星からのメッセージ
今、ピンクの星が流れるのを見た。興奮して蒼の肩を叩く。
「今ピンクの星見たよ!」
「星が想いを伝えるっちゅージンクスみたいのがあるんや。誰かが、奏に助けを求めてるっちゅう可能性もあるで。」
そう言う蒼は、眠そうに欠伸をした。
「さすがにピンクい星は見たことないけど、奏が言うなら本当なんやろな。」
今、スイレンの住んでる小屋の屋根でしゃべってる。スイレンの友達には襲わないらしく、猛獣は襲って来ない。
頭によぎったのは、李里の顔だった。
「李里大丈夫かな?」
「蔵刃がおるから大丈夫に決まっとるやろ。斬兎もたまには役に立つとこもあるし。楓にメロメロやったしな。」
「うそ!楓ちゃんを好きなの?」
「オレの勘やと、憧れに近いんやない?」
「ふぅん。」
「寂しいん?」
李里のそういう話題聞いた事なかったから、なんか変な感じ。
「ここが一番安全なはずや。」
「ちょっと待って?大和は!?」
蒼が頭を抱えた。
「せやった!すっかり忘れとったわ!…大和がまいた種やし、一人でええんとちゃう?」
「ぇえ!?わざと?わざと大和とはぐれたの?」
「大和は野性的な勘がヤバいんやから、砂漠ん時みたく生き残ると思うで。」
下から、スイレンの声がした。「ご飯ですよ」って…お母さんみたい。
「行くで。」
「明日、大和を探すから。」
「オレはここにおるからな。好きにせぇや。」
冷たく言われた。蒼は、私が大和を選ぶか、蒼を選ぶか試す気なんだ。屋根の上にまだいたいなんて思った。
「あ、流れ星。」
大和の顔が浮かぶ。
いつも、ピンチな時に助けてくれたのは大和だった。今は、蒼や蔵刃や楓ちゃん、そして、反抗期だった李里がいる。
私は、助けてあげた事あったかな?
これから、大和を助けになりたい。ソレが、恋とは違う感情だとしても、私は大和を選ぶだろう。
はぁ…はぁ…はぁ。
「迷った…。」
一人だと独り言が増える。オレは、寂しがり屋なんだっての。木とか全部同じに見える。シルシをつけても、振り返ればシルシが消えてる。まるで、迷える森だ。って、そんままか。
「…だから、ついてくんなって。」
さっきから猫と兎が混ざったような子猫兎が、後をつけて来てる。「にゅーん」とか聞いた事のない鳴き声で、足にすりよる。足がチクチクすんだけど…。
「だから、このパターンだと母猫兎が出て来んだって!しっしっ!」
「にゅーう」
「はぁ。どうすっかなー。」
しゃがんで、子猫兎と目線を合わせた。突然、その子猫兎が走って逃げてった。
「後ろ見たくねぇ。」
「なんで?」
後ろから少女の声が聞こえた。振り向くと、全身フリフリって感じの、金髪巻き髪。ロリータっつーの?本場のロリータを間近で初めて見た。
ってか、無表情!人形か!
「お兄ちゃん誰?」
「あれ、子猫兎抱いてる。お嬢ちゃんのペット?」
「…。質問に答えて。」
「大和。」
「みゅんがなつくなら、いい人ね。」
「みゅーん」
あの子猫兎は、みゅんらしく、女の子は優しげにみゅんを見つめながら、頭を撫でていた。
「オレから質問いいか?」
「うん。」
「ここはどこだ?」
少女は目を見開いた。
「知らないのに入れたの?ここは
【永久の森】」
「とわのもり?」
「迎えが来ないと自分からは出れないわ。私の名前は、忘れてしまったの。数えきれないほどの夜が過ぎて、何もかも忘れてしまったの。だから
【大和も忘れてしまう】」
この子の言葉は、不思議とウソじゃないと分かる。一見、無表情だけど、目が伝えて来る。
「一緒に待ちましょう?」
引きずり込まれる!オレの直感が、叫んだ。
「ひとまず、案内してくれよ。」
「ええ。」
オレが歩いても歩いても変わらない景色に、女の子が歩くと変化が現れる。
とんだ森に来ちまったな。
冷や汗が流れた。この先、どうすれば記憶を残せるんだろう。ソレばかりが頭の中でぐるぐると回っていた。