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六、主人公の帰還

「あはははっ! なにそれ最高! 断然ゲームのシナリオより面白い!」


 お腹を抱え、盛大な笑いを披露しているのは私とローザが争うことになった元凶のステラ。数年前に女優になると言って町を出たきり、音沙汰のなかった私の親友だ。


「ステラ、笑いすぎ」


 いくら親友だからって、笑いすぎにも限度がある。


「だ、だってっ、最高なんだもん、二人とも!」


「だから笑いすぎだってば」


「そうですわ、ステラ……」


 冷ややかな私の対応に弱々しくも賛同してくれたのは、勝手に悪役令嬢として私を糾弾していたローザ。私たちは現在同じテーブルでお茶を嗜んでいる。

 ステラに意見していたローザは標的を私に変えて身を乗り出した。


「アニカったら、最初に言ってくれたら良かったのですわ。ステラの親友だったなんて、それなのにわたくしったらあんなに酷いことを言ってしまって……自分が許せませんわ!」


 ローザはきつく言い放つけど、悪役令嬢として私の前に立ちはだかっていた時よりは随分と柔らかい物言いになっている。


 ローザとの火花散らしたオープニングからはや数ヵ月。今日、主人公であるステラは学園に帰還した。

 帰還したといってもお客様として現れただけで、主人公に戻るつもりはないときっぱり宣言されている。とにかくステラの登場によって私とローザは和解したところだ。


「誰にも言わないって約束したの。ごめんね、ローザ」


「いいえ、アニカは悪くありませんわ! わたくしが勝手に誤解をして、貴女に辛く当たっていただけですから……」


 しゅんとして縮こまるローザの姿はオープニングイベントの時からは想像出来ない。私はもう気にしていないから本当にいいのに。ステラみたいに笑い話にしていいよ?


「でもローザったら、ちっとも定番の嫌がらせをしてこなかったじゃない」


「そ、そうでしたか?」


「たとえば入学式の日。取り巻きに結界魔法を使わせて、私を閉じ込めはしたけど、怪我をするような魔法じゃなかったよ」


 ステラはそんなことがあったのかと興味深そうに話を聞いている。


「あれは……授業に遅刻させてやろうかと……。ですがその結界は、ものの数秒でアニカに破壊されてしまいましたわね。わたくしはその時から、この女出来ると感じていたのですわ」


「それからは学力対決だの、魔法対決だの、人気投票だの、正々堂々とした対決ばかりもちかけてきたよね。むしろ私は心配になって、色々試しちゃった」


「え?」


 ローザはぱちぱちと瞳を瞬かせていた。


「嫌がらせといえば、階段から突き落としたり? 階段ではわざとローザの前を歩くようにしたかな」


「え、やけにわたくしの視界に入る人だとは思っていましたけれど……」


 けど、ローザが私を突き落とすようなことはなかった。わたくしの前を歩こうなんて生意気だとか、歩くのが遅いですわとか、後ろから罵るのは日常だったけど。


「あとは教科書を破いたり? わざとローザの前に教科書を忘れて」


「え、やけに忘れ物が多いうっかりさんだと思っていましたわ……」


「あとは水をかけたり? 池に突き落としたりもそれっぽいよね。わざと池の畔を歩いたこともあるけど、落ちたらどうするのってローザに怒られた時は傑作だったよ」


「あれ全部わざとでしたの!?」


 ローザはドンとテーブルを叩いて立ち上がる。私が頷けばステラの笑いが増した。


「だから笑いすぎだってばステラ」


「ごめんごめん! それにしても凄い人だったわね~」


 ステラ、露骨に自分のことから話を逸らしたわね。褒められるのは生徒代表として誇らしいからいいけど……


 このゲームには最終イベントとして感謝祭という催しがある。

 魔法は民のためにという理念から、国を上げての学園祭のようなイベントだ。広大な魔法学園の敷地を出店場所に、王都の飲食店は臨時に店を構え、学生たちも屋台を開く。日頃の勉学の成果を発表する一大行事とも言えるだろう。


 ちなみに主人公は最終イベントの夜、好感度が最も高いキャラクターから告白される。ゲームの主人公はね!

 でも代役の私は今日も大忙し。今日も今日とてローザに勝負を挑まれ、人気投票という形で対決をしていた。


 ローザとその取り巻きたちはこの世界では初となるたこ焼き屋を出店。ローザの実家は魔法具を開発しているから、たこ焼きに必要な道具の開発も容易だとか。


 私が率いた攻略対象の所属する生徒会チームはゲームシナリオ通りの演劇を披露。ゲーム同様に好評ではあったけど、それだけでたこ焼きに勝てるとは思えなかった。だってたこ焼きだもの。美味しいんだもの! もちろん私も美味しくいただいた。


 ステラはまるで数分前の出来事を思い出すように語る。


「熱気も凄かったし、最高だったわよ。貴女たちのステージ。ああいうの、ゲリラライブって言うのよね!」


「そのゲリラライブに乱入した人が何言ってるの」


 演劇で勝てないのなら切り札を。私は秘策としてゲリラライブを提案した。

 ここに見目麗しい男性たちが揃っています。ユニット組ませるよね? 歌わせるよね。踊らせるよね!?

 もちろん私は本気で勝ちに行った。私の評価はステラの評価。勝つなら全力でいかないとね。私は企画にピアノの演奏と、彼らのステージを無事成功に導いた。


 そして、ゲリラライブを終えた私たちの前に颯爽と現れたのがステラだった。


 攻略対象たちは突然現れたステラに困惑し、ローザは開いた口が塞がらないほど驚愕していた。私だって、すぐには信じられなかったもの。

 ステラは攻略対象たちを押しのけセンターに立つ。あれは誰だと首を傾げる観客たちに向けて手を振り、あろうことか勝手に歌い始めてしまった。

 お客様たちを混乱させるわけにもいかず、私たちはステラのライブを盛り上げるしかなくなった。

 ライブが終わるとステラは綺麗にお辞儀をして、ちゃっかり王都で行われる舞台公演の宣伝をしていった。


「ステラのおかげもあって私たちのグループは投票一位をとれそうだけど、いきなり来るから驚いたんだよ?」


 ライブが終わってから、私はメンバーたちの計らいもあって旧友との時間を許されてる。ローザにとっても事情説明は必要だと思ったから、強引に引っぱってきたところだ。

帰ってきた主人公!

私たちにとっては一瞬でしたが、ステラにとっての数ヵ月は何年ものように長かったことでしょう。ちなみに学園は通常一年あれば卒業できるカリキュラムで、もっと学びたい人は残ることも可能です。

閲覧ありがとうございました!

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