30 薬草の力
1 薬草の倉庫
翌日。
私と父さんは、再び薬草店を訪れた。
ソフィアの祖母が奥の部屋に案内してくれる。
「ここが、私の宝物庫だ」
部屋中に、乾燥した薬草。
棚には、様々な葉が並んでいる。
独特の香り。
「これが、抗菌性のある葉だ」
ソフィアの祖母がいくつかの葉を取り出した。
「これがタイム。抗菌性が非常に強い。だが、苦味がある。こちらは月桂樹の葉。香りが良く、肉料理にも使われる。そして、ローズマリー。これも保存に効く」
ソフィアが説明を加える。
「用途によって、使い分けるんです」
2 最初の試作
午後。
陽だまり亭の厨房で、試作を始めた。
「何で試そうか?」
「まずは、肉で」
父さんが肉を切り分ける。
3つに。
「これを、タイムで包んでみましょう」
「これは、月桂樹で」
私とソフィアが、丁寧に包んでいく。
「3つ目は、タイムと月桂樹を重ねてみます」
ソフィアが、几帳面に記録している。
どの肉に、どの葉を使ったか。
「これで、1日置いてみましょう」
「分かった」
3 翌日の結果
翌朝。
3つの肉を確認した。
「どうかな」
父さんが包みを開ける。
1つ目。タイムで包んだもの。
傷んでいない。
でも…
「タイムの苦味が、肉に移っています」
私が焼いた肉を味見して、顔をしかめた。
「これは、食べられないな」
2つ目。月桂樹で包んだもの。
少し傷んでいる。
「月桂樹だけでは、効果が弱かったようです」
ソフィアが記録に書き込む。
3つ目。タイムと月桂樹を重ねたもの。
状態は良好。
でも…
「葉が破れてしまっています」
課題が見えてきた。
抗菌性と味のバランス。
葉の強度。
包み方。
4 おばあさんの助言
昼。
薬草店で、ソフィアの祖母に報告した。
「やはり、1つの方法では難しいか」
「はい…」
ソフィアの祖母は考え込んでいたが、やがて言った。
「では、次はこうしよう。葉で包む前に、軽く塩をする」
「塩?」
「ああ。少量の塩で、余分な水分を抜く。それから、葉で包む。その方が、葉も破れにくい」
なるほど。
私も提案してみた。
「それと、葉を2種類組み合わせるのは?」
「ほう?」
「タイムを内側に。月桂樹を外側に。抗菌性の強いタイムで食材を守り、月桂樹の香りでタイムの苦味を抑える」
ソフィアの祖母が頷いた。
「面白い。やってみるといい」
5 2回目の試作
午後。
陽だまり亭の厨房。
父さんが肉に軽く塩をする。
「少し置いて、水分を抜こう」
しばらくして。
「では、包みましょう」
私とソフィアが協力して包む。
内側に、タイムの葉。
外側に、月桂樹の葉。
「丁寧に、破れないように」
「はい」
ソフィアが言った。
「リナさん、手際が良いですね」
「ソフィアさんこそ、記録が丁寧で」
「師匠に、正確に記録しなさいと言われているんです」
「大切ですよね」
6 少女たちの交流
休憩。
母さんがお茶を出してくれた。
「お疲れ様」
「ありがとうございます」
ソフィアと私は、向かい合って座る。
「リナさん、本当に詳しいですね」
「本をたくさん読んだので」
「7歳で、すごいです」
「ソフィアさんは、薬草の知識が豊富で」
「祖母…師匠に教わりました」
私は尋ねた。
「おばあさん、厳しそうですけど」
「ふふ、厳しいです。でも、優しいんですよ」
ソフィアは嬉しそうに笑った。
「ソフィアさんは、どうして薬草を?」
「人を助けたいんです。病気の人、困っている人。薬草で、少しでも楽になれば」
「私も、料理で人を幸せにしたいです」
「同じですね」
「はい」
私たちは微笑み合った。
7 2回目の結果
翌朝。
包みを開ける。
「どうだ?」
傷んでいない。
葉も破れていない。
「食べてみよう」
父さんが小さく切って、火を通した。
「…おお」
「どうですか?」
「苦味が、ほとんどない」
「本当ですか!」
私も味見。
確かに。
タイムの苦味が、肉に移っていない。
月桂樹の葉が、苦味を防いでくれている。
「これは、良いかもしれない」
でも、ソフィアが冷静に言った。
「でも、まだ1日しか経っていません」
「長距離輸送なら、もっと長く」
「1週間は持たないと」
「もっと改良が必要ですね」
その通りだ。
8 次のステップ
午後。
薬草店で、ソフィアの祖母に報告した。
「ほう。良くなってきたな」
「はい。でも、まだ」
「1週間持たせるには…」
ソフィアの祖母は考えた。
「燻製も加えてみるか」
「燻製?」
「ああ。軽く燻してから、葉で包む」
「それと、陶器の壺に入れて、蝋で封じる」
私が言った。
「複数の方法を、組み合わせるんですね」
ソフィアの祖母は頷いた。
「そうだ。1つだけでは限界がある」
「でも、組み合わせれば、可能性は広がる」
9 エンディング
複数の方法の組み合わせ。
前世の知識と、この世界の技術。
きっと、できる。
ソフィアは思っていた。
リナさんと一緒なら、新しいことが学べる。
ソフィアの祖母は、窓の外を見ていた。
良い子たちだ。
未来は、明るいかもしれん。
「では、また明日」
「はい!」
私とソフィアは、元気に答えた。
新しい挑戦は、まだ続く。




