ウルフの元彼女
ウルフさんがレイリアに行く手を阻まれ、そっちに目が行って気付かなかったけど、妖精達に囲まれてます。アウェイな気分。ってか、マジでアウェイだからシャレになんない。
「レイリア。通してくれ。」
「私、ウルフを本気で好きだったんだよ。」
「…レイリア。」
二人だけの空間になってる。マジ、ヤバい。なんか、ウルフさんがレイリアにまた騙されそうな雰囲気漂ってるんだけど。妖精達が俺に滲み寄ってんすけど!
「おまもり!」
「はっ、はい!」
いきなりのウルフの掛け声につられ、貰った木彫りの龍を慌ててポケットから出した。
ズサー
それはもう音がするくらいに妖精達は俺から遠ざかった。
「ほら、ぼけっとしてる暇は無いぞ。」
「あれ、レイリアさんは?」
「…うるさい。」
「ハイスイマセン。」
『うるさい』の時のウルフの地の底から出て来るような声と表情。クワバラクワバラ…。
「リサトくん。」
「ちょっと急いでるんで。」
「リサトくーん。ここから出られる道教えてあげようか?」
「うるさいなぁ。さっきから誰だよ!」
振り向くと、レイリアさん。ウルフは一人で独走中。
「俺にだけ道を教えて、ウルフさんをこの世界に閉じ込める気ですか?」
「そんなコワい顔したら、可愛い顔が台無しだよ?」
「リサト!置いていくぞ。」
ウルフさんが1センチの大きさくらいにしか見えなくなっていた。それほど、俺より先に行っている。おいてけぼりも良いところだ。
なんだよ。面倒な事になったのはウルフのせいなのに。ムカついて来た。
「レイリアさん。道案内お願いします。」
その時の俺は、意地を張ることで自己を保つことしかできなかった。後先考えてる余裕なんて無かったんだ。