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禁断の呪文

「大和が好き。」



「俺も奏が好きだぜ!」



「ほんと?」



奏が女に変わった。ずっと見てきたけど、俺の『好き』がどの種類か考えた。



『女として好きなら、押し倒せる。』



とか、俺の欲望が暴走する。



俺は、奏を女として見てる。それが自分で分かってるから、伝えたらきっと俺はすぐに君の身体から手に入れたくなる。それで、気持ちを確かめるんだ。



だから



「妹として大切なんだ。」



とか、馬鹿みたいに紳士ぶった。その時の崩れそうな笑顔さえ、欲しいなんて俺は狂ってる。



夜になれば、その事ばかり頭に浮かぶ。特に、蒼と奏が付き合い出してからだ。



「はぁ。」


キスしたい。



ずっとあの目を見つめていたい。



酒で酔いつぶれて、目を覚ますと、二人はいなかった。



「月夜の散歩かよ。」


酔いが覚めないせいだ。ヤキモチでこんなに心が焦げそうなんて。思い出したんだ。俺がここの世界の人間じゃないって事や、奏に告られた日。



『あんまり、からかわないでよ。』



『俺は好きだ。』



『妹としてなのに、もう好きなんて言わないで!』



俺は、『好き』を連発してた。意味分かんねぇよな。何度軽く抱きしめても、奏に本心を伝えるのを臆病者な自分が邪魔をする。



誰が見ても、呑気な俺。



ほら、今から追いかけて奏と蒼を引き裂くなんてできない。



「大和先輩…。水をどうぞ。」



「おーサンキュ。李里起きてたのか。」



「先輩がオレの耳元でコップをカタカタさせてたら、いくらオレでも起きますよ。」



ぐーっと一気に水を飲む李里。無意識に手が震えてたらしい。



「そういえば、よく姉ちゃんと三人で、一気飲みの競争しましたよね。」



「俺が一番なんだよな。」



「で、オレが二番目。姉ちゃん弱いんすよね。」



俺もぐーっと一気飲みした。



「大和先輩、やっぱ男らしいっす。」



「李里は潔癖なとこあるからな。俺こんなにボタボタ溢してるだろ?」



手で口元の邪魔な水を拭った。



「正反対だから、憧れるんすよ。」



「はぁ。お前が女なら彼女にしてやんのに。」



「…女とかやめて下さい。」



アイドル顔負けの、小動物系の顔は女ならうらやむと思う。本人はコンプレックスらしいけど。



「まぁ拗ねんなって。」



「別に、拗ねてないすから。大和先輩は姉ちゃんの事いいんすか?」



「李里にバレバレなのに、奏には分かんねぇんだなこれが。」



「それは、あなたがフッたからだろ?」



「言葉だけじゃ伝わらない事もあんの!」



興奮して立ち上がってしまった。



「言葉で壁作ったのは卑怯じゃないんすか?姉ちゃんが大和先輩の前で無理して明るく振る舞ってたの気付いてたくせに。」



ちょうど楓が戻って来た。



「うわ。お酒臭ーい。二人とも、蔵刃と斬兎運ぶの手伝って?」



「楓、帰って来たんだ。」



「気にしないで下さい。大和先輩は機嫌が悪いんです。オレ、蔵刃さん運びます。」



「私も一緒に運ぶよ。」



俺は、斬兎をすぐソコの部屋に運んだ。ふと机の上に重なる本が目に入った。



《い…せかいへの帰り方》



この世界の文字を読むのには、慣れた。俺は、その本を捲るとある文字で手が止まる。



【貴方もこの呪文で好きな世界へ行ける!】


斬兎のメモ帳を破って必死に呪文をメモった。



これで…奏と二人だけの世界に行けるかもしれない。


パンドラの箱。



玉手箱。



これは開けてはならない、ページだった。自分から飛び込めないのに、その時の俺は奏が欲しくて欲しくてたまらなかった。



仲良く帰って来た蒼と奏の繋いだ手にチョップを入れて、間に割り込んだ。



「奏。話があるから来い。」



奏の手を引っ張ると、案の定蒼がその俺の手を掴んだ。



「大和。いい加減にせぇや。奏も嫌がっとるや…。そ…う?」



「蒼ごめん。後でちゃんと話すから。今は大和と二人で話しをさせて?」



何も知らない奏は、俺に着いて来た。



手に握りしめたメモ帳を、バレないように確認した。



「大和、どこまで行くの?」



俺は静かに呪文を唱える。



「奏。手を繋げ。」



「へ?」



「キヲサンテ…二人の世界へ」



俺と奏は光に包まれた。



「奏!」



蒼の声が聞こえてすぐ、俺たちはこの世界を後にした。

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