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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

おねえちゃん、あのね

作者: usa


作者初のホラー(?)作品です。

書いてる途中、これが一体なんのジャンルなのか

わからなくなりました……(;´∀`)




 おねえちゃん、あのね。


 これからちょっと、大事な話があるの。ずっといおうと思っていたんだけど、なかなかいえなくて……。あっ、別に意図して隠していたわけじゃないのよ? ただタイミングを逃しちゃったっていうだけ。そういうことってあると思うの。おねえちゃんだってそうでしょう?


 じゃあまず一つ目。

 小さい頃、おねえちゃんのブレスレットを隠したのは私です。そう、ピンクのキラキラした石で作った、おねえちゃんのお気に入りだったあのブレスレットよ。

 だって羨ましかったんだもの。パパが私にくれたのは、気持ちの悪いカエルの顔をしたヘアゴム一個。いくら妹だからって、あんなセンスのないものを寄越すなんてねえ。私だって、可愛いアクセサリーが欲しかったわ。おねえちゃんみたいにキラキラした石のアクセサリーをつけて、ツンとお澄まししてみたかったの。

 でも私がいくらねだってみたところで、パパは全然聞いてくれなかったわ。おまえにはまだ早いとか、似合わなすぎるっていわれたの。そりゃそうよね。私はおねえちゃんと違って、美人でもなければ大人びてもいなかったわ。私があんなのをつけたところで、子どもが精いっぱい背伸びをしているだけにしか見えないわよね。

 だからしょうがないから隠したのよ。おねえちゃんがキラキラしてるのを見たくなかったから。だっておねえちゃんは、あんなものつけてなくたって十分可愛くて素敵だったんだもの。アクセサリーなんていらないじゃない、ってね。


 それから次。

 小学校低学年の頃、おねえちゃんの体操着を持ち出したのは私です。

 たまたま自分の体操着を忘れちゃったのよ。おねえちゃんのだったら、名字が一緒だからバレないでしょ? だから、その時だけ借りるつもりだったのよ。だけどおねえちゃん、私が借りにいった時教室にいなかったもんだから。しょうがないから、体操着だけ取っていったわ。えっ? ちゃんと返したじゃない。おねえちゃんてばあの時、「誰かが盗んだんだ」って騒ぎ立てるもんだから、私はその場でちゃんと返したわよ。ええ、「これを使えばいいじゃない」って、私の体操着袋に入れてね。おかげで私は怒られずに新しいのを買ってもらえたわ。


 高学年の頃、おねえちゃんのクラスにおねえちゃんのうわさを流したのは私です。

 別にわざとじゃなかったんだけどね。たまたま私の友だちのおにいちゃんが、おねえちゃんと同じクラスだったのよ。だからその子経由で本当のことをいってあげただけ。「おねえちゃんはとっても美人で頭がよくて運動ができて、嫌味がないところが嫌味なの」ってね。それがどう変換されたのやら、おねえちゃんは学校で性格の悪い美人って思われてたわね。人のうわさは七十五日っていうけど、実際はどうだったのかしら? おねえちゃんは知らないか。卒業まで結局、学校にいけなかったものね。


 中学一年生の頃、おねえちゃんのフルートを壊したのは私です。

 私もおねえちゃんも吹奏楽部だったわね。最初にフルートをやりたいっていったのは私。おねえちゃんはどうでもよさそうな顔をしながら、ちゃっかりフルートを選択していたわ。一年後に私が入部した時には、パートリーダーにまでなっちゃって。私だって一所懸命練習したのに、おねえちゃんにはいつも敵わなかったわ。おねえちゃんの何倍も何十倍も何百倍も努力したのに。パパもママもおねえちゃんの才能ばかり褒めて、おねえちゃんには素晴らしいフルートを買ってくれたわね。新品の高級なフルート。私のは中古で、音もなんだかひょろひょろとしていたわ。

 本当はこっそり入れ替えてやろうと思ったんだけどね。だってフルートの方も、おねえちゃんよりも私の方が、大事にするししっかり練習するから、きっと持ち主としてふさわしいって思うでしょ? けどさすがに私の中古のフルートだと音がバレるって気づいたの。だからもったいなかったけど、涙をのんでおねえちゃんのフルートはサヨナラしたわ。さすがにおねえちゃんも、二つ目は中古品だったわね。


 中学二年生の頃、おねえちゃんのペンケースからシャープペンを取ったのは私です。

 あの頃、おねえちゃんは受験勉強でカリカリしてたわね。だから私、話しかけて集中を切らしちゃ悪いと思って、あえて声をかけなかったのよ。私も勉強しようとしたら、たまたまペンがなかったんだもの。仕方ないでしょう?

 でもおねえちゃん、受験にいくのにペンは一本だけじゃダメだって、おかげで気づいたでしょう? いく前にちゃんと確認しなくちゃ、ってこともね。あの時おねえちゃん、試験でなにも書けなかったんじゃないかな。ボールペンは禁止になってるし。でもまあ、私立の試験でよかったよね。そこは落ちちゃったけど、公立はちゃんと受かったでしょう? レベルはだいぶ下がっちゃったけどね。


 中学三年生の頃、おねえちゃんのバレンタインチョコを取り違えたのは私です。

 名門私立にいくはずが、地元の冴えない公立に通うことになったおねえちゃん。でも怪我の功名ってまさにこのことよね。だっておねえちゃんはそのおかげで、「翔くん」に会えたんだから。

