砂漠の勇者。色白の踊り子。
サラサラサラ。
青汁が飲みてぇ。すっげぇ大嫌いだったのに、何も飲んで無いと、青汁が飲みてぇ。今なら、好き嫌いをなくす自信がある。
レベル5になった。レベルより水ください。短剣とかより、肉ください。魔物の肉を食える程の勇気はまだねぇ。きっと数時間後には、魔物の肉でも食ってる。砂漠にいる魔物だからジャリジャリしそうじゃん。水分皆無だろ。さっき倒したヤツとかサラサラ消えたし。
「そーうー!会いてぇよー!」
しまった。また魔物を呼び寄せた。お前を呼んでねぇよ!
覚えた呪文ですぐ倒した。
紙がふって来た。また呪文か。結構この漫画のガイドブックとか読んでたから、だいたいの文字は読める。ギリギリ、オタクじゃねぇからな。
【水を出す呪文。これはかなり基礎の基礎の基礎です。スイーミスイーミと、下の絵のように地面に優しく声をかけてください。】
正座をして、『スイーミ、スイーミ』と優しく囁いた。
ドォォォ…。
地面が震えだす。ヤバいと感じた俺は全力でそこから離れた。洪水が噴水の様に溢れて来た。嫌でも口に入る水。いや、泥水。
これじゃ砂漠じゃなくなってんじゃん。
バッジが降って来た。レベル7。めちゃくちゃだな、おい。
でも久しぶりの水は泥水でも気持ち良い。でも、おかげで、制服ビチャビチャだ。
そこに、どこから来たのか、白髭のおじいさんが近づいて来た。
「ここは昔、村だったのじゃ。しかし、魔物が増えのっとられてしもうた。お主のおかげで、また水をとり戻せた。」
また、どこからわいたのか村人たちが俺を胴上げした。よく分からねぇが、村を救ったらしい。
宴が始まった。これはRPGっぽいな。めっちゃ料理来たし。…何の肉だろ。いやいや、ここは考えちゃダメだ。食え俺!
「柔らけぇ。めっちゃ美味い!」
「美味しいでしょ?」
色気ムンムン姉ちゃんが両隣に来た!いかん。俺は、奏だけだ。
わお!素晴らしい胸のボリューム!あ。そんな寄られたら、俺でも困っちゃうって。
無事、砂漠の世界をクリアした大和であった。
鳥が郵便を届けに来た。
「『北の砂漠を救った勇者。』だそうですよ。『奇妙な恰好をしてまるで、天の使いのようだった。宴はしばらく続くようだ。』ですって。」
「奇妙な恰好って、大和やない!?」
「その可能性は高いが、違ったらどうするんだ?1週間はかかる場所だぞ。」
オレは決めた。少しでも可能性があるなら行くに決まってる。楓がオレの肩に優しく手をおいた。
「李里くん。気持ちは分かるけど、蔵刃の言う通りだわ。よく考えましょう。それに宴をしているなら安心だわ。ね?」
「はい。でもオレ…。」
「あの大和なら大丈夫や。順応性がかなり優れとるさかい。誰とでもやっていけるわ。」
オレじゃなくて良かったと、思っていた。オレが砂漠なんて行ってたら、一時間で倒れてたかもしれない。
「で、蔵刃何か案があるんでしょう?」
「やっぱ分かるか?いくつかは考えた。」
なぜかワクワクした瞳の蔵刃を見て、嫌な予感がした。
一時間後。
オレの前でニヤニヤする蔵刃に蒼。感心するように見つめる斬兎に楓。
「だから。オレは見せモンじゃねー!」
なぜ見られるのか?男のオレが踊り子の恰好をさせられてるからだ。つまり女装させられてんだ。
「魔王が踊り子募集してたから、李里が応募して、魔王の城にしかない気球を持ってくる。作戦だからしょうがないだろ!」
「オレは怪盗かよ!気球なんてデカいの無理だし!それに蔵刃のがオレより女っぽいだろ!」
蒼がぷっと笑った。
「せやけど、さすがに蔵刃の筋肉なら無理やで。ムキムキすぎやん。」
「踊り教えてあげるから。ね?」
「う。楓さんずるいです。」
こんな美人に上目使いされたら、断れない。
「はいはい!お話はここまでです。それぞれ作戦に取りかかりましょう。」
「失敗は許されねぇからな!特に李里!」
蔵刃にコツンと頭を叩かれた。オレはフンと顔を背けた。
「ワン・ツー・スリー・フォー!ちょっと体硬いね?」
「うわっ!近いですから!」
楓さんの指導は、密着度が高い。む…むむ…む。
「そこで胸を張って。」
びっくりしたー。胸が当たってる事を意識してるのバレたかと思った。オレ…ハズ。真剣に教えてくれてんのに。よし、頑張ろう。
「そうそう!上手だね。」
トクン。なんだ?心臓がおかしい。こんなの初めてだ。
「これなら間に合うね李里!」
呼び捨てにされて初めて嬉しいと思った。
「はい!頑張ります!」
踊りはくねってるけど、楓さんとなら楽しい気がした。
魔王の部屋。
「奏の為に踊り子を募集しました。」
「踊り子?」
デカデカとした立派なイスに座る魔王。今日は気合いが入ってんのか、すごい威厳がある。リッシーも何匹か座ってる。魔王っぽい。魔王なんだけどね。
「そうです。踊り子を見て、自分と違う何かに気付きなさい。いや、気にしなさい。」
「…はーい。」
「返事は短く!」
リッシーに叩かれた。ちっこいな一匹欲しい。
「はい。」
「じゃ、決まったら呼ぶからそれまで部屋にいなさい。」
「はーいパパ。」
逃げる様に部屋を出た。だって命令ばっかでお父さんみたいなんだもん。
部屋にいるって暇だから、窓から様子を見た。魔王の踊り子になるなんて人いるのかな。
「あれって李里?」
嘘。何でここに李里がいるの!?どう見ても女装してた。イコール踊り子候補?選ばれたらどうするの。李里は筋肉もついてないし。色白だし。何かあったら…大変だよ。
部屋のドアは開かなくなってた。窓からは高さが有りすぎて出れない。
…李里!