ヤマトとソウ
大きな木が一本。それ以外は草原しか見えない。
ここはどこ?
隣にいるのは大和だけ。
「大和…ここはどこ?」
「スゲー!何かアダムとイヴだな。」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!どうするの?」
いきなり抱きしめられた。
「やりッ!これで奏は俺だけのだー!」
「もー何言ってんの?どうせまだ酔ってるんでしょ。」
私が大和の胸を押しても、びくともしない。
「妹なんて思った事ないんだ。」
「や、ちょっとふざけすぎ!」
「好き。女の子として奏を好きだ。」
パシン…私は、大和をひっぱたいた。
「いい加減目を覚ましてよ。」
すぐにその手を掴まれた。大和は私の目を射る様に見ながら私の手のひら、指の付け根、指先にキスをした。
「何度叩いても、目は覚めねぇ。俺はマジで告ってんの。」
「私は、蒼の彼女だよ?今さら遅いよ。」
「おっほん。お取り込み中失礼だが、そろそろ良いかな?」
長い白髭に、白い服のおじいさんが宙に浮かんでいた。
「神様!?」
「ま、神に近い者じゃ。」
「偽物かよ。邪魔しやがって。」
「てい!」
ドゴっ。神様らしき人は大和の頭を杖で殴った。
「いってー。」
「生意気な小僧めが!誰のおかげでお主の願いが叶ったと思っとるんじゃ。お主の言う通りここは、アダムとイヴの世界を再現したモノじゃ。」
木の上にふわりと神に近いおじいさんは座った。
「二人が仲良くなった頃、邪魔者をここに送る。」
「はぁ!?『二人だけの世界』って約束だろ!」
「二人で盛り上がってる所悪いけど…。」
ガッ…私は大和のスネを蹴った。
「奏…本気で蹴るなって!」
「やっぱり大和の仕業だったんだ?」
「二人とも全裸になれ。大事な所はこの葉っぱで隠しても良い。」
ヒラヒラと私には三枚の紅葉の葉っぱが舞い降りた。大和を見ると、脱ぎ出してるし!
「ひゃ!大和の変態!」
「はっはっはー!どうだこの肉体美!」
確かに、薄く割れた腹筋とかカッコイイけどさ。自分で言うあたり…なんかねぇ?
「じゃないし!白髭おじじ!私脱がないよ!」
「安心しなされ。お主の体に興味あるのは小僧くらいじゃ。ほっほ…」
私は、オジジめがけて石ころを投げまくった。避けられたけど。
「今夜中に結ばれなければ、お主の世界に戻れないぞい。」
「だからって…葉っぱなんかやだよ。」
「そーう!」
振り向くと、大和が…大事な所を葉っぱ一枚で隠していた。それ以外は裸。まるで、露出狂。
「そんな葉っぱすぐ落ちちゃうじゃん!」
「なんか張り付く様になってるみたいだぜ。ほら。」
ペロン。
…。
「いやぁーー!」
「…時間はまだまだあるから、説得しなされ。くれぐれもアダムとイヴっぽく葉っぱでスるんだぞい。」
そう言うと、その変態ジジイは消えた。
「悪かったて!さっきのはやりすぎた。」
「やだ!触んないでよ!絶対脱がないし!」
「俺、寒くなってきた。」
「服着ればいいじゃん!」
現在、木を挟んで反対側にいる私と大和。ウカツに近づくと危ないしね。
「お願いだ!一回だけでいいから!」
「その格好、ギャグ以外の何者でもないから。」
「ギャグでも何でも、奏とならこの格好のままでいれる。」
「私、普通に服のままだよ?」
バタッ。
え。大和倒れちゃった?ひょっとしたら演技かも知れないし。でも、寒くなって来たから…。
私は大和に駆け寄った。
「大和!」
大和の頭を上げて膝枕をしてあげた。大和の体が冷たい。…あれ?大和の服がない。あの変態オジジめ。
「…しょうがないよね。」
私は布の多い踊り子のズボンを脱いで、大和に被せた。素肌の太ももに大和の栗色の短髪がチクチクと当たる。…恥ずかしい。
と思ってると、被せてたズボンが消えた。
「大和!大丈夫?」
ギュッと大和の体を抱きしめて、擦ってあげた。
「ん…。奏?」
「良かったぁ。」
ボタボタと大和の顔に私の涙の粒が落ちた。
「奏の太ももあったかい。」
頬を擦り付ける大和。今は、いっか。なんて思って、大和の頭を撫でた。
「ラブラブなところ悪いけど、あんたさ早く裸になったら?」
また上から声がした。木の精霊みたいな緑づくしの女の子が私の服を引っ張る。
「おい。奏のペースがあるんだ。やめろ。」
「かっこつけちゃってー。欲望だらけの狼の癖に。この世界早く終わらせるように言われてんだよね。ま、いっか。」
その精霊はスゥーっと消えた。
「奏乱れてる。」
「へ!?きゃ。」
「もう、いいだろ?」
すっかり元気になった大和は起き上がり、木に私を押し付けた。
どうしよう。大和とキス…しちゃう。大和の栗色の瞳から目をはなせない。
ずっと憧れてた大和とのキス。
私は顔を背けた。
「む…んー。」
すぐにアゴを掴まれて、逃がさないと言うように唇を吸い付かれた。また涙が頬を伝う。
蒼ごめん。
どうしよう。こんなに胸が熱いの。
ゆっくり唇を離そうとする大和に、すぐ確かめるみたいに口付けた。大和の漏れる吐息も全て感じたい。
こうして私は、服を脱がされた。