俺様勇者のお気に入り
当時の彼の印象は『なんだか変な人』でした―――――
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この春から華の大学生活……
"name"はそんな心躍るスタートからすでに挫けそうになっていた。
人があふれんばかりのキャンパスの校門をくぐると、次から次へとチラシを渡される。
クラブや同好会の勧誘のチラシだ。
小柄な"name"の手にはすぐにいっぱいのチラシがたまる。
そして、勧誘の列を通り過ぎると、今度は人の波にももまれ完全に身動きが取れなくなっていた。
「……た、助けて」
ぽつりと呟いた声も騒がしいキャンパスでは誰の耳にも届かない。
そんな状況が10分くらい続いた頃だろうか、突如"name"の目の前が開けた。
人の波から押し出されたのだ。
『やっと解放された……!』
押し出された反動で転んでしまったが、それよりも解放された安堵感に満たされていた。
その時。
すっと目の前に手が差し出された。
「大丈夫?」
「ありがとうございます」
差し出されてた手を握ると、一瞬目が眩むほどの光に包まれた気がした。
「怪我はない?」
「はい、大丈夫です」
手の持ち主が心配そうな声を出す。
"name"がもう一度感謝を伝えて、にこりと微笑んだ。
その顔を見たとき"name"は既視感を覚える。
「……?」
「あ、もしかして、俺のこと覚えてる?」
「な、なんとなく…?」
"name"は『見たことあった気がする』くらいの感覚だったが、相手がすごく喜んでいるので、『口が裂けても、とても正直な気持ちは言えないな……』と思った。
そこで、ようやく"name"は背景がさっきと違っていることに気付く。