」

「別に黒が好きと言った覚えはないぞ?」

「え、そうだっけ?」


 唯花はパジャマの胸元をくいっと引っ張り、自分のブラジャーを覗き込む。

 そしてチラッとこっちを上目遣い。


「今日、ピンクだけど……好き?」

「あー……もっかいちゃんと見ないと分からん。かも?」

「だめー、見せたげないよーだ。なにどさくさまぎれに言ってるの、奏太のえっち」

「くっ、ダメだったか」


 無念に思いつつ、頭をかいた。

 ついでにちょっと明後日の方を向きながら言う。良い機会なので。


「えーと、まあ……唯花にピンクってのは似合うと思うぞ。可愛さとか大人っぽさが同居してて……たぶん一番似合う色だと思う。と、ずっと思ってた」


 唯花の表情をチラリと伺う。

 驚いたように目をぱちくりしていた。


「まさかのマジレスに唯花ちゃんびっくり。奏太が下着にそこまで熱い思いを抱いているとは」

「ばっ、下着のことじゃなくて! 全般っ、服とか小物の色とかの全般のことだって!」


「あははっ、ごめんごめん、分かってる。奏太の直球ストレートが心にズキューンって来ちゃったから、ちょっと照れ隠しっ。もう……奏太ってば、いつも不意打ちで剛速球投げてくるんだもん。受け止めるこっちは困っちゃうよ」


 唯花はぱたぱたと自分の頬を仰ぐ。

 熱でもあるみたいに、ちょっと赤い。

 

「でも嬉しいな。全般ってことは……ブラジャーも入ってるんだよね?」

「む。ま、まあ、全般って言っちゃったら入ってないことにはならないわな」

「だよね……」


 唯花は少し押し黙った。

 そしてこちらを伺いながらひょいと自分の胸元を引っ張る。


「……やっぱり見てみる?」

「な、なんだ突然」


 開いた胸元から素肌の肩が覗き、ピンク色のブラ紐が見えた。

 その下にはさらなる桃源郷があるのだろう。


「だってあたしに似合う色だって言ってくれたから……」


 唯花は秘めやかな表情で。

 ナイショ話のように囁く。



「ピンク、好きになってほしいもん」



 理性がぐらりと揺れる音が聞こえた。

 しかし逆にそれが俺を現実に引き戻す。

 頭のなかで理性を擬人化し、頑張る理性さんの尻に鞭を打って、自我を保つ。


「い、いかんじゃろ」

「なんで?」

「幼馴染宣言したばっかりだ。反省から学ぶ男、理性の化身、その名は三上奏太である」


「もうちょっと面白いくらいに説得力がないけれども?」

「くっ、自覚はしている……っ」

「本当は見たいくせに?」

「それも自覚はしている……っ」


 血の滲む思いで俺は唇を噛みしめる。

 地球のみんな、オラに理性を分けてくれ!

 ……などという現実逃避も通用しない。


 なぜなら反抗期宣言からの膝枕で主導権を握られてしまっている。

 唯花は胸元から手を離し、今度は俺の手を握ってきた。


「じゃあねー、ご褒美ってことにしよう」

「ご褒美?」

「そ。あたし、ちゃんと小説書いてるから。そのご褒美」


 えっと、と唯花は少し言い淀んだ。

 何やらさっきにも増して顔が赤い。


「ちょっと変な言い回しになっちゃうけど……」


 照れるようにはにかみ、見つめてくる。

 俺の手を両手で健気ににぎにぎしながら。



「頑張ったご褒美に……あ、あたしのピンクのブラジャー見て下さい」



 ……とかどうでしょう? と恥ずかしそうな小声も追加された。

 ついでに黒髪がさらりと揺れ、シャンプーの香りが俺の鼻をくすぐる。ああもう!


「本っ当に可愛いな! こんちくしょう!」


 心の声で留めるつもりだったのに、普通に口から迸ってしまった。

 本当に唯花は可愛い、マジで可愛い。あとそれもはやお前のご褒美じゃなくて、俺のご褒美だからな……っ。


「だが断る! 見ない!」

「えー、なんでよー」

「幼馴染だからに決まってんだろ」

「幼馴染だって仲良かったら下着の見せ合いっこくらいするでしょー?」


「世間一般的にはせんじゃろが」

「世の中には例外というものもあるのです」

「それは……そうかもしれんが、とにかく今は見ない」

「本当は見たくて見たくて仕方ないくせにぃ。いいから見ちゃえよー、うりうりー」


 手を握ったまま、おでこで俺の鎖骨辺りをぐりぐりしてくる。


「うりうりー」

「ぬう……っ」

「うりうりー」

「ええい、鬱陶しいっ。そういう聞き分けのない奴にはこうだ!」


 空いてる方の手で髪をわしゃわしゃーっとしてやった。

 途端、「きゃー」と唯花は逃げようとする。でも手を握り合ってるので逃げられない。


「ほれほれー」

「やー、もー、やめてよーっ。髪ぐしゃぐしゃになっちゃうっ。奏太のいじわるー。やーめーてーよー」

「やーめーなーいーよー」

「もう~っ」


 ぽかぽかと叩いてくる。だが片手だし、本気じゃないし、ノーダメージだ。

 じゃれ合うように、わしゃわしゃとぽかぽかの戦いが続く。


 と、そんなことをしつつ、俺はふと思った。

 何か他に緊急な事柄があったような気がするんだが……あれ? なんだっけ?


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