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大和との再会

バサッバサッバサッ。


また魔物が来た。蔵刃が先頭に立って刀を構える。



「あっぶね。コイツ手紙持って来てくれた。あと少しで斬ってたぜ。」



あっはっは。と笑う蔵刃。



「で、誰から?」



「斬兎やん。開けてみ?」



李里をからかうのに、あきたのか手紙を見つめる蒼。



「…お。大和だったらしいぜ!大和にも知らせたから、待ってるって本人も言ってるらしいぞ。」



「ぷっ。大和の書いた手紙も入っとるわ。【サバクマッテル ヤマト】何人やねん!」



「蒼笑いすぎ。私達からすると、ここの文字変わってて書くの大変なんだよ。」



さっきから、李里が静かじゃない?



「李里!?しっかりして!」



「完全に気ー失っとるわ。」



「休憩所におろすか。」



休憩所って言っても岩場なんだけどね。水とか売る人がなぜかいる。


何を思ったか、李里に思いっきり蔵刃が水をかけた。



「ブハッ。ここどこ!?」



「ちょっと蔵刃!?何すんのよ!!」



「せやで!水がもったいないわ!」



呆れた。よく考えるとさ、普通李里の服持って来てくれるよね。まだ、私と色違い来てる李里。そんなに足開いちゃ…!変な目で見られてるよ。



「ここどこっすか?」


「休憩所だよ。」



「じゃ。行くか。」



「オレ便所行くわ。先に行くなよ。」



蒼が行くのに李里も着いて行った。あの恰好はヤバいよね。



「おい。何か機嫌ワリィな。」



「何でいきなり水かけちゃうかな。蔵刃って分かんないよ。」



「時間が無いんだ。いくら、能天気な大和でも一人じゃ心細いだろ。…分かったよ。あやまりゃ良いんだろ。」


チョイチョイと手で招かれた。蔵刃に近づくと、耳元で、



「悪かった。」



と低い声で囁かれた。


何このシチュエーション。なんすか!耳が熱いんだけど。



ペロっ。



「ななな!舐めたぁ!」



「はぁ。色気がねぇな。『きゃっ!』とか抱きつくだろ普通。」



「誰と比べてんのよ!バカばか馬鹿ぁ!」



蔵刃の頭をポコポコ叩いた。蔵刃は余裕で笑ってる。



「お二人さん。そろそろ行くで。」



「オレじろじろ見られた!」



李里涙目。



「李里オッサンにガン見されとったわ。オレが代わりにソイツのピーを蹴ってやったわ。」



「もう最低!楓ちゃん助けてー!」



ここにはいない楓ちゃんに助けを求めた私だった。






空の旅はあと一日くらいらしい。



「来ないでー!」



バキィ!



