36 調和への挑戦
1 試作品の確認会議
1週間後。
陽だまり亭の中庭に、試作品が集まった。
明るい木の調理台。
白い素焼きに植物の模様の器。
鉄の黒に木の柄の調理器具。
トビアス、ディーター、グリムが、それぞれ持ち寄った。
マルクスとインゲも、ノートを持っている。
「では、全体を確認しましょう」
マルクスが言った。
中庭のテーブルに、すべてを並べる。
調理台の上に、器を置く。
その横に、調理器具を並べる。
みんなで、じっと見つめる。
父さんが言った。
「うーん」
母さんも首を傾げる。
「何か、違う気がする」
私も見た。
確かに、何か違う。
でも、何が違うのか、分からない。
マルクスが、じっと見ている。
インゲも、真剣な顔。
「色が、バラバラですね」
インゲが言った。
「バラバラ?」
トビアスが尋ねる。
マルクスが説明した。
「木の色が、思ったより暗いんです。器は明るいのに、調理器具の柄も、少し違う色」
インゲも付け加えた。
「統一感が足りないですね」
職人たちが、顔を見合わせた。
ディーターが器を手に取った。
「確かに、木と合ってないかもしれない」
グリムも、調理器具を見た。
「…柄の木、暗すぎたか」
トビアスが調理台を見つめる。
「明るい色を選んだつもりだったが、もっと明るくできる」
2 マルクスの提案
マルクスが、メモを取り出した。
「色のサンプルを作りましょう。それぞれの色を並べて、どの色が一番合うか調整しましょう」
インゲも頷いた。
「一つずつ、調整していく」
父さんが言った。
「それは良い考えだ」
母さんも賛成した。
「色を合わせることが、大事ね」
トビアスが提案した。
「じゃあ、私は風合いの異なる木材のサンプルを何種類か持ってくる。そこで決めた木材と同じものをグリムさんにも融通することにしよう」
「…よろしく頼む」
ディーターも言った。
「私も、釉薬の色を調整する。いくつか試作品を焼いて、サンプルを作ってみる」
マルクスが記録した。
「では、3日後にまた集まりましょう。それぞれ、色のサンプルを持ち寄って」
3 3日後、陽だまり亭で
3日後。
陽だまり亭の中庭に、みんなが集まった。
トビアスが、木材のサンプルを持ってきた。
「色のサンプル、できました」
トビアスが、5種類の木材を並べた。
明るい色から、少し暗い色まで。
「一番明るいのが、これ」
トビアスが一番左の木材を指した。
ディーターも、器のサンプルを持ってきた。
「釉薬の色、調整しました」
ディーターが、4種類の器を見せた。
白の色が、微妙に違う。
マルクスが提案した。
「器と木材を並べてみましょう」
白い素焼きの器を、木材の横に置く。
いろんな組み合わせを試す。
私も見た。
トビアスの2番目の木材と、ディーターの3番目の器が、一番合ってる。
「2番目の木材と、3番目の器が良いと思います」
マルクスが言った。
父さんも頷いた。
「確かに。明るいけど、落ち着いてる」
インゲも賛成した。
「木の色と、調和してますね」
トビアスが2番目の木材を手に取った。
「じゃあ、これで作り直そう。ね、グリムさん」
「…そうしよう」
ディーターが3番目の器を手に取った。
「この色で焼き直そう」
4 徐々に調和してくる
次の週。
また、陽だまり亭の中庭に試作品が集まった。
調整した色の調理台。
調整した色の器。
調整した色の調理器具。
すべてを、並べる。
みんなで、じっと見つめる。
「…どうでしょうか」
トビアスが尋ねた。
私は見た。
今度は、違う。
全部が、調和してる。
明るい木の色。
白い器に、緑と青の植物の模様。
鉄の黒に、木の柄。
すべてが、つながってる。
「素晴らしい!」
父さんが笑顔になった。
母さんも目を輝かせた。
「これなら、完璧ね」
マルクスとインゲが、顔を見合わせた。
「やりましたね」
トビアスが安心した顔をした。
「良かった」
ディーターも笑った。
「調和が、出たな」
グリムは黙って頷いた。
でも、その顔は、満足そう。
5 改装工事の準備
その夜。
父さんと母さんが、改装の日程を確認していた。
「来週から、工事が始まる」
父さんが言った。
「1週間休業ね」
母さんも頷いた。
私は聞いていた。
1週間、お店が休み。
1週間、料理ができない。
「リナは、どうする?」
父さんが尋ねた。
「学校はあるけど、放課後は、時間があるね」
母さんも言った。
「何か、やりたいことある?」
私は考えた。
1週間。
何かできないかな。
でも、まだ思いつかない。
「考えてみる」
私は答えた。
6 マルクスとインゲの記録
同じ頃。
マルクスとインゲは連絡ノートを整理していた。
「色の調整はうまくいったね」
マルクスが言った。
「うん。全体が調和したわ」
インゲも頷いた。
「次は、本番の制作だね」
マルクスが記録する。
「調理台は2週間。器は3週間。調理器具は1週間」
インゲも書き込む。
「改装工事と並行して進めて、工事が終わる頃には全部完成している予定」
マルクスが笑った。
「僕たち、うまくやれてるよね」
インゲも笑顔になった。
「トータルコーディネート業、成功しそうよ!」
7 職人たちの決意
トビアスは、工房で木材を見つめていた。
「調和が出る木材の風合いは調整できた。良いものを作ろう」
ディーターは、器の色を確認していた。
「釉薬の色、完璧だ。本番もこの色で」
グリムは、柄の木材を磨いていた。
「…統一感。良いものになる」
それぞれが、本番の制作に向けて。
決意を、新たにしていた。
8 リナの想い
夜。
私は、窓の外を見ていた。
新しい陽だまり亭。
明るい調理台。
綺麗な器。
使いやすい調理器具。
全部が、楽しみ。
でも、1週間の休業。
何かできないかな。
ソフィアさんのこと。
薬草のこと。料理のこと。
何か、思いついた気がする。
でも、まだはっきりしない。
明日、ソフィアさんに会ってみよう。
9 エンディング
試作品が調和した。
色が合った。
全体がつながった。
職人たちは、本番の制作に入る。
マルクスとインゲは、進捗を管理する。
そして、リナは。
休業中、何をしよう。
ソフィアと、何かできないか。
そんなことを、考え始めていた。




