蒼との再会
ススキの間から深い青色のパーマ頭がひょこひょこ近づいて来た。
「蒼!」
「おいおい。違ったらどうすんだよ。」
かきわけて顔を出したのは、本物の蒼だった。
「なんやねん。このススキ、近づくにつれてデカなるとかアホちゃうか!」
蒼は大和ばっかり見て、私と目を合わせてくれない。蒼は真っ先に私を抱きしめてくれるって期待してたのに。蒼は私の彼氏だよ?どうしちゃったの?
「救世主っぽく来たとこ悪いんやけど、帰り方分からんねん。」
「期待してねぇし。」
「大和が望んだ世界なんやろ?自分で分かるはずやで。」
大和を見たら、明後日を向いて口笛を吹いてる。私は大和を耳を引っ張った。
「やーまーとー?早く戻して?」
「いでっ!いでで!分かったよ。でもクイズに答えられないと呪文教えてくれねぇらしい。」
「はぁ。大和一人じゃムリや。」
「うん。大和は馬鹿だからね。」
バチッと蒼の水色の瞳と目が合った。ふせめがちに目をそらす蒼。
「あ」
「だから、三人ならイケるって!」
蒼に話しかけようとしたら大和に妨害された。
「オレはおりるで。男なら自分で責任とりーな。」
蒼は木に持たれて目をつぶった。
「大和行こう。私はちゃあんと協力するからね。」
「俺を馬鹿って言う奏の方が成績悪くなかったか?」
「大和が良すぎんの!早く行こう!」
「行く行くってどこ行くんだよ。ここに呼ぶんだよ。」
ちーん。
普通ならさ、クイズの門みたいなの有りそうじゃん?ちょっとワクワクしちゃうじゃん?呼ぶんだ。ふーん。ここに呼ぶんだ。
「はぁい呼んだ?」
このハスキーなセクシーボイス。私に服をくれた妖精だ。
「帰りたいからクイズ出して。」
「貴方が助けてくれた人だよね?ありがとう!」
クスリと笑うその人は、大人っぽいブロンドの綺麗なお姉さん。多分、悪魔の仮の姿だ。
「第1問目、奏の恋人はだ~れだ。①蒼、②大和、③斬兎、④李里」
「この世界での話か?」
「クスクス。さぁ?あと十秒だよ。」
迷ってる大和。
「①の蒼。」
私が答えた。
「正解かな?正解にしといてあげる。じゃ、第2問目は、そこに寝てる美少年に出題するわ。」
蒼がピクリと動いた。
「話しかけんなや。」
「クスクス。まぁ怖~い。第2問目、私は誰だ。①掟を破って閉じ込められた悪魔、②ナイトメア、③蒼の元カノ、④メア。」
目をつぶったまま動かない蒼。
「…5・4・3・2」
「④番…④番や。少なくともオレにはその他のどれでもないんや。」
「うん。最後にまた会えて良かった。」
瞬きをしたら、元の森に戻っていた。
でも三人の雰囲気最悪。蒼は、まだあの悪魔に心が行ってる。大和は、あの世界は大和の理想だったから恋人に選ばれたかったみたい。
私は、早く李里やみんなに会いたい一心で走ってた。
機嫌の悪い二人によって、無惨に切り殺される魔物たち。その後ろからついてくのは楽だった。
ただし、三人とも無言ってのが重苦しいけど。
夜の森は相変わらず気味が悪くて、月明かりに照らされた湖がキラキラ輝いていた。
「やっとついたね。」
「奏…触るな!」
ドアノブを触れようとした瞬間、大和が私に覆い被さって来た。
「せやな。この扉は違う世界に繋がっとるで。」
よく見ると、隙間から紫色の光が差し込んでいた。
ソレはこれから扉の世界の冒険が始まるという、序章に過ぎなかった。