「翔くん」は同じ学校の先輩だったんだよね? 学校でも一番のイケメンで人気者で、そんな彼から告白されて、おねえちゃんすごくうれしそうだったものね。バレンタインのチョコも張り切って作っちゃって。ハート形で、ローマ字で「KAKERU」って書いてあったっけ。私もその日、偶然バレンタインチョコを作ってたのよね。でも二人して同じ箱に詰めて、おそろいのリボンで結んじゃったから、つい間違えちゃったのよ。「翔くん」、怒ってたんじゃない? 箱を開けて中見たら、全然違う男の名前が書いてあるんだもの。あっ、でも安心して。「翔くん」用のチョコもちゃんと、本人に渡しておいたわ。でも私うっかりして、おねえちゃんからっていうの忘れちゃった。こういっちゃなんだけど、「翔くん」て小さいしヘタクソよね? ああごめん。おねえちゃんは知らないか。


 高校二年生の頃、おねえちゃんのバイト先で万引き犯を見逃したのは私です。

 おねえちゃん、近所のコンビニでバイトしてたでしょう。家が近いから、私もよくいってたのよ。店長さんともずいぶん仲良くなれたわ。あの人会うたびに「似てない姉妹だね」なんていってくれたわね。

 あの頃何度か、売り場で怪しい動きをしている女子高生を見かけたわ。よく見れば、棚にあったお菓子とかジュースを、こっそりバッグに詰めてるの。万引きだって気づいたけど、声は怖くてかけられなかった。おねえちゃんも結局気づかなくて、あとあと店長さんにものすごく怒られてたわよね。

 ああ、そうそう。あのコンビニ、誰かが「日本一万引きしやすいコンビニ」っていいふらしていたらしいわよ。誰かしらね、そんなことをいうのは。私も「バイトの女子高生の目は節穴」ぐらいはいったかもしれないけど。






 おねえちゃん、あのね。

 二週間前、パパとママに嘘をついたのは私です。

 ほんのちょこっとの嘘よ。大したものじゃないわ。私はおねえちゃんに会ってない。そういっただけよ。本当は数週間前に会ったけれど、ちょっと秘密にしておきたかったの。場所は人目につかないところだったし、きっと誰にもバレてないわ。


 おねえちゃん、あのね。

 先週のお昼、警察の人に嘘をついたのは私です。

 パパとママがあまりにも心配して警察に相談しにいったのよ。だから私、もう一度同じ噓をつくしかなかったの。おねえちゃんとは会っていませんって。






 おねえちゃん、あのね。

 ずっと秘密にしてきたことがあります。


 おねえちゃん、あのね。

 あなたのそのきれいな顔を見ているだけで、吐き気がするほど腹が立った。


 おねえちゃん、あのね。

 同じ血を引いているはずなのに、私にはないすべてを持っている。


 おねえちゃん、あのね。

 パパとママも、一番に愛したのはあなただった。


 おねえちゃん、あのね。

 美人で優しくて、頭もいい。運動もできるすてきなおねえちゃん。


 おねえちゃん、あのね。

 私はそんなあなたが大嫌い。


 おねえちゃん、あのね。

 だからあの日、おねえちゃんに会いにいったの。


 おねえちゃん、あのね。

 人目につかないような暗い山道まで呼び出すのは大変だったわ。


 おねえちゃん、あのね。

 きっとおねえちゃんは今も、誰が自分を呼び出したのか知らないんでしょうね。


 おねえちゃん、あのね。

 だっておねえちゃんが振り向くその前に、私は金槌を振り上げていた。


 おねえちゃん、あのね。

 あなたの頭を砕いたその瞬間の腕のしびれを、まだ覚えている。


 おねえちゃん、あのね。

 小さい頃から可愛くて、アイドルみたいだった私のおねえちゃん。


 おねえちゃん、あのね。

 でもあの時の、白い肌が真っ赤な血に覆われた時のおねえちゃんが、今までで一番きれいだったわ。


 おねえちゃん、あのね。

 人は死ぬ時、思い出が走馬灯のように駆け巡るというわね。


 おねえちゃん、あのね。

 あの瞬間、おねえちゃんもなにか思い出していたのかしら。


 おねえちゃん、あのね。

 その中のたった一つでも、私との思い出はあったのかしら。


 おねえちゃん、あのね。

 それともなにも思い出す間もなく、魂はいってしまったのかしら。


 おねえちゃん、あのね。

 おねえちゃんはきっと、変わり果てた自分の姿を、誰にも見せたくなかったはずよね。


 おねえちゃん、あのね。

 だっておねえちゃんは、誰よりも自分の美貌に自信を持っていたんだもの。


 おねえちゃん、あのね。

 だからおねえちゃんの身体は、ちゃんと見つからないようにしておいてあげたわ。


 おねえちゃん、あのね。

 人の骨って、なかなか切るのに苦労したけど。


 おねえちゃん、あのね。

 きっと一部が見つかったとしても、おねえちゃんだってわかりゃしないわ。


 おねえちゃん、あのね。

 ぜーんぶバラバラにして、いろいろなところに埋めてあげたから。


 おねえちゃん、あのね。

 髪の毛も全部そり落として。


 おねえちゃん、あのね。

 爪も一枚一枚丁寧にはがして。


 おねえちゃん、あのね。

 真っ白な歯もすべて抜いて。


 おねえちゃん、あのね。

 全部私が、処分してあげる。


 おねえちゃん、あのね。

 おねえちゃんという存在そのものを。



 おねえちゃん、あのね。

 ずっといえなくて、黙っていたことがあります。



 おねえちゃんを殺したのは、私です。






真夜中に書いていたら、自分の方が怖くなったという……。

作者は基本、オカルトが苦手です。



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― 新着の感想 ―
[良い点] こう過去の体験から最近のグイグイ来る展開。 積み積もった物があるからこその怖さリアルさが描けてると思いました。 [一言] レビューから見に来ました。 凄惨ですねー 最後のオカルト苦手と言う…
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