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砂粒があれば  作者: そとのなか
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あなたと手を繋ぎたい

「あなたと手を繋ぎたい」

そういってあのこは僕の手を握ってくる。

「…やめろ」

「なんで?」

「なんでって…」

「嫌なの?」

「そんなんじゃない」

「じゃあ!!」

「俺には出来ない」

「待って」

手なんて握れるわけがない。どうして握れるというのだ。認められない。公にしたくない。恥ずかしい。

でも握りたかった。少し触れただけ。我慢できなかった。握り返したかった。ても出来ない。怖い。そんなのしていいの?

不埒と思われてしまう。誠実に。とにかく汚らしさは出してはいけない。そうじゃないと嫌われてしまう。だから握り返すなんて。

「どうしたらよかったんだろう」

わからなかった。ただわからなかった。怖い、握り返すのが。

「俺には無理だ不可能だ」

いくら仲が良くとも手を握り返すなんて不可能だ。そんなの出来るわけがない。

「どんな顔して会おう」

クリームパンでも買おうか。でも恥ずかしい。なんでいきなりあんなこと。俺に出来るわけがないじゃないか。第一俺の手は汚い。こんな気持ち悪い手をよく触ろうと。俺なら触らないこんな手。何故。

そもそもなんで俺と話せるのだ。わからない、謎だ。不思議すぎる。こんなに気持ち悪いのに爛れているのに。挙動はおかしいし声は聴きたくないし。そんなやつとなぜ一緒にいられるのだ。謎だ謎すぎる。

「嫌だ嫌だもう嫌だ」

考えれば考えるほど判らない。謎すぎる。どうしてこうなっている。おれには判らない。不思議すぎてどうしようもない。

「早く帰ろう」

いまあのことは会えない。俺には厳し過ぎる。とにかく帰らなければ。早く布団に倒れて何も考えない。とにかく考えない。



わたしは汚ない、気持ち悪い。だれとも話せない。声が気持ち悪い。行動がズレている。嘘をついてる。誤魔化している。ずるい人間。嫌になる、自分について考えると。なぜわたしはみんなと一緒に居られるの? 疎外されて当たり前じゃん。早く何処かに行きたくなる。逃げ出したい。キツかった。布団で横になっている時だけが自分であった。本当に嫌だった。全てが嫌だった。


俺はこういう奴なのになぜ存在できるのだろう。わたしにはわからない。嘘つき野郎はいらないだろう?


みんなそうなのかもしれない。うそをついていて。相手の嘘もわかっている。でも自分も嘘をついているからなにもいわない。自分に火は着けたくないから。


別にみんながそうなのはどうでもいいけど。自分に嘘をはつきたくなかった。でもなかなか出来ないそんなこと。嘘をつくしかなかった。



「なんで昨日は逃げちゃったのさ、探したよ?」

「ごめんごめんごめんなさい」

「別に謝らなくてもいいよ」

「すみませんでしたもうしませんから」

「ほんと! じゃあ」

あのこは手を握ってくる。

「…ご、ごめん。や、やっぱ…」

「なに? うそついたの?」

「うそなんか…」

「うそついてる。わたしと手なんて繋ぎたくないんでしょう。わかってるよ」

「わかってないよ」

「なんで」

「おれなんかとなんで手を繋ぐのさ」

彼女は手を離した。

「はいな?」

「な、なんで手を、、手を、つ、繋いで…くれるのさ、、。」

「なんでって」

彼女は背を向け片手だけをこちらへと差し出し振り返りざまに

「繋ぎたいからに決まっているでしょう」

と呟いた。

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