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 アルマン女学園の制服は、開襟シャツに灰色のベスト、色味を合わせたチェックのプリーツスカート。襟元の赤いネクタイが洒落ている。冬になれば真っ白なブレザーも着用し、優雅な印象を人に与える。

 かといって別に裕福な家庭の生徒ばかりが通うわけではなく、中身はみな年相応に落ち着きがない、どこにでもいるごく普通の女の子たちだ。

 ビスティに引っ張られて校門に行くと、制服を着た少女たちが十数人、それも上は高等部のお姉さま方、下は初等部低学年と思われる小さな女の子まで、幅広くクラシックカーの周りに集っていた。車の持ち主である少年を中心にして度々笑い声がおこる。


「えっじゃあルカ君はー、そのクーって子とは幼馴染なんだー」


「そんなかわいい子いたかしら」


「いやあ、お姉さんのほうがずっと綺麗ですよ。ほら、この髪なんて蜂蜜みたい」


「やだあルカ君たら。お世辞ならもっと大胆に言わないとダメよ」


 きゃはははは。

 ・・・この声と軽い感じは。

 ああもう帰りたい。冗談じゃない、この状況で私がそのクーだと分かったら、明日からの学校生活における私の地味ですよ恋になんて興味ありませんよ的位置がおびやかされる。あ、でも明日から学校ないのか。いやいや、それでもダメだ、この中にも同学年の子がいるし同じ寮生のひとがいる。ていうかなんでこいつはこう目立つところにわざわざいるかな。・・・目立ちたがりだからか。女の子大好きだし。このちやほやされたい病め。

でも、それならただここを離れるだけで済む。少し離れがたいのは、あいつが――――


「だからお世辞じゃないですってばー。本当はここに来たのだって、クーに会うのは口実で、綺麗なお姉さんに会いに来たんですよ」


 隣とはいえ山の中の国から、わざわざね。


「ルカ君って年上が好みなの?・・・じゃあ私なんかはダメかなー」


「全然!・・・特に君みたいな、可愛い子なら」


 きゃああああー!

 はい、ぎゃー。こうしてまたルカに夢中になる子が増える、と。にしても、いくら顔がいいからってそこまで騒ぐもんかね。やっぱ女学園だからかな。男に飢えてる。

 やっと頭の間から、ルカの顔が見える。言っておくけど、断じて私の意思で割り込んで行ってるわけじゃない。ビスティに引っ張られてるだけ(背のある私は見えてるけど、小柄なビスティはまだ見えてない)。

 

 ルカ・クレセンティアー、私のひとつ上で十六歳。艶のある黒に近い灰色の髪、灰色に金が散った妙な虹彩の瞳。いつも笑っているような顔は昔から変わらず健在で、そんなところも女の子にとってはしゃべりやすいのかもしれない。・・・私は胡散臭く感じるけどね。左耳の青玉(サファイア)のピアスもそれに拍車をかける。それに男にしては背は低めで細い。伸びたとしても、せいぜい私と同じくらいか少し高いか、ってくらいだ。つまり、かっこいいって感じじゃないのよ。


「・・・ビスティっ!もういいから、帰ろ?ねえ、どうせ見えないし」


 ていうか会いたくない。


「ダメよおー、そういう根性がないからまだリエルには経験がないのよう。もうすぐだから、ほら!」


 待って、そんなに引っ張るなー!


「ねえ、クーって子、全然来ないよ?そんな子待つより、私とその車でどっか行こうよ~?」


「え?いや・・・」


「あー!抜け駆けずるいいー!ならあたしもー!」


「あんたなんかより、わたしのほうがずっとかわいいし!ねっ、ルカ君もそう思うよねぇー?」


「いや、みんな落ち着いて・・・」




 

 ずぼっ。





 輪の中に無理やり突っ込んだので、驚いたのか周りが静かになる。

 ―ほら、真ん中にでちゃった・・・こいつには、会いたくなかったのに。







「・・・クー?」







 確かめるような、耳障りのいいアルトの声が響いた。


「え?あ、あたし?」


 注目を集めているのに気づき、あわてて周りを見回すビスティ。







「二年ぶりだ、・・・久しぶり、クー。」







 振り返れば、成長したあいつがいて。







「・・・その名で呼ばないでって、言ってるでしょ」






 やっぱりクーだ、と笑うのが少し腹立だしい。


 

 



 

 すみません、これからの構成上、六年ぶりの再会から二年ぶりの再会に直しました。

 …感動が大分違いますね。

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