ナイトメア
ススキだらけの秋色の草原。目を細めないと見えないくらい遠くに木が立ってる。
「あーお!」
後ろから風が吹いた。独特な甘い香りを漂わせるのはアイツしかいない。
「そんなにオレが好きか?」
「あお風に言うと、めっちゃすっきゃねん!」
オレの夢に現れる悪魔。見た目は、青いドレスを着たブロンド美女の姿してる。本当の姿なんて見た事ない。チョイチョイちょっかい出してくるんや。
「ナイトメアの仕業かいな。」
「メアって呼んでって言ってるでしょ?」
オレの髪の色とオソロで嬉しいのか青いドレスの裾を持ち上げて、白い足をわざと見せつけてきた。
「二人を返さな二度と遊んでやらへんで。」
「今二人の所に行ったら、あおが傷ついちゃうよ?それでもいいの?」
「どういう意味や?」
「フフッ。あおと遊びたいからこれ以上は邪魔しないよ。あの木の下に二人はいるわ。グッドラック。」
ナイトメアは空に消えた。一瞬黒い翼が見えた気がしたけど、目の錯覚だったのかも知れない。
「木ぃ言うても遠すぎんねん。」
オレは文句垂れながら、走り出した。
その頃、蒼の目指す木の下では。
「二人なら暖をとれるな。」
風が吹き続けて寒い中、私と大和は裸で抱き合っていた。寒すぎるから、最後の手段というか…。まだ、最後まではしてないからギリギリ大丈夫。
「このまま運動したら温まるぜ!」
「ひ!何の運動よ!ちょ今ソコ触ったら冗談になんないから!」
ガッ。私が思いきり蹴った場所が悪かった。
「いっ!!そうゆうプレイか?」
「ごめん!…もうやだー。」
「スゲー。奏に触られたら寒くても元気になったし。」
神様助けて下さい。
「なんじゃ。コントやっとる暇は無いぞよ。ほれ、邪魔者が現れた。」
私の願いを聞いたかのように、神もどきが現れた。そして、指差した先には…。
「蒼!」
「その格好じゃ、嫉妬に狂うじゃろうな。ほっほっほ。」
「俺が抱きしめててやるよ。」
その1、蒼に駆け寄って被害者ぶる。
その場合のこの大事な所を隠してる葉っぱの説明は?
その2、反対側にひたすら逃亡。
その3、木に登る。
私が頭を抱えてる間も蒼が近づいて来てる!
「ふ…服よ出ろ!」
プスッ。
それは、まるで花火を水につけた様な音でした。でも少し反応したって事はまだ可能性がある!
「はぁー。やっと着いたわ。大和…なんちゅー格好しとんねん。」
出でよ服ふく福ー!私が頭の中で叫んでると。木、全体が白い煙に包まれた。
「あらら、女の子になんて格好させてんだか。」
ハスキーな女の人の声が聞こえた。煙で真っ白で抱き合って密着してる大和しか見えない。
「誰だ!」
「聞いた通りの野蛮な男ね。今は、呼ばれたソウに用があるの。」
肩をポンと叩かれたと思ったら、シンプルな白いノースリブワンピに身を包まれていた。そして煙が風に吹かれた。
「奏!」
「奏は渡さねぇからな。」
「大和着替えんのえらぃ早いんやなぁ。」
「ん?マジだ!やべーカッケー。」
大和の今の格好を説明すると、進化系ターザン?としか言いようがない。その隙をついた蒼に、大和から剥がされた私。
「白いワンピース似合ってるで。」
「私のじゃないから。」
「何怒っとるん?」
何か怪しい。偽物の蒼だったりして。
「見つめんといてや。まぁ、気持ちは分かるんやけどな。」
照れ臭そう。
普通なら照れ隠しにわざとらしくキメ顔するはず。
「あなた誰?」
「ちぇ。つまんないの。本物はナイトメアと遊んでるよ。」
蒼の姿から全身空色の男の子に変わった。詰まらなそうにアグラをかきながら宙に浮いた。このコも青が似合う。
「ナイトメアは、簡単にはあの人を渡さないかもね。」
「何がしたいんだ?」
「大和?」
静かに怒る大和。
「オレたちは自分らの欲を満たすだけ。人間もそうだろ?」
私は、そのまま男の子の話に聞き入ってしまった。