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16/20

16 vs 白金さん

 貸切のバトルホールは、授業のときよりも広く感じた。


 ライトグレーの床を白い光が照らし、銀色の無骨な天井が遠い。

 足元に、ぼんやりと影が落ちている。

 呼吸の音でさえ響く。


 俺は佐野先生を見て言った。


「これから俺と白金さんで戦うので、動画を撮って、AIで魔力量解析してください」

「なっ」

 佐野先生は一瞬目を大きく開けた。


「俺は、いつも通りに戦います。それで、魔力量が平均と同じだったら……」

 俺は佐野先生の目をまっすぐ見る。


「俺の魔力の使い方は、悪くないっていう証明になりますよね?」


 佐野先生は、驚いているようにも、少し狼狽えているようにも見えた。


「……わかったよ。魔力量解析結果が問題なければ、今後、お前の戦闘に口出しするのは止める。……でも」


 俺はごくりと唾を飲んだ。


 佐野先生は俺を睨んで続けた。

「もし魔力消費が激しければ……。この戦闘のことも罰するから覚悟しとけ。さらに、1ヶ月模擬戦闘停止、もちろん不戦敗扱いだ」


 ――は?


 俺は眉を寄せる。

「なんで、そこまで……」


「強さよりも、成績よりも、お前の未来の方が大事なんだよ!」

 佐野先生は怒鳴った。


 俺はしばらく言葉を失った。


「で、どうするんだ? 条件を飲むなら、バトルホールを貸す」


 俺は即答できずに固まる。


『大丈夫だ。お前の力を信じろ』

 ノクスの声が脳内に聞こえた。


 その声を聞いた瞬間、俺の胸の中にじわりと安堵が広がった。


「……分かりました。条件、飲みます」

 俺は低い声で言うと、佐野先生は頷いた。




 俺と白金さんは、離れて向かい合った。


「戦闘、開始!」

 佐野先生の声が響いた。


 すぐに白金さんは、無数の光の矢をまっすぐこちらに向けてくる。


『空間を圧縮して、光を曲げよう』

 ノクスの声。


「オーケー!」

 俺は答える。


 この前やった戦法。

 俺は自分の前の空気を固めて、光を屈折させようとした。


 だが、それを読んだかのように、光が曲がってきた。


「っ……!」

 俺は反射的に目の前に空気の壁を作り、一歩退いた。


 ――そうだ、白金さん、光を曲げられるようになったんだった。


「危ねえ……」

 光の矢の攻撃は、間一髪で凌いだ。


 白金さんの顔が少し歪む。


『相手に隙ができたぞ』

 ノクスの声が聞こえ、俺は迷わず風を操った。


 強い風が、空間を押し出すように吹いた。


「あっ」

 白金さんの小さな悲鳴が聞こえた。


 今だ。

『よし、空間固定して動きを止める』

 ノクスは声高に言った。


 俺は白金さんの周囲を狙い、意識を集中させる。


「白金さん、今回も勝ち取らせてもら……」


 空間が、白金さんを“貫いた“。


 白金さんはそこにいるのに、まるで幻覚かのように。

 空気の刃が、何も刺せていない。


「……は?」

 どういうこと?


 すぐに足首が何かに縛られた。

「わっ!?」


 俺は間抜けな声を出して、つまずくように前に転びそうになった。

 足元を見ると、影が実体化して俺の足に絡みついていた。


「っふっははは」

 白金の笑い声が聞こえた。

 すぐ背後で。


 白金さんは、数メートル先に立っているはずなのに。


『ああ。自分の像を投影して、まるでそこに立っているかのように見せてるのか』

「え、じゃあ目の前にいるのは、ニセモノ……」


 俺の足が引っ張られ、身体が地面に叩きつけられる。

 俺は咄嗟に受け身を取った。


「いてえええ」

 腕を少し擦りむいたようで、ヒリヒリと痛む。


 ――このままだと、魔力消費問題どころか、白金さんに負けるぞ……。


 フィールドの端で、スマートグラスを掛けた佐野先生が腕を組んでこちらを見ている。


 俺は痛んだ腕をさすった。

 息が上がっている。


 でも、ここで降参するわけにはいかない。


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