表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ファンタジーショートショート:行き過ぎたチート

作者: ウーフー

 「ここが、俺が救う世界ってわけだな。〝管理者様〟よぉ?」

あるファンタジーな世界に降り立った男は周りを見渡しながらそう呟いた。周りには緑の草原が広がるばかりでそれ以外何も見当たらない。だが男は、まるで知った道のように歩き出した。

「何々?町まで後5㎞位か。マップが常に頭の中で表示されているって便利なもんだよな」

そう男の頭の中にはその世界の地図が正確に映し出されており近くの町までのナビゲーションの機能まであったのだ。

「最初は、どうしようかと思ったけどこれは案外良い思いできるかもな」

等と男は、だらしなくにやけていた。

 そもそもの発端は、男の前に『世界の管理者』なる者が現れたことに始まる。『あるファンタジー世界を担当していたのだが、放置気味にしていたせいで魔物によって世界が崩壊寸前まで行ってしまっている。助けてくれないか?』と言うものであった。それに対し男は

「暇だし付き合うぜ。でも死んだり痛い目みるのだけは勘弁だ。こんなお願い聞いてくれるんならいいぜ」

と管理者に様々な要求を突き付けた。そんな要求に管理者は全て答えたのだ。元々の身体能力の強化は元より自身を強化するために必要な経験値の異常増加等々である。管理者もやりすぎかと一抹の不安を抱いたが、元々崩壊寸前の世界この位問題ないだろうと強化し続けた。こうしてこの男はその崩壊寸前の世界へと現れたわけである。

 男が、暫く歩いていると人の頭位の大きさの水色のゼリーを発見した。

「これが、スライムってやつか?こんなもん蹴りで十分!」

とスライムを蹴り飛ばすとスライムは体積を大きく減らしそのまま消滅したのだった。

「お?これが経験値が入るってことか。いいねいいね!」

スライムを倒しただけなのに異常なまでの経験値が男のもとに入ってくる。それはもうその世界を一つ破壊してもお釣りがくるほどの力を一気に手に入れたのだった。

 ここでその『世界の管理者』すら予期していないあることが起こった。そうやって一気に強くなった男に対してその世界そのものがバランスを取ろうとした。そして強化させるのに至ったのが、よりにもよって魔物だったのである。その効果はあっという間に現れた。

「な、なんだ?」

経験値も入り強化された体に意気揚々と歩いていた男は、いきなりの現象に立ち止まった。頭の中に表示されていたはずの町が表示されなくなったのである。

「エラーか?」

男が首をかしげているとそこに地震が起こった。それだけではない。今までの晴天が嘘のようにどんよりとした雲に覆われ地震は更にひどくなりついには、地面が割れ草原が崩壊し始めた。

「なんだよこれ!どうゆうことだよ!」

いきなりの現象に慌てて走り始める男。その足元に先ほどより青みがかったスライムが現れた。

「こんなもん!」

再び蹴ると、先ほどと同じように消し飛ぶスライム。世界がどれほど強化したところで男の強化には追い付かなかったのである。

「へっ!どうせ地震の元凶ってやつだってあっという間に片付けてやる!」

そうやって走り出そうとする男に更に追い打ちをかけるかのように状況が変化する。さきほどの地割れから瘴気とマグマが吹き出し、辺りを一変させたのだ。

「なんだ?何が起こっていやがる!」

そう怒鳴りつける男に応える者は、誰も居なかった。

 先ほどの強化されたスライム。それ1匹で世界を滅ぼせるくらいにまで強化されていたのだが、男に1撃で倒されてしまった。そして再び男に入った経験値を世界が観測。更なる強化を魔物にしてしまったのである。因みにそんな最弱のモンスターであるスライム1匹で世界が滅ぼせるくらいになってしまい。更に強化された結果。あっという間に魔物以外の生き物は死滅してしまった。最早崩壊したも同然の世界になっていたのだ。

 そんなことも知らず男は、走り続けた。

「誰かいないのか!生きてるやつはいないのか!」

行く先行く先で大量の魔物とを蹴散らしながら進む男。どんな攻撃もインフレを起こしている男の身体に傷一つつけることが出来ない。更に強化される男の体。更に強化される魔物たち。

 戦い続けた男がふと気が付くと最早元が何なのかわからない風景となった世界で雲霞のごとく押し寄せる魔物とそれに戦い続ける自分と言った具合になってしまった。

「どうなってる⁉おい!管理者!」

男が怒鳴りつけるがそれに対する答えは返ってこない。

「畜生!」

男は怒鳴り続けながら戦い抜いた。その世界の消滅するその日まで。

 管理者は、男に任せたから大丈夫と高を括って再びさぼり始めた。暫く経ってその世界を覗いてみると既に修復不可能な状態になっていたのである。これに驚いて男を戻そうと動きはじめた途端。男のインフレを起こし、ついには管理者にまで届く攻撃に消滅してしまったのである。

 何とかその世界を消滅させることに成功した他の管理者によって、この事例は必ずマニュアルに載せられるようになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