「姉ちゃん本当は怖く無いだろ。オレよりレベル上がってるし。」


「はぁっはぁっ。李里避けないでよ!男でしょ!」



「奏、最近男らしくなったんちゃう?」



後ろから蒼が茶化す。命がけですから!あとあの回復の草みたいの食べたくないし。蒼の呪文間違え多いし。攻撃は最大の防御でしょ。



「確かに。胸痩せてねぇか?」



蔵刃の一言に私は拳を握りしめた。



「おーっと!遅い遅い。」



「何でみんなでいじめるの?ひどいよう。」


楓ちゃんの真似してみた。



「…。」



げ。やっぱ私がしたら気持ち悪いかな。



ぐいっ。気がついたら蒼の胸の中にいた。



「あ…蒼?」



「前言撤回や。こんなに細くて、女の子なんやな。」



心臓バクバクしてきた。



「おい。」



「なんや?ヤキモチかいな。楓にチクるで。」



しーん。睨み合う二人。李里助けてよ。一番端っこで慣れたのか景色を見下ろす李里。『オレには関係ありません』オーラ出てるし。


「どっちがレベル上がるか勝負や。」



「いいぜ!」



いつの間にか蒼は蔵刃の前に立っていた。すでに私関係なくなってるし。



「来たで!」



「オレの獲物だ!」



その後、私と李里が楽したのは言うまでもない。



二人が獲物を倒しまくり、返り血を避けてる中。李里が話しかけて来た。



「ん?」



「姉ちゃんさ、蔵刃が好きだろ。」



「何馬鹿言ってんの。」



「嘘ついた時、目そらす癖いい加減直せば?」



ムカつく。女装してるヤツに言われたくないし。



「李里こそパンツいっちょになったら?」



「うるさい!人が心配してやってんのに何だよ。」



「好きってさ、そんなに簡単な気持ちじゃないんだよね。」



私と李里の横で、グチャとかゲチョとか音が聞こえる。蔵刃と蒼が武器を振り回す音も耳元で聞こえた。



「姉ちゃんはまだ語れる程大人じゃねぇよ。」



「ははっ。語らせてよね。」



「そろそろ手伝う?」


「よし。李里も避けないでよ!」



李里は何だかんだで相談に乗ってくれる。聞き上手だから、安心して話せる。



早く体を洗いたい。



違った。大和に会いたい。ったく。大和も加わったら私、いじられまくりじゃん。





「お!砂漠見えて来たで!」



「マジだ!スゲーな!」



この二人の体力スゴすぎ。私と李里は座っていた。



「だらしねぇな。ほら立てよ。」



私と蔵刃が手を繋ごうとした瞬間。蒼に肩を掴まれそのまま、立たされた。



「景色すごいでー。」


私の肩をくみながら、景色を見せる蒼。どうしたんだろ。いつもより強引すぎる。



「ほんとだぁ広いねー。」



「せやろ?」



満面の笑み。青いふわふわの天パが風に揺れる。思わず髪を触ってしまった。くすぐったそうに笑う蒼にときめきに似た感情を抱いてしまった。



「何かあった?」



「ん。励ましてや。」


綺麗な真剣な水色の瞳。みとれていると、手を掴まれた。



「しばらくこうさせてや。」



蒼の手は冷たくて、目の色と同じだった。



その時の私は、私達を見て、蔵刃が何を思ってるなんて考える余裕なんてなかったんだ。



「到着ー!」



気球を見て、人々が集まって来た。



「そーうー!!」



大和が駆け寄った。



「おいおい。オレらは無視か。」



「しょうがないですよ。大和先輩は姉ちゃん一筋っすから。」



「なるほどな。」



大和に会えたのが嬉しくて私も抱きついた。お尻を触られた瞬間、パァンと頬を叩いてしまった。



「癖で、叩いちゃった。痛かった?」



「生きてるって実感!」



今の大和の顔を見て、ここに置いていきたいと言う衝動にかられた。



その後は、一晩置いてもらう事にした。どこからこのご馳走は来るんだろうと、不思議に思いつつ美味しくいただいた。



「美味いわー!美人ばっかりやし。幸せやな。」



陽気な蒼を見て、ちょっと心がチクっとした。



「奏!俺は信じてた!」



みんなお酒臭い。さりげなく、李里がガードしてくれていた。こっちの世界に来てから李里が優しい。



「ちょお顔かせ。」



後ろから酒臭い息がかかった。と思ったら担がれた。



「ひぃー!」



「行くぞ。」



酔っ払った蔵刃にどこに連れ去られるか不安でたまらなかった。



もの凄いスピードで移動して、止まったかと思うと。蔵刃の膝の上に座らされた。



「砂の上は汚れるからな。」



「もう。酔ってるでしょ?膝とかにはかえ…」



人差し指の指先で唇を塞がれた。



「奏の口から『楓がいる』とか言われたくねぇんだよ。楓だけが好きなのに、奏が心に入って来る。責任とれよ。」



夜の砂漠の風は、少し寒く感じた。月の光に照らされた蔵刃は、妖艶でお酒のせいで少し目元がほてっていた。


「みんなカッコ良くてさ、『好き』って感情か分からなくなるの。それは恋じゃないよね。」



蔵刃から顔をそらして、空を見た。



「抱きしめていいか?」



胸が苦しい。私は首を横にふった。



「この場所綺麗だね。」



「一度来た事があって、見つけたんだ。」



それからは何も話さなかった。



みんなの元に帰ったら、大和がすぐ抱きしめてきた。大和は私に抱きつくのは当たり前みたいで、私も慣れてるけど抱きつくのはもっと特別なんだって気づいた夜だった。



私は違う部屋で寝た。大和が『危ないから俺も』とか言ってたけど、李里が隣の部屋に引きずってに行った。



「きゃっ!」



サソリがいた。



「大丈夫か?」



「うん。ありが…。っていつ来た!?」



蒼が隣に座っていた。


「それより、蔵刃と二人で何しとったん?」


「教えないよ。蒼が思うような事はしてないしね。」



「こんな事とか?」



顔が近づいた。反射的に私は目をつぶった。いつまでたっても唇に何もなかった。目を開けると、蒼が頭を抱えていた。



「焦りすぎたわ。オレめっちゃカッコ悪いなー。」



蒼が顔を隠している。隠れてない耳が真っ赤で可愛い。



「あーお?」



「もう寝るわ。オヤスミ。」



立ち上がる蒼の手を掴んだ。



「こっち向いて?」



「今はあかんって。不細工やねん。」



「んー?ほんとだ!ウソ。可愛い!」



「オレにだけは可愛いって言わんといてや。」



おでこに優しくキスされた。



「オヤスミ。奏。」



蒼のキスは安心させてくれて、私はすぐに眠りについていた。

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