34 若い二人のデザイン
1 デザインコンセプトを固める
翌朝。
マルクスとインゲが、陽だまり亭を訪れた。
「おはようございます」
「おはよう」
父さんと母さんが迎える。
私も、中庭に出た。
「今日は、全体のデザインを相談したくて」
マルクスが言った。
中庭のテーブルに、みんなで座る。
マルクスとインゲ、父さん、母さん、そして私。
「まず、陽だまり亭のイメージを教えてください」
インゲが尋ねた。
父さんが考える。
「温かい店にしたいね。でも、今までと同じじゃなくて、新しい雰囲気も欲しい」
母さんも頷いた。
「明るくて、開放的な感じ。せっかく改装するんだから、思い切ったことをしてもいいと思うの」
私も言った。
「今までにない、陽だまり亭。でも、居心地は良い場所であってほしいな」
マルクスとインゲが、顔を見合わせた。
思っていたより、前向きだ。
「新しいこと、ですか」
インゲが確認する。
父さんが笑った。
「僕らだって、まだ若いからね。冒険してみたい」
母さんも言った。
「多少失敗してもなんとかなるわ。挑戦することが大事」
私は嬉しくなった。
父さんと母さんが、こんなこと言うなんて。
マルクスが提案した。
「器で、冒険してみるのはどうでしょう。華やかな器にしてはどうかと考えています」
父さんが興味深そうに聞いている。
「華やかな器?」
インゲが説明した。
「絵付けができれば良いんですが。でも、それだと高額になってしまって…」
母さんが頷いた。
「そうね。予算もあるし」
私は考えた。
華やかで、でも高額じゃない。
何かないかな。
ふと、思いついた。
「海綿で、模様をつけるのはどう?」
みんなが、私を見た。
「海綿?」
父さんが尋ねる。
「うん。海綿をいろんな形に切って、ぽんぽんって押すの。葉っぱの形とか、花の形とか」
マルクスが目を輝かせた。
「なるほど!」
インゲも嬉しそうに言った。
「それなら、手作業だけど絵付けほど技術も必要ないし、時間もかからないかも」
母さんが考えた。
「自然の模様になるわね。薬草や、植物のイメージで」
私も言った。
「緑や青の色で植物の模様をつけてもきれいかも」
父さんが笑った。
「面白いアイデアだ。でも、できるかな」
マルクスが言った。
「父に聞いてみます。陶器職人なら実現可能か判断できるはず」
インゲも頷いた。
「実現できるか、確認しないとね」
父さんが言った。
「良いアイデアだから、ぜひ、実現したいね」
マルクスが続けた。
「調理台は明るい木。器は、もしリナちゃんのアイデアができれば、植物の模様。調理器具は、鉄の黒に木の柄」
父さんが頷いた。
「全体が、つながる感じだね」
母さんも言った。
「料理に合わせて、器を選べる。これは面白いわ」
インゲが付け加えた。
「全部バラバラじゃなくて統一感を保ちます。でも、少し冒険する方向で」
私も嬉しくなった。
新しい陽だまり亭。
わくわくする。
父さんが笑った。
「お願いします」
母さんも頷いた。
「楽しみにしてるわ」
私も言った。
「早く見たい!」
インゲが紙にメモを取る。
簡単な図を描いて。
調理台、器、調理器具を並べて。
葉っぱや花の形も、描き込む。
「これで、イメージが固まりましたね」
マルクスが満足そうに言った。
「じゃあ、僕は父さんのところへ行って、リナちゃんのアイデアが、できるか確認します」
インゲが言った。
「私は、トビアスさんのところへ行ってくるわ」
「午後、グリムさんのところは一緒に行こう」
「うん。このイメージを、ちゃんと伝えましょう」
2人は、メモを確認した。
陽だまり亭の家族と決めた、デザイン。
新しいこと、冒険すること。
リナのアイデア、海綿で模様をつける方法。
これを、各職人に伝える。
それが、トータルコーディネーターの仕事。
2 マルクス、父の工房へ
マルクスが、父ディーターの工房を訪れた。
「父さん」
「おお、マルクス」
ディーターが、ろくろを回している。
器を作っている最中だ。
「少し、待っててくれるかな」
マルクスは頷いて、工房を見回す。
完成した器が、棚に並んでいる。
どれも、丁寧な仕事。
でも、無地の茶色ばかり。
ディーターが作業を終えた。
「さて、陽だまり亭さんのところのデザインの相談だったね」
マルクスは、メモを見る。
リナの家族と相談した内容。
「まず、全体のイメージなんだけど」
マルクスが説明する。
「陽だまり亭の皆さんと相談したところ、温かくて明るい雰囲気、でも、新しいことにも挑戦したいって」
