表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説集5 (201話~250話)

侵入者

作者: 蹴沢缶九郎

六月も終わりに差し掛かり、じとつく梅雨の時期が明けるのも、もうすぐである。


「平和だな」


「うむ、これも我々が日々職務を全うしている結果だ」


巡回中のパトカー内で、二人の警察官が会話をしている。


「しかしこうも平和だと、たまにはあっという事件でも起こらないかと思ってしまう」


「馬鹿な事を言ってはいけない。平和が一番であり、この平和を長く維持させる事こそが我々の使命であり仕事なのだ」


「それもそうだな。いや、すまなかった」


そんな二人の会話をまるで聞いていたかのようなタイミングで、本部から事件発生を伝える一本の無線連絡が入った。


「緊急事件発生。何者かが被害者宅に侵入したとの通報が入った。至急、現場に急行されたし。現場は…」


本部からの要請を受け、二人の顔を緊張感が支配する。


「おい、聞いたか。侵入者だそうだ。泥棒目的の侵入だろうか」


「わからんが、ここから近いな。さっそく向かおう」


サイレンを鳴らし、赤色灯を回転させたパトカーは緊急走行で現場に急行した。


現場付近では、通報した家の家主であろう中年の男性が、パトカーに向かい両手を振って、何かを叫んでおり、パトカーが到着するやいなや、男性は二人の警察官を()かした。


「やっと来てくれましたか!! 遅いですよ!! さあ、早く早く!!」


「そんな慌てないで。我々が来たからにはもう安心ですよ。自宅に侵入した憎き犯人をすぐに捕まえますからね」


警察官の言葉に、男性はいくらか安堵の表情になり、言った。


「本当ですか!? ああ良かった…。もう一生我が家には戻れないのかと思った」


「そんな大袈裟な…、犯人はまだ自宅にいるのですね?」


「はい、あそこに」


中年男性の視線の先には、人間の家を住み処とした新種の巨大カタツムリが、ニュルリと顔を覗かせていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