死刑囚代行人
重いテーマですが、学校の宗教の時間に感じた事を書いてみました。
男は、上下を黒い服に包み込み、両手は手錠に拘束され、両目は眼帯で目隠しされていた。
「汝、●●は23才の男▲▲を殺した。その過程は残虐極まり、極刑に処す。」
男は両脇の男に引率され、処刑台へと歩みを進める。
ロープに首を通す。
数秒後、突然床がなくなる。
引率の男達は、黒服の男の死亡を確認する。
死刑は執行された。
数分後、死んだはずの彼は息を再び始め、ズルズルと立ち上がった。
彼は、不死の人間。
彼は、死刑囚代行人。
2xxx年、国際社会では『死刑制度について』の国際会議が幾度も開かれ、全世界統一の死刑制度廃止が決まったのだった。
そして、生まれた死刑囚代行人制度。
その男は、科学者によって造られた不死のクローンだった。
死刑に値する罪を犯した者は、死刑囚代行人が代わりに刑を受け、罪人は彼の死により、改心し、罪を懺悔するのだ。
勿論クローンは、人格が存在する。
家族もいた。
家庭的な妻、今年で6歳になる愛する1人娘だ。
彼は、死刑囚の犯した罪の情報をすべて把握し、それを知って代行する。
どんな残忍な罪人も、悔い改める事が出来る。
もう一度彼らにやり直すチャンスを与えるのだ。
彼は、この仕事に誇りを持っていた。
2xxx年 8月14日 ある事件が起きた。
32才男が少女を殺害したのだ。
死刑囚代行人は、例のように、その事件の全貌を聞かされていた。
取り乱しはしない。どんなに残忍な人間も、もう一度やり直す事が出来るのだから…
男は、唯一の愛娘に昔買ってやった安物のおもちゃのネックレスを首に掛けた。
手錠が締まる。
娘が5才の誕生日、彼がプレゼントを渡した時の彼女の嬉しい顔が脳裏をよぎる。
そして、彼は歩き出す。
モニター越しに犯人の顔が見られた。
男は目隠しをされる。
カツカツ
今日も彼は、仕事をこなす。
家に帰れば妻が温かいクリームシチューを作っているだろう。
彼は、歩き出す。
カツカツ
今日も彼は、仕事をこなす。
自分の中では、まだ答えは出ません。
というか一生出ないと思います。
間違がってるとか正しいとかいう問題じゃないし、分かりません。