心の温度差
みんな忘れちゃってると思うけど、私…楓と蔵刃はどうにか生きていた。
「ここ天国だったら洒落になんねぇな。」
「雲みたいだけど、白い砂だよこれ。」
「じゃぁ、木は?山は?川は?それより誰もいねーじゃん!」
扉の先は予測不能な世界の方が多いって、蒼に聞いてるはず。蔵刃は特に喚かなきゃやってられないから。
「おっきい声出してすっきりした?」
「…はい。」
「まずは水から探さないと、死んじゃうよね?」
蔵刃は上を見上げた。ずっと続く白い空間。
「振るぜ。湿ったニオイが降りてくる。」
鼻をクンクンする蔵刃は、いつ見ても…犬みたい。シェパードとかそっち系かな。本で見た犬だけどね。確か奏の世界にいる犬だったはず。
「でも、雨は飲めないよ?」
「テレテレッテンテーン!蔵刃はヤカンを持っていた。」
「でも、火は?」
そうです。雨水は蒸留しないと飲めないんです。
「ふっふっふ…。俺、蒼に炎の魔法を習ったんだ…ヨ!」
「ちょっと…普通に喋ってよ。」
ゴソゴソとカバンやら、ポケットから何かを探してる蔵刃くん。
「あれー…ちょい待ち。どこだっけな。」
ポタ…ポタポタ
ザァァァァ…
「ひゃ!濡れちゃう!」
「…あんなところに洞穴あったか?しょうがねぇから入るぞ。」
私は蔵刃に手をひかれ、いつの間にか出現していた洞穴に入っていった。
チャポン…
なんでだろ。ここの洞穴寒い。まだ入ったばっかりなのに、鳥肌が立って来た。
「ここあちーな。」
「え?」
横を向くと、蔵刃は湯気が出て来そうなくらい真っ赤な顔をしていた。
「大丈夫?」
「いや、楓が大丈夫かよ。真っ青な顔してるぜ?」
これってどうゆう事?私たちはしばらくお互いを珍しいモノでも見るように見ていた。
《ソレハ アナタノ ココロノオンド》
「何か言った?」
「俺があんな高い声出せると思ってんのか?《ワタシハ…》ってかなり裏返るし!」
「私って冷たい心なんだ。」
それが一番ショック。蔵刃は熱い心?何それ。私だって必死に戦って、必死に好かれようと努力して、必死に!
ドサッと隣で鈍い音がしたと思ったら、蔵刃が倒れていた。
「え?ちょっと蔵刃ってば、冗談はやめてよ。」
「…。」
私は反応の無い蔵刃の頬に手を伸ばした。
熱い熱いよ。
冷たい私の手には、熱過ぎて…。でも、私は蔵刃の上体を起こして抱きしめた。
「何か、あったかいね。」
「…ん。冷たくて気持ちい。」
今は蔵刃との心の温度差のおかげで、中和されてる。
「楓、生きて帰ろうな。」
コクコクと私は頭を縦に振っていた。みんな無事でいて欲しい。自分が生きなきゃそれさえも確認もできないんだ。
「よし!蔵刃行こう!」
こうして私たちは立ち上がった。