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逃亡した理由

一人でこの空間に来てもうた。ウルフに見つかったりでもしたら今度こそ殺されてまう。


「元親友にまた会えるとは嬉しいな。」



透明な扉から出て来たのはウルフだった。その言葉と違って、口調は皮肉にしか聞こえなかった。



「ウルフの違反者をなぶる態度が嫌やったんや。ストレートに話せばどうや?」



ウルフとオレのコンビは、この空間を守る最高の門番と言われていた。冷静に迷った者を対処するウルフと、お喋りで場を和らげるオレ。



ある時、自分の部屋(寝るだけの部屋)に行く扉と間違ってその手前の異世界の扉に入ってしまった。すぐに自分で戻れたんや。



せやけど、蔵刃と出会って世界が変わった。今まで同じ色だった世界が、華やかに見えた。



せやけど、この世界の人達がこうして笑ってられるのもオレら門番が守ってるからなんやって思たら、また仕事に戻ろうと強く思った。空間に帰る時、オレは蔵刃のいる世界に鍵を落としてもうたんや。その鍵は、どんな扉でも開くマスターキー。オレたち門番の命とも言える鍵やった。



それに気付いたのは、ウルフと仕事してる最中で。



「あの鍵をなくしたら、門番としての資格はなくなるんだぞ!」



珍しく取り乱すウルフに、オレは冷静だった。



「せやけど無くしたもんはしょうがないやん。」



「違反者には、この扉に行ってもらう!」



オレは扉の中に突き飛ばされた。その扉は豹柄の扉。



【イマシメの扉】



扉一つ一つに名がある。例えば、奏のいた世界の扉は【ブルーアース】。蔵刃の世界は、【虹のドラゴン】。



【イマシメの扉】は無断で空間に入ったり、掟を破ったヤツが入れられる。地球風に言えば、野性的な刑務所やな。







「おい。聞いてるのか?」



「ん?」



「人の話を聞かないのは変わらないな。だから、さっきカップルを【イマシメの扉】に送ったって言ったんだ。」



落ち着け。カップルはいくらでもいるだろ。


「アオが出て来た後に【虹のドラゴン】から来た二人だ。」



「100%奏と大和やん!つか、ずっと観察してたんか?」



ウルフがニヤリと口元だけ笑った。



「お前のせいで門番が襲われてるんだぞ。」


「蔵刃達にも協力して貰っとるやろ。鍵の事は誰にも言うとらん。」



「アオが無くした鍵が原因で、世界に歪みが生じてるからかな。」


鋭く睨みをきかせるウルフに何も言えない。


「それより、【イマシメの扉】出してや!」


「却下。お前なら鍵ナシでも扉を出せるだろ?」



「違反になるやろ!」


…あ。違反になればオレも強制的に【イマシメの扉】に行けるんや。ウルフが見るからにイライラしてきとる。


どないしよ。



オレが悩んでる間に【イマシメの扉】を出したウルフがオレの背中を蹴った。



「大事なヤツらなんだろ?真実を伝えろよ。」



「いつも笑ってればええのに。」



オレが入ったのは食の世界。どうやって出たのか覚えて無いくらい精神的にも体力的にもボロボロだった。かすかにウルフに手を引かれたのは夢か、幻か分からない。この世界に入れたアイツに助けられたのは謎だ。



「せやけど、どないしよ。」



鍵が無くて扉を出したら違反になるって事。奏を呼んだのは、オレの鍵を拾って門番を襲い続けてる犯人のおとりの為。



だけど、今は奏が好きなんや。



オレの頭に粘っこい液体が落ちて来た。







約1時間前。



「きゃーー!何この粘っこい透明な液体!」


「この臭い…奏左に飛べ!」



大和の言う通りに思いきり左に跳んだ。隣を見ると、牙が岩をエグっていた。

岩を砕く牙なんて、隠れる場所がないじゃん。



「大和これ何?」



見上げれば、私の顔くらいの目と目が合った。



「いいか。目を合わすな。」



「ごめん。今思いっきり目合っちゃった。」


「…。走れ!」



どうしよ。占い師じゃないのに、予言できる。私たち一瞬で咬み殺される。



ずっでーん。



私はうつ伏せのまま目をつぶった。ジ…エンド。



ドスンドスンドスン…


「うつ伏せになれば良かったらしいな。」



私の体を起こしながら大和は、苦笑いした。


「今の何!?まさか恐竜?巨人?宇宙人?」


「恐竜ならうつ伏せになってる時点で、食べられてるぜ?しかもあの顎の強さ、ヤバいな。」



目をキラキラさせる大和。私は頭をどついた。



「何ワクワクしてんのよ!私殺されそうになったんだよ!?大和助けてくんながっだじゃーん…うぇっ…。」



私がしゃがんで泣いてると、頭を撫でられた。



「いいか?はぐれるかもしんねぇから、自分の身は自分で守るんだ。」



呆然とする私の横で、今度は木の枝をナイフで削り出す大和。



映画じゃないんだから、生き残るの不可能だってば。



楽しそうな大和を見ると、何も言えなくなった。

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