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幼馴染が引きこもり美少女なので、放課後は彼女の部屋で過ごしている(が、恋人ではない!)  作者: 永菜葉一
2章「一歩進んで、さらに甘々days」

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第39話 幼妻と耳かきと


 俺を膝の上に乗せ、唯花(ゆいか)が耳かきを手にして覗き込んでいる。


「どれどれ~? ……んん? 奏太(そうた)、耳きれいだよ?」

「まー、ちゃんといつも耳そうじしてるからな」

「え、じゃあ、あたしがやる意味ないじゃん」

「ふっ、浅慮。それはあまりに浅慮だぜ、唯花さんや」


 顔を横にしたまま、右目だけで唯花を見上げる。


「耳かきのフックの丸みがあるだろ? それで耳の外の方を押していってくれ」

「どゆこと?」

「いいから、いいから。良きに計らえ」

「まあ、良いけども」


 不思議そうな顔をしつつ、唯花は耳かきを近づけてくる。

 耳の外側の溝がちょうどいい強さで押される。



 グッ、グッ、グッ、グッ、グッ……。



「お~……」

「あれ? なんか奏太が気持ちよさそうな顔してる……」

「耳には色んなツボが集まってるからな。人に押してもらうだけで気持ちよかったりするんだよ」


「あー、なるほど。そういうの含めて耳そうじなわけね」

「理解してきたな、弟子よ」

「あいあいさー。師匠、あたしを導いて! 次はどうしたらいい?」

「良かろう! では……」


 俺の指示によって、唯花の耳かきが動く。

 耳の外側の溝を滑るようにかき始める。



 さわさわ、さわさわ、さわさわ……。



 お~……。

 耳の外側から付け根にかけて心地いい電流が流れた。これはいいぞ……。

 

「奏太の表情の変化がすごい。……なんか楽しくなってきたよ。次は次は?」

「じゃあ、耳かきは一旦置いといて……」


 耳たぶから耳の上にかけてを指で揉んでもらう。

 コリをほぐしていくようなイメージだ。



 ふにっ、ふにっ、ふにっ、ふにっ…………。



 あー、血流が良くなっていく。

 全身の力が抜けてリラックスしてきた。


「唯花、才能あるかも……」

「ほんと? 天才? あたし、天才?」

「天才、天才。だから続きをはよ……」

「はいはーい♪」


 ご機嫌で耳かきを構え、フックを耳に近づける。

 まずは穴の入り口から。柔らかい手つきでかき始める。



 コリコリ、コリコリ、コリコリ……。



 ぬは~。ちょっとむず痒いくらいの気持ちよさが耳から頭全体へ伝わってくる。

 最初は『ザクッ! ブシュー!』みたいな展開を恐れていたが、とんでもなかったぜ。

 これは普通に良い。なんかもう生きてて良かった。


「どう? きもちいーい?」

「すごく気持ちいい。クセになりそうだ……」

「えー、大げさ」

「いやマジで。日々の疲れが取れていくぞ……」

「ふ~ん?」


 さわ、と髪を撫でられた。

 俺を見下ろし、唯花が慈愛に満ちた笑みを浮かべる。


「奏太がしてほしいなら、毎日だってしてあげるよー?」

「む、毎日……毎日か」


 言いよどむと、途端に「ふふ」と唯花が噴き出した。

 俺は耳をかいてもらいながら眉を寄せる。


「な、なんだよ?」

「んーん、別にー。本当、奏太って甘え下手だなぁと思って」

「いや……甘え上手な男なんて嫌だろ?」

「えー、そんなことないよー?」


 くにくにっと俺の耳たぶを押し、唯花は言う。


「あたしが奏太にべったり甘えてる分、奏太にだってあたしに甘えてほしいよ? 恥ずかしがらずに心から甘えたり、甘えられたり……そういうことできる関係って素敵じゃない?」

「……むう」


 言いたいことは分かるが、男として好きな女に甘えるっていうのは、俺としてはどうもなぁ……。

 即答しないでいたら、耳かきが穴の奥の方に入ってきた。



 コリコリ、コリ、コリコリ……。



「ぬふう……!?」


 つい声が出てしまった。

 やばい、すごく気持ちのいいところを触られている。

 しかも器用に耳たぶまで一緒に揉んできた。



  コリコリ、コリ、ふにっふにっ、コリコリ、ふにっ……。



 ため息が出そうなほど心地良い。

 見事に心をやられてしまう。そこへ唯花が言葉を重ねてくる。


「ね? こうして甘えるのって素敵でしょ? 意地張らずに素敵って言いなよ?」

「くっ、この状態でその脅しはずるいぞ……っ」

「奏太が素直に甘えられるように気を遣ってあげてるんだよ。ほらほら、『安西先生、唯花ちゃんに甘えたいです』って言わないとやめちゃうぞ?」

「偉大な安西先生を巻き込むんじゃねえよ!? ひ、卑怯者め……っ!」

「あ、やめちゃっていいんだ? 耳奥コリコリするの、やめちゃっていいんだ?」

「お、おのれ……っ」


 なんという辱めだろうか。

 だが全身が腑抜けてしまっていて、抵抗する力が湧いてこない。


「ゆ……」

「ゆ?」


 俺は『くっ、いっそ殺せ』という気分で目を逸らす。


「唯花がやめたくないなら、やめなくったっていいよ」

「奏太がツンデレになったーっ!」


 大笑いする幼馴染さん。危ないから耳かき持ったまま笑わないで頂きたい。

 はぁ、なんだこれ。何やってんだ、俺たち。

 俺は膝の上でため息をつき、一方、唯花は悪徳領主か邪悪なゴブリンのようなドヤ顔で「むふー」とご満悦。


「良かろう、良かろう。では反対側だ。逆方向を向きなさい、お嬢さん」

「誰がお嬢さんだ……」


 甘えるってこういうことか? 絶対、なんか間違ってる気がするぞ……。

 とは思いつつ、心のマウントを取られてしまって、もう唯花に逆らえない。

 俺は寝返りを打って、素直に左耳を差し出した。


 ちくしょう、やっぱり耳かきには勝てなかったよ。


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