ディーターが頷いた。
「新しいこと、か」
マルクスが続けた。
「色彩は、木の色を基本にする。調理台の木は、明るい色になりそう。器も、それに合わせたいんだ」
ディーターが考えた。
「明るい木の色か。じゃあ、器も明るめの色がいいな」
マルクスは、メモを見る。
リナの提案。
「実は、模様を入れたいんだ」
ディーターが少し驚いた顔をした。
「模様?絵付けは、高額になるが」
マルクスが説明した。
「リナちゃんのアイデアなんだけど、海綿で模様をつけることはできるかな」
ディーターが興味深そうに聞く。
「海綿で?」
マルクスが詳しく説明した。
「海綿を葉っぱや花の形に切ってぽんぽん押す。緑や青の色で、植物の模様をつける」
ディーターが考え込んだ。
「海綿で、模様か」
マルクスが尋ねた。
「できる?」
ディーターが顔を上げた。
「何度か試作品を作ってみる必要があるが、できると思うぞ」
マルクスが嬉しそうになった。
「本当?」
ディーターが説明した。
「素焼きをしてから海綿に顔料をつけて、押す。その上から、透明な釉薬をかけて、もう一度焼けば、模様が定着するんじゃないか」
マルクスが目を輝かせた。
「じゃあ、できるんだ!」
ディーターが笑った。
「リナちゃんの発想、面白いな。絵付けほど時間も技術も必要ないし、でも、華やかになる」
マルクスが付け加えた。
「形も、使いやすさを重視したいんだ。調理台で使いやすい形。深すぎず、浅すぎず」
ディーターが感心した。
「そうだな。使いやすさも大事だ。お前、なかなか良い視点を持ってるな」
マルクスは嬉しくなった。
自分の意見が、認められた。
リナの家族の想いを、伝えられている。
「じゃあ、試作してみる」
ディーターが言った。
「海綿の形も、工夫してみよう。葉っぱ、花、いろいろ試してみるよ」
マルクスは、父の顔を見た。
楽しそうだ。
新しい挑戦に、わくわくしている。
「父さん、ありがとう」
ディーターが笑った。
「こっちこそ。お前が、良い仕事を持ってきてくれた」
3 インゲ、トビアスの工房へ
同じ頃。
インゲが、トビアスの工房を訪れていた。
「おはようございます」
「おお、インゲさん。いらっしゃい」
トビアスが笑顔で迎える。
木の香りが漂う工房。
作業台には、木材が並んでいる。
「早速ですが、デザインの相談を」
インゲは、メモを取り出した。
リナの家族と決めた、全体のコンセプト。
「まず、全体のイメージなんですが」
インゲが説明する。
「陽だまり亭の皆さんと相談しました。温かくて明るい雰囲気は維持しつつ、でも、新しいことにも挑戦したいと」
トビアスが頷いた。
「新しいこと、か。面白いな」
インゲが続けた。
「色彩は、木の色を基本にします。リナさんが、木の色が好きだと。器には、植物の模様を入れる予定です。絵付けではなく、海綿で模様をつける方法です」
トビアスが興味深そうに聞いている。
「海綿で模様を?」
インゲが説明した。
「リナさんのアイデアなんです。海綿を葉っぱや花の形に切って、ぽんぽんと押す。この方法が実現できるか、マルクスが、ディーターさんに確認中です」
トビアスが感心した。
「なるほど。子供らしい、良い発想だ。絵付けほど高額じゃないが、華やかになる」
トビアスが木材を見せた。
「調理台に使う木、いくつか候補があるんだ。この明るい色と、この落ち着いた色と」
インゲは木材を見る。
リナの家族と決めた、全体のイメージ。
明るくて、開放的。
「明るい色が、良いと思います。陽だまり亭は、明るい雰囲気の店だから、明るい木の方が合うと思うんです」
トビアスが木材を手に取った。
「なるほど。確かに。この明るい色なら、器の模様も映える」
インゲが続けた。
「それに、植物の模様が入っても、明るい木なら調和します」
トビアスが感心した。
「良い視点だ。若いのに、全体が見えてる」
インゲは少し自信がついた。
そうだ。
自分は、全体を見る役割。
リナの家族の想いを、伝える役割。
4 エンディング
マルクスとインゲは、それぞれの工房で説明を終えた。
職人たちも、興味を持ってくれた。
新しい挑戦。
そして、ディーターが、海綿で模様をつけることができると言ってくれた。
リナのアイデアが、実現できる。
午後は、2人一緒にグリムの工房を訪れる。
そして、それぞれの職人が、試作を始める。
明るい木の調理台。
海綿で模様をつけた器。
木の柄の調理器具。
新しい陽だまり亭が、形になっていく。




