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残されし者たち

バタン!

蒼が壊れんばかりにドアを開いた。



それぞれの部屋から迷惑そうに顔を出す面々。



「なんですか?」



「…マジ頭いてぇからやめろって。」



「何かあったの?」



「今寝れそうだったのに…。」



と、愚痴を溢される蒼。今度はバンッとテーブルを叩いた。



「はよ、目ー覚ませや!奏と大和が目の前で消えたんや!」



シーン。



「ちょっと待って、斬兎を部屋に連れてったのって…。」



「大和先輩すよね。」


顔を見合わせた楓と李里の血の気がサァーっと引いた。



慌てて部屋に戻る斬兎。オレたちもバタバタと斬兎の部屋に入った。



几帳面な斬兎にはあり得ない荒々しく破られたメモ帳。



開かれた真っ白な本。


「まんまと騙されましたね。」



「これはどう見てもヤツらの仕業だ。」



「ヤバいよ。」



オレだけ話についてけない。



「斬兎!李里にも分かるよう説明せぇや。」


「そぅ怒らなくてもいいじゃないですか。良く言えば命まではとらない悪魔です。ただし…」



「幻の世界を作って人間をさまよわせて、楽しむ悪趣味な悪魔なの。」



長くなりそうな斬兎の話を遮って楓さんがオレに説明してくれた。


「姉ちゃんたちはどうすれば帰って来れるんすか?」



「分からないです。」


「そんな…速答ですか?」


「チッ!オレがもう少し、はよう盗み聞きしとれば!」



暗い雰囲気に耐えきれず、オレの口が滑った。



「よくあるパターンなんすけど、消えた場所に紙が落ちてないすかね?」



シーン。



顔も上げないみんなに、冷や汗が出る。



シーン。



「それや。李里行くで!」



「わー!待って下さい!」



外に出ると、ピタッと蒼のパーマ頭が止まった。(頭を目標に走ってたんで)



「ハァ…はぁー。どう…したんすか!」



「酔ってたから、二人が消えた場所飛んでもうたわ。」



「…んなバカな。」



「こっちやったような…いや、あっちや!」


アバウトすぎ。



「いったん戻って、手伝ってもらい」



「あかん!」



「え、えー?」



「キレてもうたのに、いきなり忘れたなんてオレのプライド的にムリなんや!李里一緒に探してや!」



この関西弁男プライドと姉ちゃんどっちが大事なんだよ。



「じゃ、別々に探した方が…。」


「確か…木に囲まれてたんや。」



「ここ森だから、ほぼ木に囲まれてますよ。」



「そんな冷たい目で見んといてや。」



ふと、木を見上げると。



「ありました。」



「な、アホな。」



木の枝の先に刺さってる。白い紙。少し跳んだら取れた。



「この筆圧の濃さ…大和先輩の字すね。」



「よし。李里すぐ唱えるんや。」



「あなたアホですか?」



戻れる方法も分からないのに…被害者が増えるだけでバカじゃん。


「アホとはちゃう!愛やで。」



蒼のキメ顔来た。青色の天パが揺れる。カッコイイけどオレにされても。



「何か言えや!てか、はよ呪文言えや。」



「勢いだけじゃダメです!」



ちらっと蒼を見ると。


「何光ってんすか!?」



「あ?天パが光るわけないやろ。って手が光っとるやん!」



「わー!透明になって来ます!」



オレはあっぱり過ぎて、なぜか蒼に砂をかけた。



「ぶー!なにすんねん!目に入ったわ!」



オレの努力?も虚しく目の前から蒼は消えた。



『目に入ったわ』が最後なんて、せめてキメ顔が良かったよ。



「早くアジト帰ろう。」



オレは、わりと冷静にアジトへ戻った。



「何で蒼も行っちゃったんだろ?」



「李里の判断は正しいですよ。全く蒼もいい加減ですね。」



「メモ帳には何てかいてんだ?」



蔵刃がテーブルの上からオレの持つ紙を覗き込んだ。オレ何でこの字読めるんだろ。不思議と懐かしい。



「めちゃくちゃな言葉なんで、その世界への呪文だと思います。」


「蔵刃。行儀が悪いですよ。」



「どうする?とりあえず他のメモ帳に書きうつして、一人ずつ持とう。」



楓の案にみんな頷いた。



「なるほど、コレは呪文でなく暗号みたいな」



「合い言葉でしょ?」


「楓。私が言おうとする事を先に言わないでくれますか?」



「最後に、何か言葉を入れねぇとこの作りモノの世界に行けねぇな。李里どう思う?」



大和先輩と付き合いの長いオレに聞くのは、必然的だ。



「全く分かりません。」



「李里くん。大丈夫だよ。きっとヒントはどこかにあるはず。」



楓さんに優しく微笑まれると、緊迫していた心が温まる。



「なぁ、まず『二人で行った』のに関連ありそうじゃん。」



「なるほど。蔵刃にしては良いヒラメキですね。」


「そういえば、大和先輩は姉ちゃんの事で神経質になってました。」



楓さんが興味津々な目をしてオレに近づいて来た。



「なになに!?三角関係みたいな感じ!きゃぁ!」



「ちょっと変わった三角関係なんです。」



二日酔いで一人苦しむ蔵刃は離れた所で水を飲んでる。聞きたくないのか、興味ないのかは謎だけどオレは、斬兎と楓さんに姉ちゃんと大和先輩の事を詳しく話す事にした。


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